行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問40

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問題

行政書士試験 令和3年度 法令等 問40 (訂正依頼・報告はこちら)

剰余金の株主への配当に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア  株式会社は、剰余金の配当をする場合には、資本金の額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を、資本準備金または利益準備金として計上しなければならない。
イ  株式会社は、金銭以外の財産により剰余金の配当を行うことができるが、当該株式会社の株式等、当該株式会社の子会社の株式等および当該株式会社の親会社の株式等を配当財産とすることはできない。
ウ  株式会社は、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当を行うことができない。
エ  株式会社が剰余金の配当を行う場合には、中間配当を行うときを除いて、その都度、株主総会の決議を要し、定款の定めによって剰余金の配当に関する事項の決定を取締役会の権限とすることはできない。
オ  株式会社が最終事業年度において当期純利益を計上した場合には、当該純利益の額を超えない範囲内で、分配可能額を超えて剰余金の配当を行うことができる。
  • ア・ウ
  • ア・エ
  • イ・エ
  • イ・オ
  • ウ・オ

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この過去問の解説 (3件)

01

.会社法第445条4項において「剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。」と規定されています。

よって正しいです

.会社法第454条1項1号に「配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)」と記載されています。

子会社や親会社の株式は配当財産にできるため誤りです

.会社法第458条に「第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。」と規定されています。

よって正しいです

.「会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。」(会社法第459条1項)とされているため、定款で定めることができる会社もあります。

よって誤りです

.会社法第461条1項「次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。」の第8号に「剰余金の配当」と規定されているため、分配可能額を超えた剰余金の配当を行うことはできません

よって誤りです

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02

ア.正しい。「剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。」(会社法445条4項)とされ、条文通りの内容です。

イ.誤り。株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額」(会社法454条1項 1号)とされ、配当が行われる会社の株式を配当財産として扱うことはできません。

ウ.正しい。第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。」(会社法458条)とされ、条文通りの内容です。

エ.誤り。会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。」(会社法459条1項)とされ、定款で定めることにより剰余金の配当に関する事項の決定を取締役会の権限とすることができます。

オ.誤り。次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。 剰余金の配当」(461条1項 8号)とされ、剰余金の配当において分配可能額を超えて配当を行うことはできません。

よって、正解は1。

参考になった数4

03

この問題のポイントは会社法445条、454条、458条、459条、461条の理解です。

まず会社法445条は株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

 剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

 合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転又は株式交付に際して資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める。

 定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号、第四号若しくは第五号ロに掲げる事項についての定め又は報酬委員会による第四百九条第三項第三号、第四号若しくは第五号ロに定める事項についての決定に基づく株式の発行により資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める。

とされています。

会社法454条は株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額

 株主に対する配当財産の割当てに関する事項

 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日

 前項に規定する場合において、剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは、株式会社は、当該種類の株式の内容に応じ、同項第二号に掲げる事項として、次に掲げる事項を定めることができる。

 ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 前号に掲げる事項のほか、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 第一項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。

 配当財産が金銭以外の財産であるときは、株式会社は、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めることができる。ただし、第一号の期間の末日は、第一項第三号の日以前の日でなければならない。

 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは、その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間

 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨及びその数

 取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

とされています。

会社法458条は株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、剰余金の配当を適用しないとされています。

会社法459条は会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。

 第百六十条第一項の規定による決定をする場合以外の場合における第百五十六条第一項各号に掲げる事項

 第四百四十九条第一項第二号に該当する場合における第四百四十八条第一項第一号及び第三号に掲げる事項

 第四百五十二条後段の事項

 第四百五十四条第一項各号及び同条第四項各号に掲げる事項。ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。

 前項の規定による定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り、その効力を有する。

 第一項の規定による定款の定めがある場合における第四百四十九条第一項第一号の規定の適用については、同号中「定時株主総会」とあるのは、「定時株主総会又は第四百三十六条第三項の取締役会」とする。

とされてます。

会社法461条は次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。

 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り

 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)

 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得

 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得

 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り

 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り

 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り

 剰余金の配当

 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。

 剰余金の額

 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額

 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額

 自己株式の帳簿価額

 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額

 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

とされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. ア・ウ

解説の冒頭より、剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならないとされています。

よって、アは株式会社は、剰余金の配当をする場合には、資本金の額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を、資本準備金または利益準備金として計上しなければならないとなります。

また、解説の冒頭より株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、剰余金の配当を適用しないとされてます。

よって、ウは株式会社は、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当を行うことができないとなります。

選択肢2. ア・エ

解説の冒頭より、会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、剰余金の配当に関する事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができるとされています。

よって、エは株式会社が剰余金の配当を行う場合には、中間配当を行うときを除いて、その都度、株主総会の決議を要し、定款の定めによって剰余金の配当に関する事項の決定を取締役会の権限とすることはできる場合もあるとなります。

選択肢3. イ・エ

解説の冒頭より、株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額を定めなければならないとされてます。

よって、株式会社は、金銭以外の財産により剰余金の配当を行うことができるが、当該株式会社の株式等を配当財産とすることはできないとなります。

選択肢4. イ・オ

解説の冒頭より、剰余金の配当より株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならないとされています。

よって、オは株式会社が最終事業年度において当期純利益を計上した場合には、当該純利益の額を超えない範囲内で、分配可能額を超えて剰余金の配当を行うことができないとなります。

まとめ

この問題のように条文知識を問う問題は必ず出てくるので、条文素読もやった方が良いでしょう。

また、今回出てきた条文は過去にも出題されているので、もう一度チェックした方が良いでしょう。

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