Harry Asti さんが雇い主に宛てて,ある事件(an incident)についての
謝罪の手紙〔メール〕を書いています。
① But there was an incident ---(1)--- happened recently
与えられた選択肢はいずれも関係詞であり,
1. who:先行詞が ’人’ の場合の関係代名詞の主格(・目的格)
2. which:先行詞が ’物’ の場合の関係代名詞の主格・目的格
3. where:先行詞が ‘場所・状況’ の場合の関係副詞
4. what:先行詞不要の関係代名詞
です。
---(1)--- の周囲をまず観察してみると,
先行詞(関係詞に修飾される語句)は直前の incident であり,
‘物’ とも ‘状況‘ ともとれるものです。
次に関係詞節における関係詞の働きについて検討してみます。
試しに ---(1)--- を代名詞の主格 It に置き換えると,
It happened recently.(それは最近起こりました。)
という,文法的に正しくて意味の通る文が出来上がります。
したがって,空欄には関係詞節の主語として振る舞うことができる
関係代名詞の主格が入ると考えられます。
以上から,空欄には
先行詞が ‘物’ の場合に使う関係代名詞の主格 which を
入れればいいことが分かります。正解は【2】番 です。
抜粋部の訳:「しかし,最近,ある事件が起こりました。」
(←「しかし,最近起こった事件がありました。」)
② In this regard, I want to convey my sincerest apology ---(2)--- you.
convey は「~を伝える〔運ぶ〕」という意味の他動詞で,
〈convey 物 to 人〉(人に物を伝える)の形で使います。
give などの相手が絶対に必要な動作の動詞は
前置詞 to と相性がよいのです。正解は【8】番 です。
他の選択肢については,以下の通りです。
by you(5.)は「あなたによって」。by により動作主を明示します。
例)I was moved by you!
(感動した!←私はあなたによって心動かされた。)
on you(6.)は「あなた」に不利益や負担がかかっている場合や
依存している場合によく登場します。
例)Let’s have a drink on you!(君のおごりで飲もう!)
例)I’m relying on you.(頼りにしてますよ。)
of you(7.)は以下の例で出てくる場合に注意が必要かもしれません。
例)It is so kind of you to help me with my homework.
(宿題を手伝ってくれるなんて,あなたはとても親切だ。)
抜粋部の訳:
「この点に関して,私はあなたに最大級の誠意を込めた謝罪の意を
伝えたいと思います。」
③ if this apology is not enough, I ---(3)--- to face the consequences of my action.
ここは1つ,シンプルに消去法で考えてみたいと思います。
まず,will ready(10.)と ready(12.)だと
ready を「準備する」という意味の動詞として使うことになります。
しかし,動詞の ready は基本的に他動詞であり,
抜粋部には目的語に当たる語句が存在していません。
(to face … は副詞的用法(目的)の不定詞です。)
したがって,これらの選択肢は除外できます。
(※実際には自動詞 ready を使った
ready to do(~する準備をする)という表現は存在しますが,
多くの辞書には載っていないので,無視して良いでしょう。)
また,was ready(11.)は過去形になっていますが,
条件節(if 節)が is not enough と現在形になっているため,
帰結節(主節)のほうを過去形にするのは不適当です。
条件節の内容が起こった後でのみ,帰結節の内容が起こるからです。
したがって,この選択肢も除外できます。
こうして,残った【9】番 am ready が正解となります。
この ready は形容詞。be ready to do で
「~する覚悟は出来ている」「~する準備が出来ている」です。
ところで,am ready と現在形になっているので,
「帰結節では ‘予測’ の助動詞 will が必要なのでは?」
と思った人もいるかもしれません。
しかし,「変更のないと思われる予定」の場合は
if 節を受けた帰結節においても will を使う必要はありません。
この抜粋部の場合,「もしそれで不十分と言われたら,相応の報いを
受ける覚悟は現時点においてすでに出来ている」という
内容であり,変更の可能性はゼロに近いと考えられます。
そのため,will を使わず現在形になっているのです。
抜粋部の訳:
「この謝罪が不十分なら,私は自分の行動の結果に向き合う
準備は出来ています。」
<その他の注意点>
・an incident which happened recently, which I feel may have tarnished your good image of me
「最近起こった出来事,それによってあなたが抱いていた
私の良いイメージが損なわれてしまったかもしれないと
私は感じています。」
最初の which は an incident を先行詞とする限定用法の which,
2つ目の which は an incident which happened recently を
先行詞とする非限定用法(継続用法)の which です。
限定用法は対象を限定するためのもので,
上の例では incident を「最近起こった」で限定をかけています。
一方,非限定用法は補足説明等のために関係詞を使う用法で,
上の例では an incident which happened recently について
私がどのように感じているかを補足的に付け加えているのです。
限定用法と非限定用法の見た目の違いは,
非限定用法ではコンマ(,)が使用されていることだけです。
また,which の「もと」の位置は feel と may の間,つまり
I feel ▲(which) may have tarnished your good image of me です。
節と節との「のり」として機能させるために
関係代名詞を節の先頭に出すので,
元の位置には見えない「穴」があいている,ということを
押さえておきましょう。