訴えの利益とは、処分によって権利または法律上の利益を侵害され又はその恐れがある者をいいます。
訴えの利益があるか否かや、行政庁が処分をする場合、どのタイミングで訴えの利益が認められるのか、どのタイミングで訴えの利益が認められなくなるのかという点意識して問題に取り組むといいと思います。
とはいっても、正直、判例があるので、「○○事件の判例がこんな感じのこと言ってたな」くらいの事を覚えていれば大丈夫です。
ア 森林法に基づく保安林は洪水や渇水を防ぐためにあります。
もし、保安林指定解除処分がされたとしても、代替施設によって洪水や渇水の危険性が解消され、保安林存続の必要性が失われた場合、保安林は必要ないので、処分を取り消す必要もなくなりますので、訴えの利益は失われます。
よって、本記述は誤っています。
根拠となる判例:最判昭和52年9月9日民集36巻9号1679頁
イ 土地改良法に基づく土地改良工事について、改良工事及び換地処分(更地にする)が完了した場合、現状に回復することは社会通念上不可能です。
しかし、これは事情判決(行政事件訴訟法31条)の適用に関して考慮されるべき事柄であり、訴えの利益を消滅させるものではありません。
よって、本記述は正しいです。
根拠となる判例:最判平成4年1月24日民集46巻1号54頁
ウ 建築物を建築しようとする場合、建築確認を受けなければなりません。
(建築基準法6条)
ただ、これを受けないとどうなるのかというと、建築物を建築できないのです。
そして、これを受けて建築物を建築したとして、建築物の建築が完了した後に建築確認が取り消されたとしても、建築物が完成してしまいいた以上どうすることもできないので、建築確認を取り消す意味がありませんので、訴えの利益は失われます。
よって、本記述は誤っています。
根拠となる判例:最判昭和59年10月26日民集38巻10号1169頁
エ 本記述の「開発工事」とは、建物等を建築する為に土地を更地にすることと思ってもらえればいいと思います。
そして、開発許可とは「この土地更地にしてもいいよ」という許可です。
これが取り消された場合、更地になった土地を元に戻すことはできませんが、建物を建てることはできなくなる為、訴訟をして開発許可を取り消す意味はあります。
よって、訴えの利益は失われません。
よって、本記述は正しいです。
根拠となる判例:最判平成27年12月14日民集69巻8号2404頁