ア 〇 寄託者又は倉荷証券の所持人は、倉庫営業者の営業時間内は、いつでも、寄託物の点検もしくはその見本の提供を求め、又はその保存に必要な処分をすることができます。(商法609)
逆にできない理由はありません。なぜなら、所有者なのですから。
イ × 当事者が寄託物の保管期間を定めなかったときは、倉庫業者は、やむを得ない事由があるときを除き、寄託物の入庫の日から6か月を経過した後でなければ、その返還をすることができません。(商法612)
逆にやむを得ない事由があるときは、寄託物の入庫の日から6か月を経過していなくとも、その返還をすることができます。
なぜなら、やむを得ない事由というのが裁判の焦点とすることができるからです。
条文をあまりにもカチカチに定めておくと例外的な事由が起きても条文通りに照らし合わせるしかなくなるので、少しあいまいな表現で「やむを得ない事由」という表現を使ってバッファを持たせているのです。
ウ × 本肢をきっかけに、民法の無償寄託の部分をご自身で調べてみてください。
商法は民法との比較が一番勉強になります。
商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、無報酬であっても、寄託物の保管について善管注意義務を負います。(商法595)
民法なら、一般法ですから無償寄託の場合は自己同一義務。
商法なら、特別法ですから無償寄託の場合でも善管注意義務。
以上の点を押さえておきましょう。
エ 〇 寄託物の滅失又は損傷についての倉庫営業車の責任に係る債権は、倉庫営業車が寄託物の滅失又は損傷につき悪意である場合を除き、寄託物の出庫の日から1年間行使しないときは、 時効によって消滅します。(商法617)
比較として、民法の使用貸借、賃貸借、請負、売り主の担保責任の規定もご自身で調べておきましょう。
どれも、「~の日から1年間行使しないと時効によって消滅する」という規定があります。
オ × 倉庫営業者は、寄託物の出庫の時以後でなければ、保管料等の支払を請求することはできません。(商法611条)
この場合に寄託物の一部を出庫するときは、出庫の割合に応じて、その支払を請求することができます。(同条ただし書)
なぜなら、自転車操業の会社を考慮しているからです。
請求できる時には請求できますよという規定を設け、経済の循環を図っているのです。