行政書士の過去問
平成25年度
法令等 問27

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問題

行政書士試験 平成25年度 法令等 問27 (訂正依頼・報告はこちら)

錯誤による意思表示に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア  法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。
イ  法律行為の相手方の誤認 ( 人違い ) の錯誤については、売買においては法律行為の要素の錯誤となるが、賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。
ウ  動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。
エ  表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできないが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。
オ  表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。この場合には、相手方が、表意者に重大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。
※ 令和2年4月1日の民法改正により、意思表示について要素の錯誤があった場合「無効」から「取消し」に変更されました。
本設問は平成25年度に出題されたものです。
  • ア・イ
  • ア・ウ
  • イ・エ
  • ウ・オ
  • エ・オ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア:妥当でない。 「法律行為の要素の錯誤」とは、意思表示の重要な部分であり、もしその点について錯誤がなければ、その意思表示をしなかったであろうことが一般取引上の通念に照らして至当であると認められるような場合をいいます。


イ:妥当でない。 法律行為の相手方誤認の錯誤については、相手方が誰であるかが重要な取引については要素の錯誤となり得ます。賃貸借や委任については、相手方が誰であるかが重要な取引であるので、要素の錯誤となり得ます。


ウ:妥当でない。 動機の錯誤については、動機を明示的に表示した場合に限らず、黙示に表示して意思表示の内容とした場合であっても、法律行為の要素の錯誤とされることがあります。


エ:妥当である。 錯誤無効は、原則的には表意者のみが主張できるものとされていますが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要があり、かつ表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、例外的に第三者が錯誤無効を主張することができます。


オ:妥当である。 法律行為の要素に錯誤があった場合であっても、その錯誤について表意者に重大な過失があれば、表意者は錯誤による無効を主張することができない(民法第95条ただし書)と定められていますが、「重大な過失」の主張・立証責任は相手方が負うとされています。なお、表意者は、軽過失であっても無効主張はできますが、その過失により相手方が被った損害については、契約締結上の過失責任等を負う余地はあります。

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02

ア.誤り
要素の錯誤には「因果関係」と「重要性」が要求されます。
因果関係とはその錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったであろうということであり、重要性とは一般取引の通念に照らし重要な部分の錯誤であることを指します。
よって「一般取引の通念にかかわりなく」という部分が誤りとなります。

イ.誤り
委任においては契約の相手が誰なのかは重要な意味をもつので、要素の錯誤となります。一方売買において人違いは要素の錯誤とはなりません。

ウ.誤り
動機が黙示的に表示されるにとどまるときも要素の錯誤となりえます。(最判平成1年9月14日)

エ.正しい
錯誤無効の制度趣旨は表意者の保護にあるので、表意者が無効主張をしない場合、相手方または第三者が無効を主張することはできません。
しかし、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者が表意者の錯誤無効を主張することは認められます。(最判昭和45年3月26日)

オ.正しい
表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は自ら意思表示の無効を主張することができません。(民法第95条)
この場合、重大な過失の主張・立証責任は相手方にあります。(大判大正7年12月3日)

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03

ア 誤り

法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念によって法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められることが必要です。

イ 誤り

大審院は明治40年2月25日に法律行為の相手方の誤認は賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤なると判断しています。

ウ 誤り

 最高裁判所は平成元年9月14日に『錯誤に係る動機は、(略)黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきである。』と判断しています。

エ 正しい

最高裁判所は 昭和45年3月26日に『第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者がその意思表示の要素に関し錯誤のあることを認めているときは、表意者みずからは該意思表示の無効を主張する意思がなくても、右第三者は、右意思表示の無効を主張して、その結果生ずる表意者の債権を代位行使することが許される。』と判断しています。

オ 正しい

民法第95条において『意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』と定められています。この重大な過失について、大審院は大正7年12月3日に錯誤の意思表示をした者の相手方が立証するべきであると判断しています。

よって、エ・オが正しいとする5が解答になります。

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