問題
「36歳の男性。主訴は腰下肢痛。近医で腰椎椎間板ヘルニアによるL5神経根障害と診断された。」
神経根障害ではデルマトーム領域に沿った感覚障害、ミオトーム領域に沿った筋力低下がみられます。L5神経根障害では、主に前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋などの筋力低下がみられます。
委中は足の太陽膀胱経の経穴であり、膝窩横紋の中点にあります。この経穴に関連した解剖学的構造では、脛骨神経や足底筋などがあげられます。
承筋は足の太陽膀胱経の経穴であり、腓腹筋の両筋腹の間、膝窩横紋の下方5寸にあります。この経穴に関連した筋肉は腓腹筋です。
伏兎は足の陽明胃経の経穴であり、大腿前外側、膝蓋骨底外端と上前腸骨棘を結ぶ線上、膝蓋骨底の上方6寸にあります。この経穴に関連した筋肉は大腿直筋です。
豊隆は足の陽明胃経の経穴であり、下腿前面、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸にあります。この経穴に関連した筋肉は前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋です。この症例では、前脛骨筋や長母趾伸筋、長趾伸筋の筋力低下がみられているため、これが正解であると考えられます。
このような症例問題と治療部位としての経穴を解くためには、疾患ごとに障害されている部位の特定、経穴の位置、関連している筋肉を理解する必要があります。解剖学、各論、経穴をしっかりおさえておきましょう。
本症例の主訴は腰痛ですが、
問題で聞いているのは、
筋力低下がみられる筋ということなので、
L5神経根障害によって筋力低下を起こす筋肉にある経穴を選びます。
L5神経根は、前脛骨筋を支配しているので、筋力低下は前脛骨筋に起こります。
よって、前脛骨筋上にある豊隆を選びます。
因みに、
S1神経根は下腿三頭筋、
L3、L4は大腿四頭筋と覚えると良いでしょう。
厳密には、腰椎の神経支配は筋節として、
L4は大腿四頭筋、前脛骨筋、中殿筋
L5は前脛骨筋、長母指伸筋、長母指屈筋、長・短腓骨筋、中殿筋
S1は長母指伸筋、長母指屈筋、長・短腓骨筋、腓腹筋、中殿筋というように、
椎骨レベルに対して帯状に分布しています。
一方、感覚の皮膚分節としては、
L4が下腿部内側
L5が下腿外側と足背
S1が下腿背側と足底
となります。
デルマトームにおける支配筋と、感覚領域は、図を描いて、イメージで覚えることが大切です。
症例の男性は、腰下肢痛を主訴とし、
腰椎椎間板ヘルニアによるL5神経根障害と
診断されています。
L5神経根障害では、
後脛骨筋の筋力低下が生じることが考えられます。
委中は、足の太陽膀胱経の経穴で、
膝窩横紋の中央にとります。
深部に脛骨神経が走行しています。
承筋は、足の太陽膀胱経の経穴で、
委中の下方5寸にとります。
腓腹筋に関連しています。
伏兎は、足の陽明胃経の経穴で、
膝蓋骨外上角から上方6寸にとります。
大腿直筋や中間広筋と関連しています。
豊隆は、足の陽明胃経の経穴で、
外果の上方8寸、条口の外方の陥凹部にとります。
後脛骨筋に関連していますので、
これが正解であると考えられます。
選択肢に挙げられた経穴の位置を
再度確認しておきましょう。