運行管理者(貨物)の過去問
平成28年度 第1回
実務上の知識及び能力 問44

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問題

平成28年度 第1回 運行管理者試験(貨物) 実務上の知識及び能力 問44 (訂正依頼・報告はこちら)

運行管理者が、次の大型トラックの事故報告に基づき、この事故の要因分析を行ったうえで、同種事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せを、下の枠内の選択肢(1~8)から1つ選びなさい。なお、解答にあたっては、<事故の概要>及び<事故関連情報>に記載されている事項以外は考慮しないものとする。

<事故の概要>
当該運転者は、事故当日は普段より遅れて出社し、運行管理者の補助者による乗務前点呼を受けた後、積み置きしてあった最大積載量14トンの大型トラックに1名で乗務し、8時に営業所を出発した。1時間一般道路を走行した後高速道路に入り、2時間走行した後20分の休憩をとった。さらに3時間走行し15分の休憩をとり、続けて1時間30分程度走行したところで(運行開始より約550キロメートル走行した地点)、緩やかな右カーブにおいて、前方で起きた事故のために徐行していた自動車に追突した。

<事故関連情報>
○当該運転者は、事故前日休日で就寝時間が遅かった。
○当日の運行は、荷主直接からの運送依頼による定期運行の経路であり、事故日前々日に営業所隣の車庫で積み荷作業を済ませていた。
○当該営業所では、運行管理者と運行管理者の補助者による交代制で点呼を実施しており、当該運行については、補助者が乗務前点呼を実施した。
○当該運転者は、事故日の1ヵ月前に、拘束時間、連続運転時間について、改善基準を超えた運行を行っていた。他の運転者においても同様の違反があった。
○事業者は、毎月1回の安全衛生委員会を開催して運転者の指導を行っている。また、当該運転者に対しては、速度超過があるので個別の指導も実施していた。
○当該運転者は、直近の適性診断の結果では、動作の正確さ、判断・動作のタイミングも良く、また、働き方や生活習慣も非常に良い状態であった。しかし、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いを指摘されていた。
○当該運転者は、適性診断ではSASの疑いを指摘されていたが、健康診断においては特に指摘がなかったため、スクリーニング検査は受けていなかった。
○当該車両は、法令で定められた日常点検及び定期点検整備を実施していた。また、当該車両には衝突被害軽減ブレーキが装着されていた。

<事故の再発防止対策>
ア  定期健康診断において所見が認められなかった運転者に対して、SAS等に係る外見上の前兆や自覚症状がないかを確認する。また、自覚症状等がない運転者に対しても、主要疾病等に関するスクリーニング検査を実施し、着実かつ早期の発見に努める。
イ  点呼において、運転者に対し、最近、連続運転時間及び速度超過の違反が多いことを再認識させ、休憩場所や休憩時間等について指示どおり運行することを徹底する。
ウ  常に点呼が確実に実施できるよう、体制の整備を図る。
エ  たとえいつも慣れた運行経路であっても、漫然運転に陥らないよう、運転中は常に運転に集中し、前方に注意して走行するよう指導する。また、危険を予測し、これを回避できる運転操作を徹底させる。
オ  関係法令及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の違反防止を図るため、運転者に対して適切な運行指示を徹底する。
カ  貨物自動車運送事業は、公共的な輸送事業であり、貨物を安全かつ確実に輸送することが社会的使命であることを運転者に深く認識させる。
キ  衝突被害軽減ブレーキ装着車であっても、必ず衝突をさけるものではない。運転者及び運行管理者は、これらの安全技術が装着されている車両においても、その技術を過信しすぎないことの理解を深めることが必要である。
ク  法令で定めた日常点検及び定期点検整備を確実に実施する。
問題文の画像
  • ア・イ・ウ・キ
  • ア・イ・オ・ク
  • ア・ウ・エ・カ
  • ア・エ・キ・ク
  • イ・エ・オ・キ
  • イ・オ・カ・ク
  • ウ・エ・カ・ク
  • ウ・オ・カ・キ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 5. になります。

問題文を読むと最も直接的に有効と考えられる組合わせとあり、悩む部分ありますが、違うものを消去して考えていく方が早いかと思います。
事故関連情報との照らし合わせてみましょう。
ア. 直接的防止策ではありません。
 運転者は睡眠時無呼吸症候群の疑いを指摘され
 ていたが、スクリーニング検査を受けていませんでした。
 今回の問題文では、こちらも治療などを行う必要があるが、
 事故の直接的要因、直接的防止策とは、なりにくいです。
イ. 直接的防止策です。
 事故当日の運行状況をみると、
 車庫出発後 運転1時間+運転2時間後
 休憩20分 その後3時間運転 休憩不足による
 4時間以上の運転時間となっています。20分の
 休憩のところが30分以上の休憩または、作業な
 どでの運転中断がなければなりません。過重労働や
 休憩不足の防止のためには、違反運行の改善は、
 事故防止には直接的に有効です。
ウ. 直接的防止策ではありません。
 点呼については、乗務前に適正に実施しています。
 点呼の未実施や実施の状況の不備に起因する事故
 ではありません。
エ. 直接的防止策です。 
 問題文通りに定例の運行経路であっても、
 漫然運転とならないような継続的な教育、指導は
 必要です。
オ. 直接的防止策です。
 今回の運行は連続運転時間の違反があり、乗務
 員の休憩不足となっています。こちらを改善する
 ことは過重労働を防ぎ、事故防止につながります。
カ. 直接的防止策ではありません。 
 問題文は、全般の教育としては必要な事項で
 あるが、直接的防止策でありません。抽象的とな
 っています。
キ. 直接的防止策です。
 衝突被害軽減ブレーキ装着車であってもその
 効果、装備を過信しすぎることの教育は必要
 です。
ク. 直接的防止策ではありません。
 今回の事故は、日常点検の実施の不備に起因
 するものではありません。
よって、直接的防止策は、イ.エ.オ.キ となります。
番号選択肢は、 5. となる。

参考になった数28

02

⑤が解答となります。

事故内容・関連する対策から最適なものを選びます。

実際の試験では全体を通して、時間的な余裕が少ない方も多いと思いますので、消去法で選択肢を絞っていく事が早いかと思います。

解説としては1つずつ比較して記載をしますが、重要なポイントを整理することが速く正しい解答を導くには有効かと思いますので、参考にしてみてください。

ア  定期健康診断において所見が認められなかった運転者に対して、SAS等に係る外見上の前兆や自覚症状がないかを確認する。また、自覚症状等がない運転者に対しても、主要疾病等に関するスクリーニング検査を実施し、着実かつ早期の発見に努める。

対策としては相応しくありません。

 内容としてはSASのスクリーニング検査を行うことは、

 病気の早期発見につながるので良いと思いますが、今回の事故概要では

 SASによる事故とは結び付かないため、対策としては不適切となります。 

イ  点呼において、運転者に対し、最近、連続運転時間及び速度超過の違反が多いことを再認識させ、休憩場所や休憩時間等について指示どおり運行することを徹底する。

正しい対策となります。

 当該運転手および他の運転手にも連続運転時間についての

 改善基準告示違反がみられます。

 また、事故当日の運転についても

 ・ 一般道 (1時間)

 ・高速道路 (2時間)

 ・休憩   (20分)

 ・走行   (3時間)

  この時点で連続運転時間の改善基準告示に違反しています

 ・休憩   (15分)

 ・走行   (1時間30分)

 ・事故発生 

 この流れになっており、連続運転時間の改善基準告示に違反する運行

 となっています。

 そのため、疲労や集中力低下による判断の遅れも要因の1つと考えられる

 ため、対策として正しい休憩の取り方・走行時間について認識させることは

 有効な対策となります。 

ウ  常に点呼が確実に実施できるよう、体制の整備を図る。

 対策としては相応しくありません。

  通常時より運行管理者または補助者が点呼を行う体制も整っており、

  事故当日も補助者による点呼を受けているため、問題はありません。

  

エ  たとえいつも慣れた運行経路であっても、漫然運転に陥らないよう、運転中は常に運転に集中し、前方に注意して走行するよう指導する。また、危険を予測し、これを回避できる運転操作を徹底させる。

正しい対策となります。

 〈事故関連情報〉より当該コースは「定期運行」の業務と見られます。

  そのため使用する道路や時間帯が固定であることから

  「慣れ」「いつも通り」という気の緩みも見られます。

  当該運転手の運転経歴や年齢などは不明ですが

  「慣れ親しんだ道・ルート」では注意力が散漫になり危険予知に

  遅れが生じます。

  「まさか道の先に事故車がいるとは思わなかった」

  「昨日は何もなかったから今日も大丈夫」とならないように、

  常に集中して運転をすること、また前車の動きをよく見る事を指導

  していく事も対策としては有効です。 

オ  関係法令及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の違反防止を図るため、運転者に対して適切な運行指示を徹底する。

正しい対策となります。

 当該運転手にかぎらず、改善基準告示違反が何件か見られます。

 これらは運行管理者の責に当たる部分も多いため、運行計画の見直し

 及び適正な運行管理を行い正しい運行指示を運転手にすることも

 大切になります。 

カ  貨物自動車運送事業は、公共的な輸送事業であり、貨物を安全かつ確実に輸送することが社会的使命であることを運転者に深く認識させる。

対策としては相応しくありません。

 文言としては間違いはありませんが、今回の事故事例に対する対策

 としては相応しくありません。

 また、貨物を安全かつ確実に輸送するという認識のみを強く与えてしまうと、

 運転手自身も「とにかく目的地に行かなければ!」「早く行くことが大切!」

 と本来あるべき運行管理から離れた解釈になってしまうため、

 指導方法には工夫が必要となります。

キ  衝突被害軽減ブレーキ装着車であっても、必ず衝突をさけるものではない。運転者及び運行管理者は、これらの安全技術が装着されている車両においても、その技術を過信しすぎないことの理解を深めることが必要である。

正しい対策となります。 

 衝突被害軽減ブレーキも100%事故を防げるものではありません。

 事故時の走行スピードや天候等による道路状況の変化などで発揮される

 能力も変わってきます。

 安全装置だけを過信せず、日ごろから適正な車間距離や走行スピードを

 運転手自身が作り出すことの重要性を指導することは有効となります。 

ク  法令で定めた日常点検及び定期点検整備を確実に実施する。

対策としては相応しくありません。

 当該車両については日常点検および定期点検も行われているため、

 問題はありません。

 また事故自体も車両の整備不良による要因は認められないため、

 正しい対策とはなりません。

これらにより正しい選択肢はイ・エ・オ・キの4つとなります。 

参考になった数7

03

一つずつ問題を見ながら解説していきます。

選択肢5. イ・エ・オ・キ

こちらが正解です。

ア:運転者はSASの疑いを指摘されていたにも関わらず、スクリーニング検査を受けていなかったので、事故原因が運転者のSASによるものであると読みきれず、同種自己の再発防止対策として、直接的に有効であるとは言えません

ウ:事故の当日補助者による乗務前点呼を実施していて、事故は点呼の実施体制に不備があったために生じた事故ではない。 したがって同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとは言えない。

カ:貨物自動車運送事業は公共的な輸送事業であり、貨物を安全、確実に輸送することが社会的使命であると言えるが、事故の再発防止対策としては、もっと具体的な指導等が必要であり、このような抽象的なものは直接的に有効ではありません

ク:事故の当日、日常点検を実施しており、今回の事故は日常点検や定期点検の不備があったために生じた事故ではない。 ですので同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとは言えません。

よって正解はイ・エ・オ・キとなります。

まとめ

同種事故の再発防止について理解を深めましょう。

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