問題
罹患神経が通過するのはどれか。
右耳介前方からオトガイ(下顎)にかけての水泡が認められたこと、医師からの診断でウイルスが原因であることから帯状疱疹が考えられます。鼻唇溝に左右差がないことから顔面神経麻痺は生じておらず、オトガイに痛みがみられることから三叉神経の第3枝(下顎神経)の領域が障害されていることが考えられます。
上眼窩裂を通過する神経は、動眼・滑車・外転・眼神経があげられます。特に外眼筋の運動や眼の知覚に関与する神経が通過します。
蝶形骨にある卵円孔を通過する神経は下顎神経です。また、この症例は帯状疱疹が原因で生じている下顎神経領域の三叉神経痛であるため、これが正解であると考えられます。
頸静脈孔を通過する神経は、舌咽・迷走・副神経です。
茎乳突孔を通過する神経は、顔面神経です。
その他、神経が通過する解剖学的構造には、眼窩上孔(眼神経の枝)、眼窩下穴(上顎神経の枝)、オトガイ孔(下顎神経の枝)、蝶形骨にある正円孔(上顎神経)、卵円孔(下顎神経)、舌下神経管(舌下神経)、視神経管(視神経)などがあります。
「75歳の男性。1週間前に右顔面部に痛みが出現し、5日前から右耳介前方からオトガイ部にかけて水疱が出現した。鼻唇溝に左右差はない。医師からはウイルスが原因の疼痛と言われた。」
本症例は、高齢による、三叉神経第3枝「下顎神経」の帯状疱疹と考えられます。
三叉神経は、側頭骨の三叉神経圧痕部にて、三叉神経節を形成した後、3本に分かれます。
この内、三叉神経第3枝の下顎神経は、
蝶形骨の「卵円孔」を通り、下顎部全体に分布します。
この第3枝は、三叉神経の3本の内、
最も太い枝で、知覚線維と運動線維を含む混合神経となります。
因みに、
三叉神経第1枝の眼神経は、蝶形骨と前頭骨にで形成される「上眼窩裂」から出て、
前頭部、眼窩、鼻、前頭洞などに分布する
知覚線維のみの神経線維となります。
三叉神経第2枝の上顎神経は、蝶形骨の「正円孔」を通り、
上顎全体に分布し、知覚線維のみの神経線維となります。
三叉神経の中で、混合神経は、下顎神経のみで、
後は、知覚のみと覚えましょう。
症例の高齢男性は、
ウイルスを原因とする右顔面痛があり、
右耳介前方からオトガイ部にかけて
水疱が出現しています。
鼻唇溝に左右差はないことから、
麻痺は生じていないと考えられます。
水疱の出現部位は、
三叉神経(下顎神経)の支配領域です。
上眼窩裂を通過する神経は、
動眼神経・滑車神経・外転神経、眼神経です。
卵円孔を通過する神経は、
三叉神経第3枝(下顎神経)ですので、
これが正解であると考えられます。
頸静脈孔を通過する神経は、
舌咽神経、迷走神経、副神経です。
茎乳突孔を通過する神経は、
顔面神経です。
心臓にある卵円孔は、
胎生期に開存していますが、
生後数日で閉鎖します。