問題
ア Aは、Bを殺害する意図で、B及びその同居の家族が利用するポットであることを知りながら、これに毒物を投入したところ、B並びにその同居の家族であるC及びDがそのポットに入った湯を飲み、それぞれその毒物が原因で死亡した。この場合、Bの同居の家族がC及びDの2名であることをAが知らなかったとしても、Aには、B、C及びDに対する殺人罪の故意が認められる。
イ Aは、Bとの間で、Cに対して暴行を加えて傷害を負わせる旨を共謀したが、殺意を有してはいなかったところ、実行行為を担当するBが、呼び出したCの言動に激高して突発的にCに対する殺意を抱き、持っていた警棒でその頭部を殴り付けてCを殺害した。この場合、Aには、殺人罪の故意が認められ、同罪の共同正犯が成立するが、Aに科される刑は、傷害致死罪の法定刑の範囲内に限定される。
ウ Aは、覚醒剤を所持していたが、これについて、覚醒剤であるとは知らなかったものの、覚醒剤などの身体に有害で違法な薬物かもしれないが、それでも構わないと考えていた。この場合、Aには、覚醒剤所持罪の故意が認められる。
エ Aは、住居侵入罪の構成要件に該当する行為について、当該行為が同罪の構成要件に該当するかを弁護士に尋ねたところ、当該弁護士が法律の解釈を誤って当該行為は同罪の構成要件には該当しない旨の回答をしたことから、同罪は成立しないと誤解して実際に当該行為に及んだ。この場合、Aには、住居侵入罪の故意は認められない。
オ Aは、Bをクロロホルムにより失神させてから海中に転落させて溺死させようと考え、Bにクロロホルムを吸引させたところ、Bは、クロロホルム摂取に基づく呼吸停止により死亡した。この場合、Aには、殺人罪の故意は認められない。