問題
ア 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした宗教法人に対し、裁判所が解散を命ずることは、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめ、信者の宗教上の行為を法的に制約するものとして、信教の自由を保障する憲法第20条第1項に違背する。
イ 公立学校において、学生の信仰を調査詮索し、宗教を序列化して別段の取扱いをすることは許されないが、学生が信仰を理由に剣道実技の履修を拒否する場合に、学校が、その理由の当否を判断するため、単なる怠学のための口実であるか、当事者の説明する宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認する程度の調査をすることは、公教育の宗教的中立性に反するとはいえない。
ウ 憲法第20条第3項の政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、私人に対して信教の自由そのものを直接保障するものではないから、この規定に違反する国又はその機関の宗教的活動も、それが同条第1項前段に違反して私人の信教の自由を制限し、あるいは同条第2項に違反して私人に対し宗教上の行為等への参加を強制するなど、憲法が保障している信教の自由を直接侵害するに至らない限り、私人に対する関係で当然には違法と評価されるものではない。
エ 企業が、労働者の採否を決定するに当たり、労働者の思想、信条を調査し、労働者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、労働者の思想、信条の自由を侵害する行為として直ちに違法となる。
オ 裁判所が、名誉毀損の加害者に対し、事態の真相を告白し陳謝の意を表明する内容の謝罪広告を新聞紙に掲載するよう命ずることは、加害者の意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限するものとして許されない。