行政書士の過去問
令和元年度
法令等 問26

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問題

行政書士試験 令和元年度 法令等 問26 (訂正依頼・報告はこちら)

国公立学校をめぐる行政法上の問題に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア  公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。
イ  公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は、仮にそれが被処分者の法律上の地位に何ら不利益な変更を及ぼすものではないとしても、その名誉につき重大な損害が生じるおそれがある場合は、そのことを理由に当該処分の取消しを求める法律上の利益が認められる。
ウ  公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対して発した職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
エ  国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、一般市民としての学生が国公立大学の利用を拒否することにほかならず、一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであるから、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象となる。
  • ア・イ
  • ア・ウ
  • イ・ウ
  • イ・エ
  • ウ・エ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:5.ウ・エ

ア:×
 「その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである」とする記載は誤りです。
 判例(最判H8.3.8)は、「その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである」と判事しています。

イ:×
 「当該処分の取消しを求める法律上の利益が認められる」とする記載は誤りです。
 判例(最判S61.10.23)は、「他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできない」と判事しています。
 
ウ:〇
 その通りです。
 卒業式等の式典における教職員の国歌斉唱時の起立斉唱等に係る職務命令に基づく義務に関する判例(最判H24.2.9)で、当該職務命令は、「教育公務員としての職務の遂行の在り方に関する校長の上司としての職務上の指示を内容とするものであって、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないと解される」と判事しています。

エ:〇
 その通りです。
 判例(最判S52.3.15)は、「国公立の大学において右のように大学が専攻科修了の認定をしないことは、実質的にみて、一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否することにほかならないものというべく、その意味において、学生が一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであると解するのが、相当である。されば、本件専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象になる」と判事しています。

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02

正解は5(ウ・エ)

ア× 信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分が裁量権の範囲を超える違法なものであるとされた事例(最判H8.3.8)に反するため、誤りです。

イ× 市立中学校教諭に対する同一市内中学校間の転任処分と右処分の取消を求める訴えの利益の有無を争った事例(最判S61.10.23)に反するため、誤りです。判決要旨は次の通りです。
「市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないときは、他に特段の事情がない限り、右教諭は転任処分の取消を求める訴えの利益を有しない。」

ウ〇 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱等に係る職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えについていわゆる無名抗告訴訟としては不適法であるとされた事例(最判H24.2.9)で判事された通りです。

エ〇 国公立大学における専攻科修了認定行為と司法審査について争った事例(最判S52.3.15)の通りです。判決を一部引用します。
「専攻科に入学した学生は、大学所定の教育課程に従いこれを履修し専攻科を修了することによつて、専攻科入学の目的を達することができるのであつて、学生が専攻科修了の要件を充足したにもかかわらず大学が専攻科修了の認定をしないときは、学生は専攻科を修了することができず、専攻科入学の目的を達することができないのであるから、国公立の大学において右のように大学が専攻科修了の認定をしないことは、実質的にみて、一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否することにほかならないものというべく、その意味において、学生が一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであると解するのが、相当である。されば、本件専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象になるものというべく、これと結論を同じくする原審の判断は、正当として是認することができる。」

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03

正解:⑤

ア:誤り
 裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断するのではなく、校長の合理的な教育的裁量による処分が、社会通念上の妥当性や、裁量権の逸脱の有無を考慮して判断します。
イ:誤り
 公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は、「その名誉につき重大な損害が生じるおそれがある場合」には該当せず、処分の取消しを求める法律上の利益が認められません。
ウ:正しい
 正しい記述です。
エ:正しい
 正しい記述です。

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