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司法書士の過去問 平成28年度 午前の部 問25

問題

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窃盗罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  Aは、飲食代金を踏み倒すつもりで、金を持たずに居酒屋に一人で行き、飲食物を注文して飲み食いし、残ったおにぎり三つを上着の下に隠した上で、店員に対して、「トイレに行ってきます」と告げ、その居酒屋の外にあったトイレに行くように装ってそのまま立ち去った。この場合、Aには、窃盗罪は成立しない。

イ  Aは、隣家に住むB所有の自動車にエンジンキーが付いたままになっていることに気付き、その自動車を運転してみたいと考え、深夜、Bに無断で、その自動車に乗って約5時間ドライブし、その後、元の場所に戻しておいた。この場合、Aには、窃盗罪は成立しない。

ウ  Aは、電車内で隣に座っていたBが、座席に携帯電話を置き忘れたまま立ち上がり、次の駅で降車しようとしてドアの方に向かったので、その携帯電話が欲しくなり、それを自己のカバンの中に入れたところ、間もなくBが携帯電話を置き忘れたことに気付いて座席に戻ってきた。この場合、Aには、窃盗罪は成立しない。

エ  金融業者であるAは、Bとの間で、B所有の自動車の買戻特約付売買契約を締結して代金を支払い、その自動車の管理者は引き続きBとしていたが、Bが買戻権を喪失した後、密かに作成したスペアキーを利用して、Bに無断でその自動車をBの駐車場からAの事務所に移動させた。この場合、Aには、窃盗罪は成立しない。

オ  Aは、会社の同僚Bの営業成績が上がったことをねたみ、Bが職務上保管する物を投棄してBを困らせてやろうと考え、社外秘の顧客情報が記録されてBが保管していた電磁的記録媒体をBの机の引出しの中から勝手に持ち出し、付近の川に投げ捨てた。この場合、Aには、窃盗罪は成立しない。
   1 .
アイ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
ウエ
   5 .
エオ
( 平成28年度 司法書士試験 午前の部 問25 )
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この過去問の解説 (3件)

9

正しい選択肢はア及びオです。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 飲食店において、支払意思がないのに、飲食物を注文する行為は、食事の一部を食した時点で、詐欺罪は既遂となり、この場合、注文した飲食物すべてについて詐欺罪が成立します。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 判例は、被告人が、他人所有の普通乗用車を、数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図のもと、駐車場から所有者に無断で乗り出し、その後約4時間余り乗り回したという事案において、たとえ、使用後に、これをもとの場所に戻しておく意思があったとしても、被告人は右自動車に対する不正領得の意思があったものということができる、としています。(最高裁昭和55年10月30日決定)。本選択肢のケースで、不法領得の意思が認められた場合には、窃盗罪が成立するので、本選択肢は誤りです。

ウ. 判例は、公園のベンチにポシェットを置き忘れたまま、その場を離れ、公園出口の横断歩道橋を渡って約200m離れた駅の改札口まで2分程度歩いたところ、ポシェットの置き忘れに気が付き、走って戻ってきたが、既になくなっていたという事案において、被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点であったことなど本件の事実関係の下では、その時点において、被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われておらず、被告人の本件領得行為は窃盗罪に当たる、としています。(最高裁平成16年8月25日決定)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は、被告人が自動車を引き揚げた時点においては、自動車は借主の事実上の支配内にあったことが明らかと明らかであるから、仮に被告人にその所有権があったとしても、被告人の引き揚げ行為は、刑法242条にいう他人の占有に属する物を窃取したものとして、窃盗罪を構成し、かつ、その行為は、社会通念上借主に受任を求める限度を超えた違法なものというほかはない、としています。(最高裁平成元年7月7日決定)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 判例は、窃盗罪の主観的要件として、不法領得の意思を要するとしています。また、不法領得の意思の内容につき、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い、利用処分するとした意志としたうえで、毀損・隠匿目的の場合には、不法領得の意思を否定しています。(大審院大正4年5月21日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

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4
正解は2です。窃盗罪は、占有者の意思に反して占有の侵害に着手し、自己または第三者の占有に移すことで既遂となります。物に関し、占有の離脱があった場合には、後から物を取得した第三者につき、窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立し得ますが、占有の離脱があるかどうかは、社会通念上、物に対する事実上の支配があったかどうかで判断されます。

ア…正しいです。本問の場合、店側は客に飲食物を自分から提供しているので、占有の侵害があったとはいえません。おにぎりもAに提供された物の一部であるので、Aが自分の占有になったものとして持ち帰っても罪にはなりません。ただし、店側は代金が支払われる前提で飲食物を提供しており、Aは初めから支払う意思がないのに、外出を支払猶予の状態に見せかけて店員をだましていますので、詐欺罪(刑法246条2項)が成立すると考えられます。

イ…誤りです。判例等では、窃盗罪がいえるためには、故意に加え、不法領得の意思があったことが必要とされています。数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図の元に、他人の車をその持ち主に無断で乗り回した場合、たとえ使用後に元の場所に戻すつもりであったとしても、不法領得の意思があったものとみなされます(最判昭55・10・30)。

ウ…誤りです。事実上の支配があるかどうかについて、物に対する排他的支配がない状況でも、元の占有者が物の所在を一時的に忘れたものであり、時間的・空間的に密接な関連がある場合には、占有の離脱があったとはみなされません。被害者がショルダーバッグを置き忘れたまま下車し、他の乗客の降車が完了しないうちに犯人がこれを取得した事件において、被害者の手を離れてから犯人の不法領得までの時間がきわめて短いことなどを理由に、占有の離脱は認められないとされた判例があります(最判昭37・5・18)。本問でも、元の占有者から極めてわずかな時間と短い距離しか離れていなかったことは明らかであるため、窃盗罪が成立すると考えられます。

エ…誤りです。被害者が金融業者と買戻権付売買契約を結んで融資を受けた自動車につき、借主である被害者が買戻権を喪失したため、金融業者が被害者に無断でスペアキーを作成し、被害者の許可を得ぬまま自動車を引き揚げた事件において、契約の段階では、買戻権行使後も借主が自動車を管理する合意がなされていたことや、買戻権行使後に金融業者が直接占有および移動をする権利を認めた契約書の写しを被害者に渡していなかったことなどをふまえて、借主の事実上の支配にあった自動車は、たとえ所有権が金融業者に移っていたとしても、占有が侵奪されており、当該引揚げ行為が窃盗罪を構成することは明らかである、とされた判例があります(最判平元・7・7)。

オ…正しいです。本問ではAは取得した電磁的記録媒体を自己または第三者のために使用または収益する意思がありません。よって、他人の物を使用できなくしたことにより、器物損壊罪(刑法261条)が成立すると考えられます。

4
アとオが正しい肢ですので、2が正解です。

ア. 支払いの意思を持たず飲食物を注文した時点で一項詐欺が成立します。この場合、重ねて窃盗罪は成立しません。

イ. 「自動車」を約5時間乗った時点で不法領得の意思が認められます。よって、窃盗罪が成立します。

ウ. 微妙なケースですが、この場合、被害者の占有はいまだ失われていない、と解釈するようです。
本問より長時間のケースで窃盗罪の成立を認めた判例があります。

エ. 本問の場合、いまだ占有はBにあり、Aは「他人の占有」を害しています。
よって窃盗罪が成立します。

オ. 本問はBを困らせる意図で持ち出していますので、不法領得の意思がありません。
よって、窃盗罪は成立しません。

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