行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問25

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問25 (訂正依頼・報告はこちら)

空港や航空関連施設をめぐる裁判に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
  • いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。
  • いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。
  • いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。
  • いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。
  • いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題のポイントは最判昭53.12.8、最大判昭56.12.16、最判平元.2.17、最判平4.7.1、最判平28.12.8の理解です。

以下にこれらの判例をまとめます。

・最判昭53.12.8

この判例の争点は全国新幹線鉄道整備法に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可は、抗告訴訟の対象となるかどうかです。

結果として、ならないとされ、理由はこの認可は運輸大臣が建設公団に対して、作成した工事実施計画の整備計画との整合性を審査してなす監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべき ものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによつて直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないからとされています。

・最大判昭56.12.16

この判例の争点は民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは適法かどうかです。

結果として、不適法であるとされ、理由として航空機の発する騒音等により身体的・精神的被害、生 活妨害等の損害を被つているとし人格権又は環境権に基づく妨害排除又は妨害予防 の民事上の請求として一定の時間帯につき本件空港を航空機の離着陸に使用させる ことの差止めを請求する部分は、その実質において、公権力の行使に関する不服を内容とし、結局において運輸大臣の有する行政権限の発動、行使の義務づけを訴求 するものにほかならないから、民事裁判事項には属しないものであり、また、本件 空港に離着陸する航空機の騒音等のもたらす被害対策としてはいくつかの方法があって、そのいずれを採択し実施するかは運輸大臣の裁量に委ねられている事項であるにもかかわらず、そのうちの一方法にすぎない一定の時間帯における空港の供用 停止という特定の行政権限の行使を求めるものである点において、行政庁の行使す べき第一次的判断権を侵犯し、三権分立の原則に反するものというべきであるからとされております。

・最判平元.2.17

この判例の争点は定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が周辺住民にあるかどうかです。

結果として、あるとされ、理由としては新たに付与された定期航空運送 事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行 われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の 離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の 騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを 求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有 すると解するのが相当であるからとされています。

・最判平4.7.1

この判例の争点は新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性です。

結果として合憲とされ、理由は新空港の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、 公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づき、高度かつ緊急の必要性の下に 発せられるものであるから、右工作物使用禁止命令によってもたらされる居住の制 限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであるといわなければならないからです。

・最判平28.12.8

周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点です。

結果として、提起できるとされ、理由として、,①上記住民は,当該飛行場周辺の「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」4条所定の第一種区域内に居住し,当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により,睡眠妨害,聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており,その程度は軽視し難いこと,②このような被害の発生に自衛隊の使用する航空機の運航が一定程度寄与していること,③上記騒音は,当該飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり,上記被害もそれに応じてその都度発生し,これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであることなど判示の事情の下においては,当該飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航の内容,性質を勘案しても,行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるからです。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。

解説の冒頭より、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が飛行場周辺住民に航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるから、原告適格があるとされています。

よって、いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとして、原告適格は認められるとされたとなります。

選択肢2. いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。

解説の冒頭より、民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは不適法であるとされています。

よって、いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは不適法であるとされたとなります。

選択肢3. いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。

解説の冒頭より、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟は提起できるとされています。

よって、いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされたとなります。

選択肢4. いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。

解説の冒頭より、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)は合憲とされています。

よって、いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶが、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反しないとされたとなります。

選択肢5. いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

解説の冒頭より、全国新幹線鉄道整備法に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可は、抗告訴訟の対象とならないとされています。

よって、いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められないとされたとなります。

まとめ

この問題で出てくる判例は、度々行政書士試験に出てくるので、今回の判例をもう一度見直してみた方が良いでしょう。

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02

行政事件訴訟法に関する出題です。

選択肢1. いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。

誤りです。

判例(最判平1.2.17:新潟空港訴訟)によると「新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機騒音によって社会通念上着しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する」と判示しています。航空運送事業免許に関連する航空路線の使用飛行場周辺に住む人々は、航空機の騒音や離着陸の回数などによって受ける影響が大きい場合、その航空免許を取り消すことを求める訴訟を起こす権利がある(原告適格を有する)ということになります。

選択肢2. いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。

誤りです。

航空機の離着陸によって生じる騒音や環境への影響に対する争いについて、判例(最大判昭56.12.16:大阪空港訴訟)によると、「「空港管理権に基づく管理」と「航空行政権に基づく規制」とが、「空港管理権者としての運輸大臣」と「航空行政権の主管者としての運輸大臣」の両者が不即不離(継続して進め)、不可分一体的に行使実現されているものと解するのが相当なため、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは、不適法である」と判示しています。つまり、民事訴訟で訴えることはできないということになります。

選択肢3. いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。

妥当です。

自衛隊が設置した「厚木基地(海上自衛隊とアメリカ海軍が使用する飛行場)」の周辺住民が、その飛行場の騒音被害を理由に、飛行機を飛ばすことの差止める訴えを提起した。これに対して判例(最判平28.12.8)では、『①住民は、当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、その程度は軽視し難いこと、②このような被害の発生に自衛隊の使用する航空機の運航が一定程度寄与していること、③上記騒音は、当該飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであることなど判示の事情の下においては、当該飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航の内容、性質を勘案しても、行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる』と判示しています。

選択肢4. いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。

誤りです。

成田新法の条文が憲法31条の適正手続の保障に違反していないか争われた事件について、判例(最大判平4.7.1:成田新法訴訟)によると「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」と判示しており、憲法31条の法定手続の保障は、刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶ可能性を認めています。しかし、成田新法の条文は、憲法31条に違反しない」としました(最大判平成4.7.1)。

選択肢5. いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

誤りです。

判例(最判昭53.12.8:成田新幹線訴訟)によると、『新幹線を作るために、日本鉄道建設公団が工事実施計画を作成し、この(新幹線)工事実施計画に対して行う国土交通大臣の認可は、いわば「日本鉄道建設公団の上級行政機関(国土交通大臣)」が、「下級行政機関(日本鉄道建設公団)」に対し、一定の審査をするという監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない(処分性を有しない)』と判示しました。よって、「建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとした。」とはいえない。

まとめ

出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。

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03

 空港や航空関連施設をめぐる裁判に関する出題です。

選択肢1. いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。

 行政事件訴訟法9条1項により、「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。」とされ、同条2項により、「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」とされ、同法10条1項により、「取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。」とされ、最高裁判所判決平成元年2月17日で、判事事項により、「定期航空運送事業免許の取消訴訟と飛行場周辺住民の原告適格。」とされ、裁判要旨により、「定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する。」とされます。

 つまり、「航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた」という部分が、妥当ではありません。

選択肢2. いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。

 民法709条により、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とされ、国家賠償法2条1項により、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」とされ、最高裁判所大法廷判決昭和56年12月16日で、判事事項により、「 ①民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えの適否、➁営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合と国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵、③国営空港に離着陸する航空機の騒音が一定の程度に達しており空港周辺地域の住民の一部により当該騒音を原因とする空港供用の差止請求等の訴訟が提起されているなどの状況のもとに当該地域に転入した者が当該騒音により被害を受けたとして国に対し慰藉料を請求した場合につき右請求を排斥すべき事由がないとした認定判断に経験則違背等の違法があるとされた事例、④将来にわたつて継続する不法行為に基づく損害賠償請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有するとされるための要件。」とされ、裁判要旨により、「 ①民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは、不適法である、➁営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法2条1項にいう設置又は管理の瑕疵があるものというべきである、③当該空港に離着陸する航空機の騒音がその頻度及び大きさにおいて一定の程度に達しており、また、空港周辺住民の一部により当該騒音を原因とする空港供用差止請求等の訴訟が提起され、主要日刊新聞紙上に当該空港周辺における騒音問題が頻々として報道されていたなど、判示のような状況のもとに空港周辺地域に転入した者が空港の設置、管理者たる国に対し当該騒音による被害について慰藉料の支払を求めたのに対し、特段の事情の存在を確定することなく、転入当時当該の者は航空機騒音が問題になつている事情ないしは航空機騒音の存在の事実をよく知らなかつたものとし、当該請求を排斥すべき理由はないとした原審の認定判断には、経験則違背等の違法がある、④現在不法行為が行われており、同一態様の行為が将来も継続することが予想されても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができ、かつ、当該権利の成立要件の具備については債権者がこれを立証すべきものと考えられる場合には、かかる将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有しない。」とされます。

 つまり、「適法であるとされた」という部分が、妥当ではありません。

選択肢3. いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。

 行政事件訴訟法3条7項により、「この法律において差止めの訴えとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同法37条の4第1項により、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」とされ、同条2項により、「裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。」とされ、同条3項により、「差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」とされ、同条5項により、「差止めの訴えが1項及び3項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。」とされ、最高裁判所判決平成28年12月8日で、判事事項により、「 ①自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場の周辺住民が、当該飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として自衛隊の使用する航空機の運航の差止めを求める訴えについて、行政事件訴訟法37条の4第1項所定の重大な損害を生ずるおそれがあると認められた事例、➁自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、行政事件訴訟法37条の4第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 ①自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場の周辺に居住する住民が、当該飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として、自衛隊の使用する航空機の毎日午後8時から午前8時までの間の運航等の差止めを求める訴えについて、❶当該住民は、当該飛行場周辺の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律4条所定の第一種区域内に居住し、当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、その程度は軽視し難いこと、❷このような被害の発生に自衛隊の使用する航空機の運航が一定程度寄与していること、❸当該騒音は、当該飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、当該被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであることなど判示の事情の下においては、当該飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航の内容、性質を勘案しても、行政事件訴訟法37条の4第1項所定の重大な損害を生ずるおそれがあると認められる、➁自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場における、自衛隊の使用する航空機の毎日午後8時から午前8時までの間の運航等に係る防衛大臣の権限の行使は、❶当該運航等が我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしており、高度の公共性、公益性があること、❷当該飛行場周辺の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律4条所定の第一種区域内に居住する住民は、当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、このような被害は軽視することができないものの、これを軽減するため、自衛隊の使用する航空機の運航については一定の自主規制が行われるとともに、住宅防音工事等に対する助成、移転補償、買入れ等に係る措置等の周辺対策事業が実施されるなど相応の対策措置が講じられていることなど判示の事情の下においては、行政事件訴訟法37条の4第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえない。」とされるので、妥当です。

選択肢4. いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。

 日本国憲法21条1項により、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とされ、日本国憲法22条1項により、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」とされ、日本国憲法29条1項により、「財産権は、これを侵してはならない。」とされ、日本国憲法29条2項により、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とされ、日本国憲法31条により、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とされ、日本国憲法33条により、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とされ、日本国憲法35条1項により、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」とされ、最高裁判所大法廷判決平成4年7月1日の成田新法事件で、事件により、「成田空港開設に反対する過激派集団に対処するために制定された成田新法に基づき、運輸大臣が規制区域内に反対派が建築した鉄筋コンクリート造の建築物に対し、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用等に供することを禁止する命令を出したことに対し、反対派が憲法31条及び35条違反を理由に当該命令の取消しを求めた。」とされ、争点により、「①憲法31条は行政手続にも準用されるか、➁告知、聴聞の機会を与えることなく工作物の使用を禁止する処分を定めたいわゆる成田新法が憲法31条に違反しないか。」とされ、判旨により、「①行政手続については、刑事手続ではないとの理由のみで、当然に憲法31条の保障の枠外にあると判断すべきではないが、しかし、行政手続は刑事手続と性質が異なり、行政目的に応じて多種多様であり、そこで、事前の告知弁解防御の機会を与えるかどうかは、相手方の利益と行政処分により達成できる利益等を総合較量して判断すべきである、➁成田新法について、告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、憲法31条に反しない。」とされます。

 つまり、「憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた」という部分が、妥当ではありません。

選択肢5. いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

 行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決昭和53年12月8日で、判事事項により、「 全国新幹線鉄道整備法9条に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「 全国新幹線鉄道整備法9条に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可は、抗告訴訟の対象とならない。」とされます。

 つまり、「成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた」という部分が、妥当ではありません。

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