精神保健福祉士の過去問
第17回(平成26年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問31

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第17回(平成26年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事 例〕
Cさん(37歳、男性)は、精神的不調で苦しむことがありながらも、何とか大学を卒業し、旅行代理店に就職した。しかし顧客とのトラブルをきっかけに半年ほどで退職、その後精神科病院を受診し統合失調症と診断され、半年間の入院となった。退院後は、アルバイトとして働いたが長続きせず、病状悪化により入院、これまでに3回、同じパターンを繰り返してきた。1年半前に退院してからは症状も安定し、一人暮らしには慣れてきたが、人との交流は少なく、活動範囲は限定されていた。また過去の失敗経験から、仕事に対する自信がなく、今後の生活についての具体的な目標も持てずにいた。そこでCさんは、通院した際、担当であったD精神保健福祉士に現状を報告し、「先が見えません。私だけ特別でしょうか。他の人はどうやって生活しているのでしょうか」と今後についての助言を求めた。

その後、Cさんは生活に対して前向きに考えられるようになっていった。ある日、通院先の待合室で、入院時に同室であったEさんから声をかけられた。Eさんは現在、ピアサポーターとして活動しており、Cさんにその内容や役割について話した上で、「今度、ピアサポーター養成講座を受講してみない?Cさんは聞き上手だからきっとうまくいくと思うよ」と勧めた。後日Cさんは、「自分にできるだろうか」と悩んだ末に受講を決めた。その後経験を積んだCさんは、当事者の集まりや地域活動支援センター等で、相談に乗ったりアドバイスをしたりする活動を行っている。
Cさんは、久しぶりに会ったD精神保健福祉士に、「他の人の相談に乗ることで自信がついてきましたし、生活に張りを感じます。何よりも私自身が成長していると思います」と語った。

次のうち、Cさんの発言に関する内容として、適切なものを1つ選びなさい。
  • カウンセリング
  • 体験的知識
  • アイデンティティ
  • パートナーシップ
  • ヘルパーセラピー原則

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です。

「他の人の相談に乗ることで自信がついてきましたし、生活に張りを感じます。何よりも私自身が成長していると思います」という発言に対する適切な内容を選ぶ問題です。

1.Cさんはピアサポーターとして、他の人の相談に乗ってはいますが、精神医学の立場で助言や指導をしているわけではないため、カウンセリングという言葉は適切ではありません。

2.体験的知識とは、体験や経験から導き出された知識や技術です。Cさんの発言の内容は、体験や経験によるものというよりも、体験や経験を通じて内面に変化が起こったものといえるため、体験的知識という言葉は適切ではありません。

3.アイデンティティとは、自己同一性のことで、「自分とは何者であるか」という自己定義です。Cさんの発言から自信や成長をうかがい知ることはできますが、自分とは何かについて、自己覚知を得たというわけではないため、解答として適切ではありません。

4.パートナーシップとは、友好な協力関係にあることをいいます。Cさんの発言からは、Cさん以外との関係について読み取ることはできないため、解答として適切ではありません。

5.ヘルパーセラピー原則とは、他者を援助することにより、自己効力感等を得て、自分自身にも効果が生まれるいうものです。Cさんの発言内容がまさにヘルパーセラピー原則を表しているといえます。

参考になった数33

02

Cさんの発言は、退院後の「将来が見えない」という不安感から、ピアサポートで当事者活動をすることによって、「生活に張りがあり、自分自身が成長している」という変化についてのものです。
✕1 .Cさんは、ピアサポーターとしての援助として「カウンセリング」をしていると思いますが、特にカウンセリングについて述べていることが主体ではないので、答えは別にあるようです。
✕2 . Cさんの持っている自分自身の闘病についての当事者としての「体験的知識」は、ピアサポートに役立つ強み(ストレングス)ですが、それについて語っていることが中心ではありません。
✕3 .将来が見えないと語る時点では、Cさんの自我同一性「アイデンティティ」がゆらいでいたのでしょうけれど、ラストの発言で、アイデンティティについて強く経験できたなどの発言はないです。
✕4 . 「パートナーシップ」当事者同士のパートナーシップやD精神保健福祉士とのパートナーシップについて述べているわけではありません。
〇5 . ヘルパーセラピー原則:社会心理学者のリースマンが述べた「援助をする人が最も援助を受ける」というものです。

参考になった数7

03

5 . 「ヘルパーセラピー原則」が適切です。

 ピアサポーター講座を受講し、当事者の集まりや地域活動支援センター等で相談に乗ったりアドバイスをしているCさんが精神保健福祉士に話した”Cさん自身の内面の成長”という内容について、適切な用語を選ぶ問題です。

1 . は適切ではありません。
Cさんは、自身の内面の変化について話しており、「カウンセリング」のことについては話していません。

2 . は適切ではありません。
「体験的知識」とは、セルフヘルプグループで蓄積され体系化された知識であり、グループに力を与えるものです。本題はセルフヘルプグループについての問題ではないので、回答として適切ではありません。

3 . は適していません。
「アイデンティティ」とは、状況や時期によって変化しない自己認識”自己同一性”のことをさします。したがって、Cさんの内面の成長を表す本題の回答には適していません。

4 . は適切ではありません。
「パートナーシップ」は、ワーカー・クライエント関係で、対等な立場であるパートナーとして互いが存在していることをさします。ここでは、精神保健福祉士との関係が述べられていないので、適切な回答ではありません。

5 .は適切です。
「ヘルパーセラピー原則」とは、リースマンが提唱した概念で「援助をする人が最も援助を受ける」とうもの。ここでCさんが話す、ピアサポーターとしての活動が自身の成長に繋がっていると言う話の内容に、適しています。

参考になった数5