精神保健福祉士の過去問
第19回(平成28年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問31

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問題

第19回(平成28年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問いに答えなさい。

〔事 例〕
ある日、精神保健福祉センターに勤務するE精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)(以下「E相談員」という。)のもとに、Fさん(35歳、女性)が相談に訪れた。来所目的を尋ねると、「夫のことで困っているんです。誰にも話せないと思っていましたが、裁判でお世話になった弁護士にこちらを紹介され、勇気を出して相談に来ました」と小さな声で話した。夫のGさん(35歳)は、薬物所持で起訴されて執行猶予の判決を受け、現在は仕事を辞めて自宅にいるという。E相談員は、「夫は相談に一緒に来ようともしないし、どうしてよいか分からない」と涙を流すFさんの話を聞いた。

Fさんは、「これからどうなるか分からないけれど、夫のために、妻としてできることは頑張りたい」と話し、「二度と薬物に手を出さないよう、監視するのが妻の責任だと思います」と厳しい表情を見せた。このようなFさんに対して、E相談員は相談を継続することと、精神保健福祉センターで開催している心理教育を中心とした家族教室への参加を提案した。

それから約3か月が経過したある日、Fさんは夫のGさんを伴って相談に訪れた。E相談員がGさんに来所の理由を尋ねると、「妻が非常に心配しているので、安心させるために仕方なく来ただけです。精神科病院では薬物依存症と診断されましたが、自分は病気だと思っていません。もう二度とクスリは使用しない自信もあるので、相談の必要は感じていないです」とぶっきらぼうに答えた。Fさんが家族教室に参加したり、E相談員との相談を繰り返す中でGさんも徐々に心を開き、「早く以前のように働いて妻を安心させたいけれど、今仕事を始めるとストレスがたまって、またクスリに逃げてしまう気がする。最近、気が付いたらクスリのことを考えているときがあり、正直このままやめ続ける自信がない」と複雑な思いを口にするようになった。

次の記述のうち、E相談員がFさんに家族教室への参加を提案した意図について、適切なものを1つ選びなさい。
  • Gさんを監視するための具体的な方法を学んでもらう。
  • Fさんが共依存という疾患にかかっていることを気付いてもらう。
  • 妻としての責任をより強く自覚してもらう。
  • イネイブラーとしてGさんを支える方法を学んでもらう。
  • Gさんの主体性を大切にした関わり方について考えてもらう。

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この過去問の解説 (3件)

01

×1 . 薬物依存に関して監視したりして、相手をコントロールしたりすることによる問題解決はむずかしいです。家族による回復を信じた温かい関心によるコミュニケーションが大切です。監視の方法を学ぶことは家族教室の内容にはありません。

×2 . 依存症においては、家族がそれに振り回されることで本人と間の取れない関係に陥ることがあり、それを共依存と呼びます。しかし、共依存は疾患ではなく、関係性を表す用語です。

×3 . 現在、Gさんの問題に奔走しているFさんに妻としての責任の自覚をうながすのは、不適切です。むしろ、Fさんにとってストレスとなり、自分自身や相談員への不信感を高めることになります。

×4 . 依存症において、イネイブラーとは、本人の問題をコントロールして、関連問題を本人の代わりに解決しようとし、結果的に本人の自主性を高めるのではなく無力感を強めるという皮肉な役割を表しています。よって不適切です。(なお、ソーシャルワーカーの役割理論では違う意味となっているので、気を付けてください。)

〇5 . 薬物をやめていくために、Gさん自身の主体性を大切にした関わり方について考えてもらうことが必要です。

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02

正解は5です。

事例からは、Fさんは「夫のために妻としてできることは頑張りたい」という意思を示しているものの、Gさんの主体性を大切にした関わり方を感じ取れるような発言は読み取れません。そのため、Gさんの主体性を大切にした関わり方について考えてもらうために家族教室への参加を提案することが適切な行動といえます。

参考になった数11

03

1、監視の方法を学んでもらうことで、より夫を監視することが予想され、Fさんが夫の行動をすべてコントロールしてしまうことが想定できます。
 強くコントロールすることではなく、Gさんの主体性を大切にした生活を考えることが、解決につながります。

2、共依存は、Fさん自身がGさんと依存的になる状態を指します。
 この文面から共依存状態にあるとは読み取ることはできません。

3、Fさんに妻としての責任を自覚させることは、かえってFさんをさらに追い込むことにつながります。解決をしたいのはGさんであり、Fさんの責任感ではありません。

4、イネイブラーは、夫のしたことをFさんが後処理することで、Gさんがかえって薬物問題を続けてしまうことを指します。
解決とは離れてしまうことになります。

5、Gさんが主体的に行動できるように、Fさんにも考えてもうことで、解決につながります。

以上から、正解は5です。

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