行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問6

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問題

行政書士試験 令和2年度 法令等 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

衆議院の解散に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 衆議院議員総選挙は、衆議院議員の任期が満了した場合と衆議院が解散された場合に行われるが、実際の運用では、任期満了による総選挙が過半数を占め、解散による総選挙は例外となっている。
  • 内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから、解散が憲法の明文規定に反して行われるなど、一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばないとするのが判例である。
  • 最高裁判所が衆議院議員選挙における投票価値の不均衡について憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されないとするのが政府見解であるが、実際には、不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例はない。
  • 衆議院が内閣不信任案を可決し、または信任案を否決したとき、内閣は衆議院を解散できるが、この場合には、内閣によりすでに解散が決定されているので、天皇は、内閣の助言と承認を経ず、国事行為として衆議院議員選挙の公示を行うことができると解される。
  • 天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば、国事行為としての衆議院の解散の宣言について内閣が助言と承認の権能を有しているからといって、内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は5

1.妥当でない
前半は妥当ですが、後半が×。
衆議院議員総選挙一覧表を見ると、実際の運用では、総選挙事由のほとんどが解散による総選挙であり、任期満了に伴う総選挙は第34回総選挙のみで、過去一度だけありました。

2.妥当でない
判例によれば、

「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であるから、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限に属しない(最判昭35.6.8)」とされています。
したがって、明白に違憲無効と認められる場合などの如何を問わず、衆議院の解散に司法審査は及びません。
ちなみに、本問にある「一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばない」という文言は、砂川事件(最大半昭34.⒓16)の判決文のものです。

3.妥当でない
判例によれば、

「投票価値の不均衡につき違憲状態であり、その是正が行われなかったものとして違憲と断定されても、選挙は違法と宣言するにとどめ、無効としない。(最判昭60.7.17)」としています。
1985年(昭和60年)に行われた衆議院議員の総選挙では、その前の総選挙であった不均衡の是正がされなかったと判断された例があります。

4.妥当でない
天皇の国事行為には、内閣の助言と承認を経ることを要します(憲法第7条)。

国会議員の総選挙の公示は、国事行為であり、衆議院議員選挙の公示は天皇の国事行為に該当します。
したがって、内閣の助言と承認を経ることを要します。

5.妥当
天皇の国事行為は、本来すべて形式的儀礼的行為と考えられています。
このような考え方をすると、内閣の助言と承認が必要な国事行為としての衆議院解散はありますが、内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできません。
実際にも、「内閣が解散権を有する」といった旨の規定は憲法上存在しません。

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02

答え…5

答えは5なのですが、5の話をよく知っている受験生は少ないと思われます。
では、どのように正解を見つけるかと言えば、消去法です。
1、2、3、4については、誤りと気付くことはそこまで困難ではないでしょう。
「1、2、3、4は誤り。ならば5が正解かな」いう風に答えを導き出すと良いと思われます。


1.×(妥当でない)
前半は正しいです。
衆議院議員総選挙は、衆議院議員の任期が満了した場合と衆議院が解散された場合に行われます。
後半は誤りです。
任期満了による総選挙は、昭和51年に1回行われたことがあるのみです。
(※令和3年4月現在)


2.×(妥当でない)
判例は、衆議院の解散について、次のように述べています。
「(…略…)衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべき(…略…)」
(苫米地事件/最大判昭35.6.8)

※なお、高度な政治性を有する条約については、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは裁判所の司法審査権の範囲外にある、とした判例があります。(砂川事件/最大判昭34.12.16)


3.×(妥当でない)
政府見解については、その通り。
しかし、不均衡を是正しないまま衆議院が解散されたことはあります。
例えば、2012年12月の衆議院議員総選挙がそうです。


4.×(妥当でない)
内閣の助言と承認は必要です。
【参考】
●憲法第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
(…略…)
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
(…略…)


5. ○(妥当)
その通りです。
学説の問題です。
【参考】
●憲法第7条 
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
(…略…)
3 衆議院を解散すること。
(…略…)

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03

本問は憲法の統治に関する問題です。

選択肢1. 衆議院議員総選挙は、衆議院議員の任期が満了した場合と衆議院が解散された場合に行われるが、実際の運用では、任期満了による総選挙が過半数を占め、解散による総選挙は例外となっている。

ニュースを見ていると、衆議院、よく解散して選挙になっていませんか。

逆に、任期満了で選挙になったケースの方が少ないような気がします。

そう、実際の運用では任期満了で総選挙が行われることがレアケースで、解散による総選挙がほとんどなのです。

よって、本記述は誤っています。

選択肢2. 内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから、解散が憲法の明文規定に反して行われるなど、一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばないとするのが判例である。

判例(最判昭和35年6月8日民集第14巻7号1206頁)は、「あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象となるものと即断すべきではない。直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえ法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解するべきである」としています。

よって、一見極めて明白に違憲無効と認められるか否かに関わりなく衆議院の解散には司法審査は及びません。

よって、本記述は誤っています。

選択肢3. 最高裁判所が衆議院議員選挙における投票価値の不均衡について憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されないとするのが政府見解であるが、実際には、不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例はない。

「○○がされた例はない」とする記述は経験上誤りであることが多いです。

実際、過去には不均衡を是正しないまま衆議院解散がされたことは何度かあります。

よって、本記述は誤っています。

選択肢4. 衆議院が内閣不信任案を可決し、または信任案を否決したとき、内閣は衆議院を解散できるが、この場合には、内閣によりすでに解散が決定されているので、天皇は、内閣の助言と承認を経ず、国事行為として衆議院議員選挙の公示を行うことができると解される。

天皇が国事行為として衆議院選挙の公示をするには、必ず内閣の助言と承認が必要です。(憲法7条4号)

よって、本記述は誤っています。

選択肢5. 天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば、国事行為としての衆議院の解散の宣言について内閣が助言と承認の権能を有しているからといって、内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる。

本記述の通りです。

まとめ

統治は条文の知識を問う問題が多いのですが、本問は判例や学説、過去の事例を問う問題なので正直難しいです。

特に学説を問う選択肢は、分からなくても仕方ないと思います。

ただ、条文知識を問う選択肢についてはしっかり復習しておくようにしましょう。

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