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司法書士の過去問 平成25年度 午前の部 問26

問題

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文書偽造の罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。


ア  Aは、司法書士ではないのに、同姓同名の司法書士が実在することを利用して、Bから司法書士の業務を受任した上、当該業務に関連してBに交付するため、「司法書士A」の名義で、報酬金請求書を作成した。この場合には、Aに私文書偽造罪は成立しない。

イ  Aは、自己所有の土地が登記記録上B名義で登記されていたため、たまたまBから預かっていた印鑑を使用して自己への売渡証書を作成し、Bから所有権の移転を受けたとして、その旨の登記を申請し、当該土地に係る登記記録にその旨を記録させた。この場合には、Aに電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪は成立しない。

ウ  Aは、Bが高齢であることに乗じて、B所有の土地を第三者に売却することを企て、Bに対し、税務署に提出するための確認書であるなどと嘘をついて信じ込ませ、B所有の土地に係る売買契約書をその売主欄に署名押印させて作成させ、これをAに交付させた。この場合には、Aに私文書偽造罪が成立する。

エ  公立高校の教師であるAは、落第した生徒に依頼され、その両親に見せるため、当該公立高校の校長名義の卒業証書を偽造し、これを当該生徒の卒業証書であるとして、その両親に見せた。この場合には、Aに公文書偽造罪が成立するが、同行使罪は成立しない。

オ  Aは、Bに対し、Cの代理人であると詐称し、C所有の土地をBに売り渡す旨の売買契約書に「C代理人A」として署名押印し、完成した文書をBに交付した。この場合には、Aに私文書偽造・同行使罪が成立する。
   1 .
1個
   2 .
2個
   3 .
3個
   4 .
4個
   5 .
5個
( 平成25年度 司法書士試験 午前の部 問26 )
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この過去問の解説 (3件)

10
正解は 2 です。

正しい選択肢は、ウとオなので、2が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 判例は、司法書士でないBが、司法書士Aの名義で報酬金請求書を作成する行為は、文書の名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じさせたというべきであり、被告人は右の同一性を偽ったものであって、その文書について私文書偽造罪が成立するとしています。(最高裁平成5年10月5日判決参照)。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 判例は、本選択肢と類似の事案において、公正証書原本不実記録・同供用罪の成立を認めています。(最高裁平成35年1月11日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 大審院明治44年5月8日判決で、相手方の愚鈍に乗じて同人を欺罔し、他の文書と誤診させてその内容を了知せしめず、その署名捺印のある権利義務に関する文書を作成する行為は、文書偽造罪を構成するとしています。従って、本選択肢は正解です。

エ. 最高裁昭和42年3月30日判決では「被告人が、所論偽造に係る福岡県立三池高等学校甲名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父丙に提示した行為を、偽造公文書行使罪に当たるものとした原審の判断は相当である」としています。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 詐称代理人Aが作成した契約書の効果はCに帰属します。従って、Aが作成した文書の名義人はCであり、作成者と文書の名義人は別人格であるから、文書の名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じさせたというべきであり、被告人は右の同一性を偽ったものであって、その文書について私文書偽造罪が成立します。(最高裁平成5年10月5日判決参照)。従って、本選択肢は正しいです。

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3
正解は2(ウ、オの2個)です。

ア 誤り。
 たとえ作成者Aと司法書士Aが同姓同名であったとしても、司法書士の業務に関連し司法書士が作成した外形の文書である以上、文書の名義人は作成者Aとは別人格の「司法書士A」であり、有形偽造(文書の作成権限を有しないものの偽造)と認められることから、私文書偽造が成立します(最判平成5・10・5)。なお、単なる肩書・資格のみの冒用は、作成者と名義人の間に齟齬が生じないことから私文書偽造は成立しないものと解されています(学説)。

イ 誤り。
 公正証書原本不実記載の構成要件は、公務員に虚偽の申立を行い公文書(「登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本」または「権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録」)に虚偽の記載を行わせることであり、不動産登記ファイルは「権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録」に当たります。そして、判例は不動産所有者が当該不動産の登記名義人の承諾なく所有権移転の登記申請を行い、その旨を登記原本に記載させた事例につき、電磁的公正証書原本不実記載罪が成立するとしています(最判昭和35・1・11)。

ウ 正しい。
 間接偽造(文書の作成名義人等を欺く等の方法による偽造)の場合、作成名義人が文書の内容につき認識を有しない場合は文書内容の意思表示を行う認識が欠けるゆえ有形偽造(私文書偽造罪成立)、作成名義人が文書の内容につき認識した場合は文書内容の意思表示を行う認識が存するものとして無形偽造(不可罰)となります。本件は文書内容についての認識を欠くため私文書偽造罪が成立します。

エ 誤り。
 偽造文書行使罪が成立するためには、実際に偽造文書を提示する必要がありますが、行使の相手方は必ずしも法律上の利害関係を有するものではないとするのが判例の立場です(最決昭和42・3・30。本選択肢と同様の事例)。

オ 正しい。
 代理・代表名義の冒用の場合、文書の作成名義人は代理人ではなく(このように解した場合は無形偽造たる肩書・資格の冒用に留まる)、本人であると解されます。そのため有形偽造にあたり、私文書偽造・同行使罪が成立します(最決昭和45・9・4)。

2
正解 2

ア 誤り
判例(最決平成5年10月5日)は、本肢と類似の事案において、「自己の氏名が弁護士甲と同姓同名であることを利用して、「弁護士甲」の名義で弁護士の業務に関連した形式、内容の文書を作成した所為は、たとえ名義人として表示された者の氏名が自己の氏名と同一であったとしても、私文書偽造罪にあたる。」と判示しています。
本肢の場合、Aは、同姓同名の司法書士が実在することを利用して、司法書士の業務に関連する報酬金請求書を「司法書士A」の名義で作成しているため、私文書偽造罪にあたります。

イ 誤り
判例(最決昭和35年1月11日)は、本肢と類似の事案において、「たとえ不動産の真実の所有者であっても、登記簿上他人名義で登記されている不動産につき、その印鑑を保管しているのを奇貨としてこれを使用し、その承諾がないのに、当該不動産を同人から自己に売却した旨の売渡証書を作成し、これを原因としかつ自ら作成した同人名義の委任状を利用し、自己に所有権の移転を受けた旨虚偽の登録申請をなし、登録原本にその旨の記載をさせたときは、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立する。」と判示しています。

ウ 正しい
判例(大判明治44年9月14日)は、字が読めないことを利用して証書の作成名義人を欺罔し、その内容を偽った上書名押印させて契約証書を作成した事案で、文書偽造罪が成立するとしています。
判例の立場に従えば、本肢でもAに私文書偽造罪が成立することになります。

エ 誤り
判例(最決昭和42年3月30日)は、「公立高等学校の教諭である被告人が甲と共謀のうえ、偽造に係る同高等学校長乙名義の甲の卒業証書を、真正に成立したものとして、甲の父丙に提示する行為は、単に丙を満足させる目的のみをもってなされたとしても、偽造公文書行使罪に当たる。」と判示しています。

オ 正しい
判例(最決昭和45年9月4日)は、「他人の代表者または代理人として文書を作成する権限のない者が、他人を代表もしくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表もしくは代理するものと誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書の名義人は、代表もしくは代理された本人であると解するのが相当である。」と判示して、この者に私文書偽造・同行使罪が成立する、としています。

以上から、正しい肢はウとオの2つであり、2が正解となります。

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