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司法書士の過去問 令和2年度 午前の部 問18

問題

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次の対話は、解約手付が授受された売買契約に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。

教授:買主が売主に手付を交付している場合において、売主は、買主に口頭で当該手付の倍額を償還する旨を告げてその受領を催告すれば、売買契約を解除することができるでしょうか。

学生:ア  売主は、買主に手付の倍額の償還を口頭で告げ受領を催告するだけでは、売買契約を解除することはできません。売買契約を解除するためには、売主は、買主に対して手付の倍額を現実に提供する必要があります。

教授:買主は、自己が契約の履行に着手した後も、手付を放棄して契約の解除をすることができますか。
学生:イ  買主は、自己が履行に着手した場合でも、売主がまだ履行に着手していなければ、契約の解除をすることができます。

教授:履行に着手するとはどのような意味か、説明してください。
学生:ウ  履行に着手するとは、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたことを意味します。

教授:例えば、第三者所有の不動産について売買契約が締結された場合に、売主が当該第三者から当該不動産を買い受けた上で代金を支払い、買主に譲渡する前提で当該不動産の所有権移転登記を受けたときは、売主は履行に着手したといえますか。

学生:エ  そのような売主の行為は、履行の準備行為にすぎず、履行に着手したとはいえません。
教授:買主が売買代金債務の履行期の到来前に売買代金の提供をした場合は、履行に着手したといえますか。
学生:オ  売買代金の提供が履行に着手したといえるためには、その当時履行期が到来していることが必要です。したがって、履行期前に売買代金の提供をしても履行に着手したということはできません。
   1 .
アイ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
ウエ
   5 .
エオ
( 令和2年度 司法書士試験 午前の部 問18 )
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この過去問の解説 (3件)

5
正解は5です。解約手付について、2017(平成29)年の民法改正により、判例の内容を反映する形で条文が変更されました。

ア…正しいです。手付を交付した者(本問買主)が解除するには解除の意思表示だけで足りますが、手付を受領した者(本問売主)が解除するには、手付金の倍額を現実に提供する必要があります(557条1項、最判平6・3・22)。

イ…正しいです。解除権は、相手方が契約の履行に着手するまでに行使しなければなりません(557条1項ただし書)。つまり、当事者の一方が、先に自ら履行に着手した場合でも、相手方が履行に着手するまでは、解除権の行使が認められます(最判昭40・11・24)。

ウ…正しいです。履行の着手とは、客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をなし、又は履行行為をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すとしています(最判昭40・11・24)。

エ…誤りです。解約手付の授受があった第三者所有の不動産において、売主が、買主に当該不動産を譲渡する前提として、当該不動産の所有権を取得し、当該不動産の所有権移転登記を得た場合には、契約の履行に着手したといえるとされています(最判昭40・11・24)。

オ…誤りです。債務に履行期の約定がある場合であっても、当事者が債務の履行期前には履行に着手しない旨の合意をしているなど特段の事情のない限り、ただちに履行期前に履行の着手は生じ得ないと解すべきではないとされています(最判昭41・1・21)。

付箋メモを残すことが出来ます。
4

ア 〇 買主が売主に手付を交付した場合において、売主が売買契約を解除するためには、手付の倍額を現実に提供することが必要です(民法557条1項)。

上記の「現実に提供」というキーワードに着目してください。

現実に提供しなければならないと条文に書いてあるのですから、受領を催告するのみでは足りません。

イ 〇 本肢のキーワードは「自己が契約の履行に着手」という部分です。

買主が売り主に手付を交付したときは、買主はその手付けを放棄し、売り主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りではない。(民法557Ⅰ)

つまり、相手方が契約の履行に着手したら契約を解除できないのです。

しかし、自己が契約の履行に着手しても契約を解除できます。

ウ 〇 本肢は試験委員から「履行に着手」の定義はどういうことですか?と問われているのです。

つまり、履行に着手したとは客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部、又は、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指します。

ここで「履行に着手」とはどういう行為なのか、具体例を2つ挙げます。

1.買主が履行期到来後、売り主にしばしば明け渡しを求め、この間明渡しがあればいつでも残代金の支払いをなしうる状態にあった場合

2.履行期の前日に代金を提供した場合

エ × 本肢は試験委員から「履行に着手」とはどういう行為か具体的事例は知ってますか?と問われているのです。

他人物売買のケースを思い浮かべてください。

(不動産業者が高齢者の所有する土地を、これから戸建てを建てようとしている若い夫婦に先に売買契約を締結してしまい、その後、高齢者に「売ってください」と懇願するケースです。)

第三者所有の不動産において、売主が、買主に当該不動産を譲渡する前提として、当該不動産の所有権を取得し、当該不動産の所有権移転登記を得た場合には、契約の履行に着手したといえるとされています(最判昭40・11・24)。

オ × 債務に履行期の約定がある場合であっても、当事者が債務の履行期前には履行に着手しない旨の合意をしているなど特段の事情のない限り、ただちに履行期前に履行の着手は生じ得ないと解すべきものではないとされています(最判昭41・1・21)。

よって、履行期前に売買代金の提供をした場合であっても、履行に着手したものと認められます。

3
正解 5

ア 正しい
買主が売主に手付を交付した場合において、売主が売買契約を解除するためには、手付の倍額を現実に提供することが必要です(民法557条1項)。

イ 正しい
買主が売主に手付を交付した場合において、買主が売買契約を解除するためには、自己が履行に着手したかどうかに関わらず、売主が契約の履行に着手していないことが条件となります(民法557条1項但書き)。

ウ 正しい
「履行に着手」とは、債務の履行行為の一部をなし、または履行をなすために必要な前提行為をなすことをいいます(最判昭和40年11月24日)。

エ 誤り
判例(最判昭和40年11月24日)は、第三者所有の不動産において、売主が買主に譲渡する前提として当該不動産の所有権を取得し、かつ自己名義にするため所有権移転登記をした場合には、売主に履行の着手があったといいうるとしています。

オ 誤り
判例(最判昭和41年1月21日)は、本肢と同様の事案において、「民法557条1項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すものと解すべく、債務に履行期の約定がある場合であつても、当事者が、債務の履行期前には履行に着手しない旨合意している場合等格別の事情のない限り、ただちに、右履行期前には、民法557条1項にいう履行の着手は生じ得ないと解すべきものではない。」としています。

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