問題
a 投資の利子感応度が大きいほど、貨幣供給量の増加がGDPを増加させる効果は、大きくなる。
b 貨幣数量説の考え方によると、貨幣供給量の増加は、物価水準を上昇させるとともに、実質GDPを比例的に増加させる。
c ケインズ的な金融政策の考え方によれば、貨幣供給量は経済成長率に合わせた一定率( k% )で増加させることが望ましい。
d 流動性のわなが生じているときの貨幣供給量の増加は、更なる利子率の低下がないために投資のクラウディング・アウトを伴うことなく、GDPを増加させる。
金融政策についての出題です。
a 正しい
投資の利子感応度が高いとは、利子率が下がると投資が増えるということです。
貨幣供給量が増えると利子率は下がりますので、投資が増えます。投資が増えると、GDPは増えます。
b 間違い
貨幣数量説によると、貨幣供給量が増えると物価が上昇しますが、実質の生産量は増えませんので、GDPは増えません。
c 間違い
「貨幣供給量は経済成長率に合わせた一定率( k% )で増加させることが望ましい。」というのはケインズではなくフリードマンの学説です。
d 間違い
流動性のわなの状態は最低の利子率の状態ですので、貨幣供給量の増加によってさらなる利子率の低下を生むことはありません。
よって、正解は4
【基礎知識】
金融政策についてです。金融政策は基本、市中に流通する貨幣の供給量を増加させ、GDPの増加を狙うものです。分析にはIS-LM分析で考えていただければいいかと思います。
IS-LM分析はIS曲線は右下がり、LM曲線は右上がりの曲線になります。縦軸に利子率:r、横軸にGDP:Yのグラフになります。
IS曲線は以下で考えます。GDPは消費と投資、政府支出からなり、この式を満たすr(利子率)、Y(GDP、所得)の組み合わせがIS曲線です。
Y(GDP)=C(Y)(消費、Yに比例)+I(r)(投資、r利子率に反比例)+G(政府支出、一定)
LMは貨幣需要と貨幣供給が一致するr,Yの組み合わせとなります。
M=k(Y)(取引需要、Yに比例)+l(r)(資産需要、rに反比例)
金融政策でLM曲線を右にシフトさせると、IS曲線に沿ってGDPは上昇しますが、あわせてrも上昇します。rが上昇すると、LM曲線においては、上式より、k(Y)は増加しますが、l(r)は減少することになります。また、IS曲線もC(Y)は増加しますが、I(r)が減少します。
このように複雑に影響しあいますので、各曲線の傾きなどによって効果が変わってきます。
【選択肢評価】
a 投資の利子反応度が大きいと、金融政策でLMが右にシフト⇒金利低下⇒投資の増加が大きくなり、GDP増加の効果も増加しますので、正しい。
b 貨幣数量説に基づくと、貨幣供給量が増えると物価は上がります。ただし、実質GDPを比例的に増やすという部分が誤り。
c フリードマンの説ですので誤り。貨幣供給量にこだわったのは古典派になります。
d 流動性のわなはLM曲線が一定の利子率で水平になる現象です。よってLMを動かしても変化がありません。誤り。
上記説明より、不適切です。
上記説明より、不適切です。
上記説明より、不適切です。
正解です。
上記説明より、不適切です。