看護師の過去問 第108回 午前 問44

緊急度とは、ある一定の時間内に適切な治療を行うことで、生命や臓器、身体部位の障害や損傷の危機を回避もしくは減少できる時間的な余裕の程度を示すものを指します。

1 . ２時間ほど前から右上下肢に力が入らず、ろれつが回らない。
○正解
急激な筋力低下、ろれつが回らないという事から脳梗塞など、脳血管疾患の可能性が高いです。
4時間以内に血栓溶解療法を開始すると後遺症を最小限にする事ができる可能性が高くなるため、緊急度は最も高いです。

2 . ３日前にペットの葬儀が終わり、食欲がなく、夜眠れない。
×不正解
抑うつ状態と考えられます。重症化する前に介入が必要ですが、この設問では緊急度は高くありません。

3 . プールでの日焼けによって背部全体が発赤している。
×不正解
日焼けによる痛みがあると考えられます。重度の日焼けでは、皮膚が腫れて水疱ができることがあり、発熱、悪寒、脱力などの症状も出る事があります。その際にはショック状態（重度の低血圧と失神や顕著な脱力）になることもあります。今回の設問では発赤のみなので、緊急度は高くありません。

4 . 市販の風邪薬を通常の２倍量服用した。
×不正解
薬局で購入できる風邪薬で、含有されている薬の量もそこまで多くないと考えられます。経過観察できるケースなので、緊急度は高くありません。

正解は１です。


1 . 症状として、右半身麻痺、呂律不全が見られており、脳血管系疾患の恐れがあり、最も緊急性が高いため正解です。


2 . ３日前にペットの葬儀が終わり、食欲がなく、夜眠れないという精神的症状であるため、緊急性が高いとは言えないため、不正解です。


3 . 背部全体の発赤のみでは、表皮の部分障害のみであるため、熱傷の重症度としては１度である。よって、緊急性は高くないため不正解です。


4 . 内服量が多くなってしまったが、市販の風邪薬程度では副作用も小さいため（体質などにもよる）、緊急性は高くないため、不正解です。

(正解)　1
(解説)
治療の緊急度は、生命に差し迫った危険な状況があるかどうか、すぐに治療を開始する必要があるかどうかを判断し、優先度を決めていく必要があります。
選択肢1では、ろれつが回らない、右上下肢に力が入らないという症状がありますが、これが徐々に症状があらわれた場合であれば、少しずつ進行していく神経の病気が考えられます。しかし、このような症状が急に出現した場合には、脳梗塞や脳出血など危険な病気の可能性が高くなり、2時間前から症状が出現したことを考えると、脳梗塞の可能性があると考えられます。脳梗塞の治療のひとつであるt-PAによる治療は、脳梗塞を発症してから4時間半以内に行わなければならず、4時間を過ぎてからの治療は脳出血を起こす危険性が高くなるとされています。この選択肢の中で、最も緊急度が高くなります。よって正解は「1」になります。

(補足)
他の選択肢については、以下の通りです、
2について
：食欲不振や不眠といった症状は、この場合ペットの喪失による精神的なものによると考えられます。書状自体は3日前から出現しており、それまでは自宅で生活ができていたことを考えると、緊急性は高くないと考えられます。よって、正解には該当しません。

3について
：熱傷の分類で考えることが必要な問題になります。この場合、背部全体の発赤のみであるため、Ⅰ度熱傷と考えられ、緊急性は高くないと考えられます。水泡やびらんなどの症状がある場合などのⅡ度熱傷以上は、早急に処置をする必要があります。よって、正解には該当しません。

4について
：市販の風邪薬でも、オーバードーズによって中毒を起こす可能性があります。この場合は、2倍の内服であり、副作用症状などの経過観察は必要になりますが、緊急性は高くありません。よって、正解には該当しません。