問題
錯誤によって意思表示をした者が、その意思表示を前提として新たな法律関係を有するに至った第三者に対してその意思表示の無効を主張することができるかどうかについては、詐欺に関する民法第96条第3項の類推適用を肯定する考え方と否定する考え方とがある。次のアからオまでの記述のうち、同項の類推適用を肯定する考え方の根拠となるものの組合せとして最も適切なものは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 民法第96条第3項の規定は、取消しの遡及効を制限したものである。
イ 錯誤によって意思表示をした者の中には、詐欺によらず自ら錯誤に陥った者も含まれているところ、だまされて錯誤に陥った者より、だまされていないのに自ら錯誤に陥った者の方が帰責性は大きい。
ウ 錯誤によって意思表示をした者がその意思表示の無効を主張した後に、第三者がその意思表示を前提として新たな法律関係を有するに至った場合と、詐欺によって意思表示をした者がその意思表示の取消しを主張した後に、第三者がその意思表示を前提として新たな法律関係を有するに至った場合とを区別する必要はない。
エ 同一の事案が錯誤と詐欺の双方に該当することも少なくなく、意思表示をした者がいずれを主張するかによって第三者の地位が左右されることは望ましくない。
オ 法律行為の要素に錯誤があることや錯誤によって意思表示をした者に重大な過失がないことなど、錯誤による無効を主張するための厳格な要件を満たした場合には、意思表示をした者の要保護性が高い。
民法
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。