行政書士の過去問
平成28年度
法令等 問32

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問題

行政書士試験 平成28年度 法令等 問32 (訂正依頼・報告はこちら)

債権者代位権または詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。
  • 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。
  • 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。
  • 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。
  • 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。
  • 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

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この過去問の解説 (3件)

01

1:誤りです
所有権移転登記請求権は、民法423条に定める保存行為に該当し、裁判上の代位によらず代位行使できるとされています(大判明43.7.6)。

<民法423条>
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

<大判明43.7.6>
不動産がC→B→Aと転売された場合、Aは、自らのBに対する登記請求権に基づいて、BのAに対する所有権移転登記請求権を代位行使することが認められる。

2:正しいです
取消権や解除権は、一身専属権には該当しませんし、判例でも認められています。

<民法423条>
1 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

<大判大8.2.8>
債務者が負債の整理のために委任契約を締結し、受任者に不動産の所有権を移転したときにおいて、当該委任契約の解除権を代位行使すること。

3:誤りです
民法423条1項に基づき、債権者自身の権利として行使できます。

<民法423条>
1 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

4:誤りです
最判昭36.7.19において、詐害行為取消権が認められています。

<最判昭36.7.19>
民法四二四条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権(以下特定物債権と略称する)といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解するを相当とする。

5:誤りです
受益者・転得者の悪意については、債権者ではなく、受益者・転得者側に立証責任があります。
※裁判上のルールとして、債権者は裁判所に取消しを請求します⇒そうすると受益者・転得者は困りますので、ただし書きに該当するという主張をすることになります。

<民法424条>
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。

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02

1:誤
未登記の権利について登記申請をすることは保存行為として裁判所の許可なく行えます(民423条2項)

2:正
大審院昭8.5.30によれば、債務者に属する形成権も行使することができます。

3:誤
債権者代位権は、債務者の代理人ではなく、自らの権利のために行います。

4:誤
最高裁昭36.7.19によれば、特定物引渡請求権といえども、二重譲渡により登記に遅れた譲受人が、譲渡人に対し特定物引渡請求権から損害賠償請求権を取得するに至り、かつ債務者である譲渡人が無資力の場合には、詐害行為取消権を行使し、譲渡人から登記した譲受人の目的物の譲渡を取り消すことができるとされています。

5:誤
民423条1項ただし書によれば、転得者又は受益者が転得等の行為の時に債権者を害する事実を知らなった場合には、適用しないと規定しているので、転得者又は受益者の側で、債権者を害する事実を知らないことを証明する必要があります。

参考になった数6

03

1 誤り

民法423条2項は「債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない」としています。

2 正しい

大判大8・2・8、大判昭8・5・30は本肢のように判示しています。

3 誤り

民法423条1項「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる」とありますが、債務者の代理人としてではなく、自らの権利のために行うものとされています。

4 誤り

最判昭36・7・19は、特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解すべきである、としています。

5 誤り

有利な法律効果の発生を求める者は、その法条の要件事実について証明責任を負うと考えられているところ、受益者および転得者側の悪意は債権者にとって有利な事実といえず、受益者および転得者側に立証責任があるといえます。従って、誤り。

参考になった数0