問題
「53歳の男性。転倒受傷し頸髄損傷と診断された。上肢は両肘屈曲のみ可能で下肢は完全麻痺。温痛覚、触圧覚は上肢では両肩周囲のみ残存していたが、それ以下の体幹、下肢では脱失。」
患者はリハビリテーションを行ったが、麻痺の改善はなく、損傷レベル以下の完全麻痺が残存した。本患者の実用的移動手段で適切なのはどれか。
頚髄損傷の残存機能(C4頚髄損傷=C4頚髄機能残存)としては、
C4の残存機能は、頭部の屈伸と、肩甲骨の挙上
C5の残存機能は、肘の屈曲と、肩関節の外転
C6の残存機能は、手関節の背屈
C7の残存機能は、肘関節伸展と、手指の伸展
C8の残存機能は、手指の屈曲
Th1の残存機能は、小指の外転と、巧緻運動
となります。
更に、脊髄損傷におけるADLとしては、
C3損傷では、呼吸器を使用し全介助となります。
C4損傷では、食事は装具にて可能ですが、全介助となります。
C5損傷では、食事や整容は装具にて可能で、電動車いすによる駆動が可能となります。
C6損傷では、ベッドと車いすの移乗や、車いす駆動、自動車運転、更衣が可能となります。
C7損傷では、車いす駆動や移乗、入浴が可能で、日常生活は自立できます。
T12損傷では、長下肢装具にて歩行が可能となります。
L3,L4損傷では、短下肢装具にて歩行可能となります。
間違いです。
車椅子駆動は、C6損傷からとなります。
間違いです。
短下肢装具が使用可能となるのは、L3,L4腰髄損傷からとなります。
間違いです。
長下肢装具が使用可能となるのは、T12胸髄損傷からとなります。
正解です。
電動車いすが駆動可能となるのは、C5頚髄損傷からです。
以上の事から、問題文の症例では、C5頚髄損傷(C5頚髄機能残存)と考えられます。
正解は 電動車椅子操作。です。
ADL可能レベルの境はC6です。
C6以上の運動機能残存(C7以下の障害)はADLが可能となり、車椅子の駆動が可能となります。他にも自助具による食事など行うことができます。
言い換えればC6以上の損傷はADLが不可能なレベルのため、電動車椅子での生活となるか、上位頸髄の損傷(C4以下の損傷でC3以上の残存)であれば基本的にベット上での生活となります。
*短下肢装具と杖での歩行はL3以上の残存(L4の損傷)で見られます
*両長下肢装具と松葉杖使用での歩行はTh11以上の残存(Th12損傷)で見られます。
問題の症例からC5以上の運動機能残存があることがわかります。
そこから、電動車椅子での生活は可能ということが読み解けます。