問題
構造設計技術者である技術者Aはあるオフィスビルの設計を担当し、その設計に基づいて工事は完了した。しかし、ビルの入居が終わってから、技術者Aは自分の計算の見落としに気づき、嵐などの厳しい環境の変化によってそのビルが崩壊する可能性があることを認識した。そのような事態になれば、オフィスの従業員や周辺住民など何千人もの人を危険にさらすことになる。そこで技術者Aは依頼人にその問題を報告した。
依頼人は市の担当技術者Bと相談した結果、3 ヶ月程度の期間がかかる改修工事を実施することにした。工事が完了するまでの期間、嵐に対する監視通報システムと、ビルを利用するオフィスの従業員や周辺住民に対する不測の事故発生時の退避計画が作成された。技術者Aの観点から見ても、この工事を行えば構造上の不安を完全に払拭することができるし、退避計画も十分に実現可能なものであった。
しかし、依頼人は、改修工事の事実をオフィスの従業員や周辺住民に知らせることでパニックが起こることを懸念し、改修工事の事実は公表しないで、ビルに人がいない時間帯に工事を行うことを強く主張した。
( ア )業務に関連する情報を依頼主の同意なしに開示することはできないので、技術者Aは改修工事の事実を公表しないという依頼主の主張に従った。
( イ )公衆の安全、健康、及び福利を守ることを最優先すべきだと考え、技術者Aは依頼人の説得を試みた。
( ウ )パニックが原因で公衆の福利が損なわれることを懸念し、技術者Bは改修工事の事実を公表しないという依頼主の主張に従った。
( エ )公衆の安全、健康、及び福利を守ることを最優先すべきだと考え、技術者Bは依頼人の説得を試みた。
( オ )オフィスの従業員や周辺住民の「知る権利」を重視し、技術者Bは依頼人の説得を試みた。