行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問7
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問題
行政書士試験 令和2年度 法令等 問7 (訂正依頼・報告はこちら)
憲法訴訟における違憲性の主張適格が問題となった第三者没収に関する最高裁判所判決(※)について、次のア~オの記述のうち、法廷意見の見解として、正しいものをすべて挙げた組合せはどれか。
ア 第三者の所有物の没収は、所有物を没収される第三者にも告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であり、これなしに没収することは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害することになる。
イ かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、それが被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をすることができる。
ウ 被告人としても、その物の占有権を剥奪され、これを使用・収益できない状態におかれ、所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求めることができるものと解すべきである。
エ 被告人自身は本件没収によって現実の具体的不利益を蒙ってはいないから、現実の具体的不利益を蒙っていない被告人の申立に基づき没収の違憲性に判断を加えることは、将来を予想した抽象的判断を下すものに外ならず、憲法81条が付与する違憲審査権の範囲を逸脱する。
オ 刑事訴訟法では、被告人に対して言い渡される判決の直接の効力が被告人以外の第三者に及ぶことは認められていない以上、本件の没収の裁判によって第三者の所有権は侵害されていない。
(注※最大判昭和37年11月28日刑集16巻11号1593頁)
ア 第三者の所有物の没収は、所有物を没収される第三者にも告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であり、これなしに没収することは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害することになる。
イ かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、それが被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をすることができる。
ウ 被告人としても、その物の占有権を剥奪され、これを使用・収益できない状態におかれ、所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求めることができるものと解すべきである。
エ 被告人自身は本件没収によって現実の具体的不利益を蒙ってはいないから、現実の具体的不利益を蒙っていない被告人の申立に基づき没収の違憲性に判断を加えることは、将来を予想した抽象的判断を下すものに外ならず、憲法81条が付与する違憲審査権の範囲を逸脱する。
オ 刑事訴訟法では、被告人に対して言い渡される判決の直接の効力が被告人以外の第三者に及ぶことは認められていない以上、本件の没収の裁判によって第三者の所有権は侵害されていない。
(注※最大判昭和37年11月28日刑集16巻11号1593頁)
- ア・イ
- ア・エ
- イ・オ
- ア・イ・ウ
- ア・エ・オ
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この過去問の解説 (3件)
01
第三者所有物没収事件(最大判37.11.28)からの出題です。
ア. 〇(正しい)
法廷意見には、
「所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに他ならない」
と述べられています。
※第三者に告知・聴聞の機会を与えずに没収することは、憲法29条、31条に違反します。
イ. 〇(正しい)
法廷意見では、
「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である」としています。
ウ. 〇(正しい)
法廷意見では、
「(…略…)等、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求めることができる(…略…)」としています。
エ.×(誤り)
エには「被告人は本件没収によって現実の具体的不利益を蒙ってはいない」
とありますが、法廷意見には、
「被告人としても没收に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、收益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らか」
とあります。
・選択肢エ→被告人は不利益を蒙らない
・法廷意見→被告人は不利益を蒙る
※なお、反対意見(下飯坂潤夫裁判官)には、
「現実の具体的不利益を蒙つていない場合に、その違憲性についての争点に判断を加えることは、将来を予想して疑義論争に抽象的判断を下すことに外ならず、司法権行使の範囲を逸脱するものである。」、「被告人は本件没収の裁判により現実的には何ら具体的不利益を蒙つているわけではない」とあります。
オ.×(誤り)
法廷意見には、
「(…略…)当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずる(…略…)」
と述べられています。
つまり、法廷意見は、第三者の所有権は侵害されるとしています。
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02
正解 【4】
ア.正しい
判例は、
「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理である(最判昭37.11.28)。」としています。
また、
「これをなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならない」ともしています。
したがって、この選択肢は法廷意見の見解として正しいです。
イ.正しい
「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、それが被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である(最判昭37.11.28)。」としているので、本選択肢の通りです。
ウ.正しい
【イ】の判例の理由文の続きに、
「のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである(最判昭37.11.28)。」としているので、選択肢の通りです。
エ.誤り
【ウ】の通り、被告人自身は本件没収により、第三者による賠償請求権の行使のおそれなど、現実の具体的不利益を蒙っています。
よって、現実の具体的不利益を蒙ってはいないとする本選択肢は誤りです。
オ.誤り
判例によれば、第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言渡しを受け、その刑事処分の効果は第三者にも及ぶため、第三者の所有権は侵害されます。(最判昭37.11.28)
そのために、所有物を没収される第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要とされています。
したがって本選択肢も誤りです。
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03
本問は第三者物没収事件(最大判昭和37年11月28日刑集16巻11号1593頁)の判例の知識を問う問題です。
ア 本判例は「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪う事は、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない」としています。
よって、本記述は正しいです。
イ 本判例は「前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加系として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収させられる第三者についても、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続きによらないで、財産権を侵害する制裁を科すに外ならないからである」とした上で、「被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である」としています。
よって、本記述は正しいです。
ウ 本判例は「被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から損害賠償請求権を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができる」としています。
よって、本記述は正しいです。
エ 本判例は「被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から損害賠償請求権を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかである」としており、 被告人自身は本件没収によって現実の具体的不利益を蒙ってはいない訳ではありません。
よって、本記述は誤っています。
オ 本判例は「前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加系として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから」としています。
よって、本記述は誤っています。
本肢が正解です。
本問は、ア、イ、ウと、他の選択肢が矛盾している為、消去法で回答できる問題になりますが、第三者物没収事件自体重要な判例になりますので、しっかりと復習しておくようにしましょう。
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