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司法書士の過去問 平成30年度 午前の部 問16

問題

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詐害行為取消権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  被保全債権が発生し、かつ、その履行期が到来した後にされた行為でなければ、これについて詐害行為取消権を行使することはできない。

イ  特定物の引渡請求権の債務者が当該特定物を処分することにより無資力となった場合には、当該引渡請求権が金銭債権に転じていなかったとしても、当該引渡請求権の債権者は、当該処分について詐害行為取消権を行使することができる。

ウ  詐害行為の受益者が債権者を害すべき事実について悪意である場合において、転得者が善意であるときは、転得者に対して詐害行為取消権を行使することはできない。

エ  債権者が受益者に対して詐害行為取消権を行使し、詐害行為を取り消す旨の認容判決が確定した場合であっても、債務者は、受益者に対して、当該詐害行為が取り消されたことを前提とする請求をすることはできない。

オ  金銭債務に対する弁済については、過大な代物弁済である場合を除き、詐害行為取消権を行使することはできない。
   1 .
アイ
   2 .
アエ
   3 .
イオ
   4 .
ウエ
   5 .
ウオ
※民法の一部が改正( 平成29年6月2日公布 令和2年4月1日施行)され、債権関係の規定が変更になりました。この設問は平成30年に出題された設問になります。
<参考>
<参考>
( 平成30年度 司法書士試験 午前の部 問16 )
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この過去問の解説 (3件)

5
(正解は4です。)現行の民法では、正しい選択肢はウのみとなり、正解は存在しません。

ア…誤りです。被保全債権は詐害行為前に成立していることが詐害行為取消権の要件ですが、詐害行為のときまでに履行期が到来している必要はありません(大判大9・12・27)。

イ…誤りです。被保全債権は金銭債権である必要があります。もっとも、二重譲渡において特定物債権の引渡しがされない場合に、債務者が第二譲受人に所有権移転登記を行って無資力となった場合には、その損害賠償債権保全のために、第一譲受人に詐害行為取消権が認められた判例があります(最大判昭36・7・19)。

ウ…正しいです。詐害行為取消権の転得者については、受益者から転得した場合の悪意は必要ではありませんが、当該転得者が転得した当時、債務者がした行為が債権者を害することについて悪意であるときに限り(転得者が複数いるときには、その全ての転得者が、各自転得した当時に悪意であったときに限り)、転得者にも詐害行為取消権を行使できることが明文化されました(424条の5各号)。したがって本問の転得者には詐害行為取消権を行使できません。なお、過失責任については記載がなく、従来通り過失の有無は問われないと考えられます。

エ…(正しいです。)(注.旧条文では、詐害行為取消請求が認容されたときの取消しは、「すべての債権者」のために有効とされ、取消請求自体も受益者に対してすればよく、債務者は除外されていました(425条、大判明44・3・24)。しかし、取消権の行使の結果が債務者にも及ぶ判例が多かったことから、現在は債務者もこの範囲に含まれ、代わりに受益者の債務者に対する反対給付返還請求権が明記されたので、選択肢は誤りとなります。以下、解説は改正民法によります)詐害行為取消権請求を認容する確定判決は、債務者およびその全ての債権者に対してもその効力を有します(425条)。よって、債務者にも取消しの効果が及びますので、債務者も取消しがなかった前提の行為はできません。

オ…誤りです。弁済は原則として詐害行為となりませんが、債務者が特定の債権者と通謀して故意に他の債権者を害する意思で弁済したときは、詐害行為となります(大判大6・6・7)。よって弁済でも詐害行為取消権を行使できることもあるので誤りです。また、代物弁済は本来の債務の履行行為ではないため、債権の額が債務の額を超えない場合であっても、原則として詐害行為となりますが(最判昭48・11・30)、受益者の受けた給付の価額が、その債務の額を上回るような債務の消滅が行われた場合、いわゆる過大な代物弁済は、詐害行為取消請求の対象となると明文化されました(424条の4)。

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5
正解:なし(平成29年民法改正前の規定によれば4)

ア:誤
詐害行為取消権の行使は、その債権が、債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に行うことができます(民法423条3項、1項)。履行期が到来した後にされた行為である必要はありません。
よって、誤った記述です。

イ:誤
判例は、特定物の引渡請求権も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、その債権者は処分行為を詐害行為として取り消すことができるとしています。特定物の引渡請求権も、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからです(最判昭和36年7月19日民集第15巻7号1875頁)。
もっとも、特定物引渡請求権については債務者の目的物処分行為により損害賠償債権たる金銭債権に変じていることが必要とされます(同判決補足意見。通説は、取消権行使時までで足りるとしています)。
よって、誤った記述です。

ウ:正
平成29年改正後の民法424条の5は「債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる」と定めています。
そして、同条1号は、「その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき」と定めていますので、転得者が転得の時点で悪意であることが必要であり、善意である場合は、転得者に対して詐害行為取消権を行使することはできません。
よって、正しい記述です。

エ:誤(平成29年改正前民法によれば正)
平成29年改正前の民法425条は「前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる」と規定し、判例は、裁判所が詐害行為を取り消したことの効力は、その行為は原告たる取消債権者と訴訟の相手方たる受益者又は転得者との間では無効になるが、債務者に対しては依然として有効であるとしていました(大連判明治44年3月24日民録17号117頁)。これによれば、正しい記述です。
しかし、平成29年改正後は、425条が「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」と規定していますので、債務者との関係でも詐害行為取消がされたことが前提とされます。そして、425条の3は、「債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する」と定めていますので、債務者としても受益者に対して、当該詐害行為が取り消されたことを前提とする請求をすることはできると考えられます。
よって、誤った記述です。

オ:誤
債権者が弁済を求めることは当然の権利行使であり、債務者は弁済する義務を負うのですから、弁済は詐害行為とならないとも考えられますが、判例は、一部の債権者への弁済が通謀による場合(最判昭和33年9月26日民集12巻13号3022頁)などで従来から詐害行為取消権の行使を認めてきました。
そして、平成29年民法改正は、423条の3第1項において、特定の債務者に対する債務の消滅に関する行為を詐害行為取消の対象としています。
よって、誤った記述です。

4
正しい肢はウのみ(改正後;改正前はウとエ)で【正解は4】です。

ア × 詐害行為の前の原因に基づいて生じた債権であれば、詐害行為当時に履行期が未到来であっても、当該債権を被保全債権として、詐害行為取消権を行使することができます(改正民法424条3項)。履行期が到来した後になされた行為でなくてもいいということです。

イ × 判例(大判昭36.7.19)は、「特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債権者が処分することによって、債務者が無資力になった場合には、当該処分行為を詐害行為として取り消すことができる」としています。この場合は、行使の時までに特定物引渡債権が金銭債権に転じている必要があります。

ウ ○ 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができます(改正民法424条の5、1項)。

エ ×(改正前は〇) 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有します(改正民法425条)。

オ × 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、その行為が、債務者が支払不能の時に行われたものであること、または、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであることに限り、詐害行為取消請求をすることができます(改正民法424条の3、1項)。よって金銭債務についての弁済でも取消請求することはできます。

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