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司法書士の過去問 平成30年度 午前の部 問12

問題

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担保物権の性質について説明した次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  民法の規定する担保物権の中で留置的効力を有するのは、留置権のみである。

イ  民法の規定する約定担保物権は、いずれも、優先弁済的効力を有する。

ウ  一般の先取特権は、担保物権の不可分性を有しない。

エ  動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。

オ  金銭消費貸借の合意がされたが金銭の授受が未了の間に、金銭の授受により発生する予定の貸金債権を担保するために設定された抵当権は、後に金銭の授受があったとしても、付従性により無効である。
   1 .
アウ
   2 .
アエ
   3 .
イエ
   4 .
イオ
   5 .
ウオ
( 平成30年度 司法書士試験 午前の部 問12 )
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この過去問の解説 (3件)

12
正しい肢はイとエで【正解は3】です。

ア × 質権者は、債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができます(民法347条)。留置権だけではなく質権も留置的効力を有します。

イ ○ 約定担保物権である抵当権、根抵当権及び質権は、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると規定されています(民法342条、369条1項)。

ウ × 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができます(民法296条)。この規定は、先取特権について準用します(民法305条)。

エ ○ 判例(最判平17.2.22)では、「動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない」とされています。

オ × 判例(大判明38.12.6)は、「金銭消費貸借による債権を担保するため抵当権の設定がされた場合において、金銭の授受に先立って抵当権の設定の手続きがなされても、その抵当権は後に発生した債務を担保する」としています。

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5
正解:3

ア:誤
質権は、質権者が「その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」(民法342条)であり、質権者は「債権の弁済を受けるまでは、質物を留置すること」ができます(同法347条)。
したがって、留置権のみならず、質権にも留置的効力が認められています。
よって、誤った記述です。

イ:正
約定担保物権とは、債権者と担保権設定者との合意によって生じる担保物権をいいます。民法が規定する約定担保物権は、質権と抵当権です。
質権は、質権者が「その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」(民法342条)と規定していますので、質権には優先弁済的効力があります。
抵当権は、「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」(民法369条1項)ですので、抵当権にも優先弁済的効力があります。
したがって。民法が規定する約定担保物権である、質権と抵当権ともに優先弁済的効力を有します。
よって、正しい記述です。

ウ:誤
担保物権の不可分性とは、被担保債権全額の弁済を受けるまで、目的物の全部についてその担保権を行使することができるという性質です。
民法296条は、「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる」と定めており、留置権について不可分性が認められることを規定しています。そして、民法305条は、留置権の不可分性について定めた「第296条の規定は、先取特権に準用する」と規定しています。
したがって、一般の先取特権にも担保物権の不可分性が認められます。
よって、誤った記述です。

エ:正
判例は、「304条1項ただし書は、先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨規定しているところ、この規定は、抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については、物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含む」として、「動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない」としています(最判平成17年2月22日民集59巻2号314頁)。
よって、正しい記述です。

オ:誤
判例は、金銭消費貸借が要物契約であるにもかかわらず、金銭の授受が未了の間であっても、金銭の授受により発生する予定の貸金債権を担保するために設定した場合でも、その抵当権は有効であるとしています(合意の数日後、登記の翌日に金銭の交付があった事例に関する大判明治38年12月6日民録11輯1653頁の他、大判昭和5年11月19日大審院裁判例4巻民法111頁、大判昭和6年2月27日新聞3246号13頁など)。
また、利息付の消費貸借契約については、当事者の合意のみで諾成的消費貸借契約の成立が認められるということについては、広く学説等でも認められています。
したがって、このような抵当権は付従性により無効とはなりません。
よって、誤った記述です。

なお、平成29年民法改正により、書面による消費貸借契約は諾成契約(587条の2第1項)として有効であるとされています。

4
正解は3です。民法に定めがある担保物権は、留置権、先取特権、質権、抵当権です。

ア…誤りです。留置的効力とは、担保権者が債務の弁済を完了するまで、目的物の占有を継続することができ、それにより債務の弁済を促す効力をいいます。留置権のほか、質権にも留置的効力が認められます(295条、347条)。

イ…正しいです。民法に規定のある約定担保物権(当事者の契約があれば成立する担保物権)は、質権と抵当権です。いずれも、被担保債権が弁済されない場合に、担保目的物の換価された結果から、他の債権者に優先して弁済を受けることができ、優先弁済的効力を有するといえます(342条、369条)。なお、法定担保物権である先取特権にも優先弁済的効力はあります(303条)。

ウ…誤りです。先取特権は、不可分性を有します(305条)。一般の先取特権は、債務者の総財産を対象としており、被担保債権の弁済が全て完了するまで、総財産の全部について、権利を行使できます。

エ…正しいです。先取特権、質権、抵当権には物上代位性があります。ただし、先取特権者はその払渡または引渡の前に差押えをしなければなりません(304条1項ただし書)。判例では、このただし書を、公示方法が存在しない動産の先取特権において、当該動産の譲受人など第三者の利益を守るためと解し、動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができないものと解するのが相当であるとしました(最判平17・2・22)。

オ…誤りです。担保物権はすべて付従性を有します。したがって被担保債権が成立しなければ抵当権も成立しませんが、設定契約時に被担保債権が成立している必要はありません。将来発生する予定の債権で、特定の法律関係が債権者と債務者にあれば、抵当権は有効とされています(大判昭7・6・1)。本問のように、債権者と債務者が予定の金銭消費貸借の関係にあり、金銭の授受が行われないなど被担保債権が無効になる原因もないことから、有効であると考えられます。

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