運行管理者(貨物)の過去問
平成30年度 第1回
実務上の知識及び能力 問54

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問題

平成30年度 第1回 運行管理者試験(貨物) 実務上の知識及び能力 問54 (訂正依頼・報告はこちら)

運行管理者が次の事業用普通トラックの事故報告に基づき、この事故の要因分析を行ったうえで、同種事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せを、下の枠内の選択肢(1〜8)から1つ選び、解答用紙の該当する欄にマークしなさい。
なお、解答にあたっては、く事故の概要>及び<事故関連情報>に記載されている事項以外は考慮しないものとする。

<事故の概要>
当該トラックは、17時頃、霧で見通しの悪い高速道路を走行中、居眠り運転により渋滞車列の最後尾にいた乗用車に追突した。当該トラックは当該乗用車を中央分離帯に押し出したのち、前方の乗用車3台に次々と追突し、通行帯上に停止した。
この事故により、最初に追突された乗用車に乗車していた3人が死亡し、当該トラックの運転者を含む7人が重軽傷を負った。当時霧のため当該道路の最高速度は時速50キロメートルに制限されていたが、当該トラックは追突直前には時速80キロメートルで走行していた。

く事故関連情報>
○ 当該運転者は、事故日前日運行先に積雪があり、帰庫時間が5時間程度遅くなって業務を早朝5時に終了した。その後、事故当日の正午に乗務前点呼を受け出庫した。
○ 当該運転者は、事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間及び休息期間について複数回の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」違反があった。
○ 当該運転者に対する乗務前点呼はアルコール検知器を使用し対面で行われていた。また、この営業所においては、営業所長が運行管理者として選任されていたが補助者の選任がされておらず、運行管理者が不在のときは点呼が実施されていなかった。
○ 当該営業所では、年度ごとの教育計画に基づき、所長自ら月1回ミーティングを実施していたが、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや、疲労などの生理的要因による交通事故の危険性などについて理解させる指導・教育が不足していた。
○ 当該運転者は、採用後2年が経過していたが、初任運転者に対する適性診断を受診していなかった。
○ 当該事業者は、年2回の定期健康診断の実施計画に基づき実施しており、当該運転者は、これらの定期健康診断を受診していた。
○ 当該トラックは、法令で定められた日常点検及び定期点検を実施していた。また、速度抑制装置(スピードリミッター)が取り付けられていた。

<事故の再発防止対策>
ア  運行管理者は、運転者に対して、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや過労が運転に及ぼす危険性を認識させ、疲労や眠気を感じた場合は直ちに運転を中止し、休憩するよう指導を徹底する。
イ  運行管理者は、関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準に違反しないよう、日頃から運転者の運行状況を確実に把握し、適切な乗務割を作成する。また、運転者に対しては、点呼の際適切な運行指示を行う。
ウ  事業者は、点呼の際に点呼実施者が不在にならないよう、適正な数の運行管理者又は補助者を配置するなど、運行管理を適切に実施するための体制を整備する。
エ  運行管理者は、法に定められた適性診断を、運転者に確実に受診させるとともに、その結果を活用し、個々の運転者の特性に応じた指導を行う。
オ  事業者は、運転者に対して、疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを正しく理解させ、定期的な健康診断結果に基づき、自ら生活習慣の改善を図るなど、適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させる。
カ  事業者は、自社の事業用自動車に衝突被害軽減ブレーキ装置の導入を促進する。その際、運転者に対し、当該装置の性能限界を正しく理解させ、装置に頼り過ぎた運転とならないように指導を行う。
キ  運行管理者は、点呼を実施する際、運転者の体調や疲労の蓄積などをきちんと確認し、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、当該運転者を交替させる措置をとる。
ク  法令で定められた日常点検及び定期点検整備を確実に実施する。その際、速度抑制装置の正常な作動についても、警告灯により確認する。
問題文の画像
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この過去問の解説 (3件)

01

正解は2 .ア・イ・カ・キです。

<解説>

ア 有効です

→国土交通省が作成する「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」には下記の記載があります。(以下抜粋)

「過労の兆候を敏感に捉え、危険を感じる場合には無理せず運転を一時中断するなど、疲労を回復することに努めましょう。」

眠気や危険を感じる場合には無理せず運転を一時中断することは事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられます。

イ 有効です

→「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(労働省告示第七号)第四条(以下抜粋)

「三 勤務終了後、継続八時間以上の休息期間を与えること。」

上記の通り定められております。

今回の設問の場合「事故日前日運行先に積雪があり、帰庫時間が5時間程度遅くなって業務を早朝5時に終了した。その後、事故当日の正午に乗務前点呼を受け出庫した。」と記載がありますので休息期間は7時間しかなく、違反しています。

よって「労働時間等の改善のための基準に違反しないよう、日頃から運転者の運行状況を確実に把握し、適切な乗務割を作成する。また、運転者に対しては、点呼の際適切な運行指示を行う。」ことは故の再発を防止するための対策として、直接的に有効だと考えられます。

ウ 有効ではありません

→貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成二年運輸省令第二十二号)(点呼等)第七条 (以下抜粋)

「貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。」

上記の通り定められております。

しかし、今回の設問の場合「当該運転者に対する乗務前点呼はアルコール検知器を使用し対面で行われていた。」と記載がありますので、当日は点呼は行われていたことになります。

よって故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効とは言えません。

エ 有効ではありません

→貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針(平成13年8月20日国土交通省告示第1366号)(以下抜粋)

「(9)運転者の運転適性に応じた安全運転

適性診断その他の方法により運転者の運転適性を把握し、個々の運転者に自らの運転行動の特性を自覚させる。また、運転者のストレスなどの心身の状態に配慮した適切な指導を行う」

上記の通り定められております。

しかし、今回の設問の場合、適性診断が事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効とは言えません。

オ 有効ではありません

→貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針(平成13年8月20日国土交通省告示第1366号)(以下抜粋)

「(11)健康管理の重要性

疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを事例を説明すること等により理解させるとともに、定期的な健康診断の結果、心理的な負担の程度を把握するための検査の結果等に基づいて生活習慣の改善を図るなど適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させる」

上記の通り定められております。

しかし、今回の設問の場合、疾病が交通事故の要因ではありませんので「適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させること」が事故の再発を防止するための対策として最も直接的に有効とは言えません。

カ 有効です 

→速度抑制装置(スピードリミッター)はスピードの出し過ぎによる事故を防止するために時速90km/h以上の速度がでないようにする装置です。

しかし、今回の設問の場合はスピードの出し過ぎによる事故ではありません。

衝突被害軽減ブレーキ装置は自動車が障害物を確認し、衝突する恐れのある場合にはブレーキを補助してくれ、衝突の被害を軽減する装置です。今回の設問の場合、衝突被害軽減ブレーキ装置の導入を促進することは故の再発を防止するための対策として、直接的に有効だと考えられます。

キ 有効です

貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成二年運輸省令第二十二号)(過労運転の防止)第三条(以下抜粋)

 一般貨物自動車運送事業者等は、運転者が長距離運転又は夜間の運転に従事する場合であって、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ、当該運転者と交替するための運転者を配置しておかなければならない。」

上記の通り定められております。

今回の設問の場合、「継続八時間以上の休息期間」に違反しているため、運転者は疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあると考えられます。

よって故の再発を防止するための対策として、直接的に有効だと考えられます。

ク 有効ではありません 

道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)(日常点検整備)第四十七条の二(以下抜粋)

「自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。

 次条第一項第一号及び第二号に掲げる自動車の使用者又はこれらの自動車を運行する者は、前項の規定にかかわらず、一日一回、その運行の開始前において、同項の規定による点検をしなければならない。」

上記の通り定められております。

しかし、今回の設問の場合、日常点検は行われておりますし、事故の要因は点検を怠ったことが理由とは考えられません。よって事故の再発を防止するための対策として最も直接的に有効とは言えません。

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02

②が解答となります。

こういった事故に対する対策についての問題も出される傾向が高いです。

実際の乗務に直結する事柄ですので、的確に解答できると得点源となります。

解き方としては、事故関連情報と事故の状況をもとに、選択肢と照らし合わせ最適なものを見つけていきます。

ア  運行管理者は、運転者に対して、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや過労が運転に及ぼす危険性を認識させ、疲労や眠気を感じた場合は直ちに運転を中止し、休憩するよう指導を徹底する。

→適当です。

 事故の概要より運転手は眠気を感じていることが記載されています。

 また道路状況は夜間で霧が出ている高速道路と良い条件とは言えません。

 こういった中で眠気や疲労を感じた際は早急に休憩をとることが望まれます。

イ  運行管理者は、関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準に違反しないよう、日頃から運転者の運行状況を確実に把握し、適切な乗務割を作成する。また、運転者に対しては、点呼の際適切な運行指示を行う。

→適当です。

 

<事故関連情報より>

 ・当該運転手は前日の業務終了が大幅に遅れており、早朝5時に勤務終了

  のち正午には出庫をしています。ここから最低でも7時間後の勤務開始

  となり「事業用自動車の運転者の勤務時間および乗務時間にかかわる基準」

  に定められる休息時間(1日継続8時間以上)が取得できていないこと

  となります。

 悪天候により予定している運行に変更が出た場合は次の乗務の調整も

 必要な業務となります。

 また点呼時に休憩の取得や当人の体調など適切な管理が必要です。

ウ  事業者は、点呼の際に点呼実施者が不在にならないよう、適正な数の運行管理者又は補助者を配置するなど、運行管理を適切に実施するための体制を整備する。

→不適です。

 点呼者の配置については、記載の通り必要なことですが

 今回の事故では当該運転手は点呼を受けているため、点呼者が不在になって

 いることは直接の原因にはなりません。

 

エ  運行管理者は、法に定められた適性診断を、運転者に確実に受診させるとともに、その結果を活用し、個々の運転者の特性に応じた指導を行う。

→不適です。

 当該運転者は初認診断を受けておりませんが、こちらも事故原因には

 直結しません。 

  

オ  事業者は、運転者に対して、疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを正しく理解させ、定期的な健康診断結果に基づき、自ら生活習慣の改善を図るなど、適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させる。

→不適です。

 事故関連情報により当該運転者も必要な定期健康診断を受診しております。

 健康診断も実施計画に基づき行われているので、今回の解答では

 直接的な解決にはなりません。

 

カ  事業者は、自社の事業用自動車に衝突被害軽減ブレーキ装置の導入を促進する。その際、運転者に対し、当該装置の性能限界を正しく理解させ、装置に頼り過ぎた運転とならないように指導を行う。

→適切です。

 速度抑制装置は付けられていますが、加えて衝突被害軽減ブレーキの導入は

 同様の事故を発生させないための対策として適当と見えます。

 装置の導入と併せて運転者への指導も必要な対応です。

 

キ  運行管理者は、点呼を実施する際、運転者の体調や疲労の蓄積などをきちんと確認し、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、当該運転者を交替させる措置をとる。

→適切です。

 当該運転者においては、前日の運行に大幅な遅れが出ており疲労が蓄積されて

 いることも予想ができます。点呼は実施されていたので、加えて体調確認や

 疲労を感じた際の対応までしていくことが事故抑制の適切な方法の一つ

 となります。

 

ク  法令で定められた日常点検及び定期点検整備を確実に実施する。その際、速度抑制装置の正常な作動についても、警告灯により確認する。

→不適です。

 日常点検及び定期点検整備は必要ですが、当該トラックには適切に行われて

 いるため直接的な解決方法とはなりません。 

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03

事故の再発防止対策について、1つずつ文章を理解しながら読むことが大切です。

選択肢1. ア・イ・エ・オ

誤りです。

エ=本事故は初任診断を受診していなかったことが原因で生じた事故ではありません。

オ=健康診断を年に2回受診していて、運転者の疾病が原因で生じた事故ではありません。

選択肢2. ア・イ・カ・キ

正しいです。

ア・イ・カ・キが最も有効な内容になっています。

選択肢3. ア・ウ・キ・ク

誤りです。

ウ=事故当日は、アルコール検知器を使用し、対面による乗務前点呼が行われていましたので、直接的に有効ではありません。

ク=トラックは、日常点検や定期点検を実施しており、速度の抑制装置の誤作動などが原因で生じた事故ではありません。

選択肢4. ア・ウ・カ・ク

誤りです。

ウ=事故当日は、アルコール検知器を使用し、対面による乗務前点呼が行われていましたので、直接的に有効ではありません。

ク=トラックは、日常点検や定期点検を実施しており、速度の抑制装置の誤作動などが原因で生じた事故ではありません。

選択肢5. イ・エ・オ・カ

誤りです。

エ=本事故は初任診断を受診していなかったことが原因で生じた事故ではありません。

オ=健康診断を年に2回受診していて、運転者の疾病が原因で生じた事故ではありません。

選択肢6. イ・エ・オ・キ

誤りです。

エ=本事故は初任診断を受診していなかったことが原因で生じた事故ではありません。

オ=健康診断を年に2回受診していて、運転者の疾病が原因で生じた事故ではありません。

選択肢7. ウ・エ・キ・ク

誤りです。

ウ=事故当日は、アルコール検知器を使用し、対面による乗務前点呼が行われていましたので、直接的に有効ではありません。

エ=本事故は初任診断を受診していなかったことが原因で生じた事故ではありません。

ク=トラックは、日常点検や定期点検を実施しており、速度の抑制装置の誤作動などが原因で生じた事故ではありません。

選択肢8. ウ・オ・カ・ク

誤りです。

ウ=事故当日は、アルコール検知器を使用し、対面による乗務前点呼が行われていましたので、直接的に有効ではありません。

オ=健康診断を年に2回受診していて、運転者の疾病が原因で生じた事故ではありません。

ク=トラックは、日常点検や定期点検を実施しており、速度の抑制装置の誤作動などが原因で生じた事故ではありません。

まとめ

事故の状況や情報から、最適なものを消去法で探していくのが有効です。

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