ア 〇 占有回収の訴えと問題に記載されていたらすぐに「侵奪」や「奪われた」というキーワードが連想できるかどうかポイントです。
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することができます(民法200条1項)。
ただし、占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対しては、その承継人が侵奪の事実を知っていたときに限り、提起することが可能です(同条2項)。
つまり、原則として占有を奪われたら占有回収の訴えにより返還請求できるが、例外として善意の特定承継人に対してはできません。
よって、Aは悪意の特定承継人であるCに対し占有回収の訴えを提起できます。
イ × 本肢は占有回収の訴えでの「奪われた」を具体的に知ってますか?と試験委員から問われてます。
「奪われた」とは窃盗や強盗など意思に反して占有を奪われた場合をいいます。
本肢のAは動産甲を紛失しています。そしてBは遺失物を拾得したにすぎません。
よって、侵奪がありませんからAはBに対し占有回収の訴えを提起できません。
ウ 〇 賃貸借の終了後、賃借人が目的物の占有を継続している場合において、賃貸人が、賃借人から目的物を実力で奪い返したときは、占有の侵奪となり、賃借人からの占有回収の訴えを提起できる(大判大8.4.8)。
少々かわいそうな判決ではあるが、占有を奪い返したAが目的物たる動産の正当な所有者である場合でも(盗まれた自転車を偶然発見した場合のA)、占有した者B(盗人)の意思に反して占有が奪われていれば、Bは占有回収の訴えを提起できます。
エ × 占有者がその占有を奪われたときは占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求できる(民法200Ⅰ)。
つまり、返還請求と損害賠償どちらも請求できるしどちらか一方しか請求しないこともできるということです。
原告に選択権を与えた規定です。
オ × 原則として、法人の代表者が法人の業務として行う物の所有は、法人そのものの直接占有なので代表者個人は当該物の占有者として訴えられることもないし、占有回収の訴えを提起することもできない。
しかし、例外的に代表者が法人の機関として物を所有するにとどまらず、代表者個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特別の事情がある場合には、代表者は、その物について個人として占有の訴えを提起することができます。
よって、Bが自己のためにも動産甲を所持していると認めるべき事情があるので占有回収の訴えを提起することができます。