ア 〇 判例は、建物はその敷地を離れて存在しえないのであるから、建物を占有使用する者はこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきであるとして、建物を賃借して占有している者について、敷地に関する物権的返還請求の被告適格を認めている。(最判昭和34.4.15)
空中に浮いた建物は存在しませんよね。必ず土地の上に建物が建っています。
つまり、土地の上に何らかの権限をもって建物が建っているということです。
本肢は土地の上に建物が立っていますがBが土地の占有権限を失っているので無権利者になったことになります。
無権利者から賃借していた者もまた無権利者となりますから、土地に対してCは不法占有となるわけです。
よってAは不法占有者であるCに退去及び土地の明け渡しを請求することができます。
イ 〇 他人の使用人として家屋に居住するにすぎない者については、特段の事情のない限り、その不法占有を理由として家屋の明渡しを請求することはできません(最判昭35・4・7)
賃貸借関係は「あなただから貸した」という信頼関係に基づいてます。
AはBを信頼して貸した訳ですが、Cに建物を貸した訳ではありません。
しかし、Cは建物に居住したくてBと同居いるわけではなく使用人として建物に居住しているのです。
つまり、Cを家政婦として想像していただければおわかりいただけると思います。
家政婦は仕事として同居しているのでありますから不法占有に該当しません。
ウ × 売買契約に基づいて開始された自主占有は、当該売買契約が解除条件の成就により執行しても、それだけでは、他主占有に変わるものではない(最判昭60・3・28)。
つまり、売買契約が失効しただけで買主は他人のために占有するという意思に変わることなく、未だ物は自分の物だという意志に基づいて占有しているということです。
エ × 共同相続人の一人が、単独で相続したものと信じて疑わず、相続の開始とともに相続財産を現実に占有し、公租公課もその負担において納入し、これについて他の相続人が何ら関心をもたず、意義を述べた事実もなかった場合には、当該共同相続人の一人は、その相続の時から、相続財産について単独所有者としての自主占有を取得する(最判昭和47.9.8)
つまり、音信不通の兄弟姉妹や、失踪した兄弟姉妹、はたまた自分に兄弟姉妹がいるのかが分からない者も実務では多数存在します。
よって、相続人は自分しかいないと思い込んでいる場合、単独所有者として所有の意志をもってする自主占有を取得することができます。
オ 〇 本肢を一言でまとめると、Cは他主占有者だから善意であってもBに損害の全部を賠償しなければなりません。
なぜなら、所有の意思のない占有者は、善意であっても、全部の賠償をしなければならないと民法191条但書きがあるからです。
つまり、Cは賃借人ですから所有の意思のない占有者に当たります。
よって、損害の全部を賠償しなければなりません。