宅建の過去問 平成28年度(2016年) 権利関係 問11
この過去問の解説 (4件)
・本問のポイント
本問は借地借家法の条文と判例の両方を問う問題でした。
借地借家法は民法の特別法であり、初めて触れる方は戸惑われるかもしれません。
しかし、問われるポイントはおおむね決まっているので、過去問のなかでどこが問われているのかを、常に意識するようにしましょう。
この肢は条文と判例の両方の知識がないと正答に至るのは難しかったでしょう。
借地借家法10条は、「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗できる」
としています。
そして最判昭41.4.27が結論となりますが、土地の賃借人は、自己名義の登記を有しなければ、土地の新所有者に対し借地権を対抗できないと判示しています。
いくら氏を同じくする子名義の登記であっても、新所有者であるDには対抗できません。
よって、本肢は正しい肢となります。
これも判例知識を問う問題でした。
最判昭40.3.17は、借地の上の建物についてなされた登記の地番等の表示が若干違っていても、その登記の表示全体において、その建物の同一性を認識できる場合には、借地権者(A)は、その借地権を第三者であるEに対抗できます。
これは借地借家法22条の規定を知っていて、かつ、問題文の注意書きを見落とさないことが正解へのアプローチです。
借地借家法22条は定期借地権の要件を規定していますが、その要件の一つに「存続期間を50年以上とする」というものがあります。
問題文をよく読むと、賃借の期間は30年と書いてあり、定期借地権の成立要件を満たしません。
よって、本肢のような特約を規定することはできず、誤りの肢となります。
これも判例知識を解く問題です。少し細かい判例だったので、この肢を検討しないで1.の肢にたどり着けるようにできるといいでしょう。
最判昭35.2.9は、「債務不履行による土地賃貸借解除の場合には、借地人は建物等買取請求権を有しない」としています。
正解は【Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。】になります。
借地借家法第10条1項より、借地権の対抗力等によると、借地権の登記がなくても、借地上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、借地権を第三者に対抗することができることになります。
登記の種類は、表示や所有権の保存登記・移転登記などどれでも大丈夫ですが、建物の登記に関しては、借地権者名義でなければならないという判例があります。
選択肢の場合、建物保存登記がCの名義で行われているため、対抗要件にはならないことになります。
最高裁判例によると、地上権ないし賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違であるような場合であれば、その登記は対抗要件となることになっています。
借地借家法第22条より、定期借地権としては期間30年の定めがあるため、存続期間が50年以上とする一般定期借地権を設定することはできません。
そして借地借家法第23条より、事業用定期借地権等について鑑みると、居住用建物の所有を目的としている点より、事業用定期借地権を設定することもできないことがわかります。
それは公正証書で行うからといっても特に変わることはありませんので、このような契約は不可能になります。
借地借家法第13条では、建物買取請求権について賃借人の債務不履行によって契約が終了した場合には、建物買取請求権は認められないこととなっており、最高裁の判例でも棄却されております。
正解:Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。
借地権の登記がなくても、借地上に借地権者が登記する建物を所有するとき、これをもって借地権を第三者に対抗できるとされています。
借地権の対抗要件は「借地権の登記がされていること」「借地上に借地権者本人名義の登記された建物があること」「建物を滅失した場合、2年以内にその旨を掲示していること」とされています。
Aは自分名義の建物登記を持っていないので対抗力はないのです。
よって正しい肢になります。
誤りです。
判例では、「登記上の地番がその土地の地番の表示と多少相違していても、建物の同一性が確認できる程度の相違であれば登記は対抗要件になる」とされています。
誤りです。
「契約の更新なく期間満了により終了し、終了時にAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる」
これは、定期借地権の設定が必要だということを表しています。定期借地権は、存続期間50年以上であることが要件です。
本肢では、期間が30年と定められているので定期借地権を設定できません。
また、定期借地権の設定は書面で行うというだけで、公正証書である必要性はありません。
誤りです。
借主の債務不履行による賃貸借契約の解除は建物買取請求権は認められません。
地代も払わないのにさらに建物を買い取れというのは通用しないということです。
<借地の問題>
問題文通り正しく、正解肢です。
建物の登記は、借地権者と同一でなければ、借地権を第三者に対抗することはできません。
間違いです。
登記上の軽微な相違があっても、同一の建物だとわかるのであれば、借地権を対抗することができます。
間違いです。
「当該契約の更新がなく期間満了により終了し」ということなので、定期借地権にしたいのでしょうが、そもそも一般定期借地の場合は50年以上の期間が必要です。
今回は、前提条件として期間30年と提示してありますので、一般定期借地には該当しません。
また「建物を所有する目的」での借地ということですので、事業用定期借地にも該当しません。
つまり、公正証書で賃貸借契約を行っても、なんの効力も発生しないということになります。
間違いです。
Aが賃料を払わなかったことで、Bは土地の賃貸借契約を解除せざるを得なくなったので、この原因はAの債務不履行ということになります。
この場合、建物買取請求権は適用されません。
解説が空白の場合は、広告ブロック機能を無効にしてください。
また、広告右上の×ボタンを押すと広告の設定が変更できます。