行政書士の過去問
平成29年度
一般知識等 問43
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問題
行政書士試験 平成29年度 一般知識等 問43 (訂正依頼・報告はこちら)
次の文章の空欄(ア)〜(エ)に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。
行政救済制度としては、違法な行政行為の効力を争いその取消し等を求めるものとして行政上の不服申立手続及び抗告訴訟があり、違法な公権力の行使の結果生じた損害をてん補するものとして・・・(ア)請求がある。両者はその目的・要件・効果を異にしており、別個独立の手段として、あいまって行政救済を完全なものとしていると理解することができる。後者は、憲法17条を淵源とする制度であって歴史的意義を有し、被害者を実効的に救済する機能のみならず制裁的機能及び将来の違法行為を抑止するという機能を有している。このように公務員の不法行為について国又は公共団体が・・・責任を負うという憲法上の原則及び(ア)請求が果たすべき機能をも考えると、違法な行政処分により被った損害について(ア)請求をするに際しては、あらかじめ当該行政処分についての取消し又は(イ)確認の判決を得なければならないものではないというべきである。この理は、金銭の徴収や給付を目的とする行政処分についても同じであって、これらについてのみ、法律関係を早期に安定させる利益を優先させなければならないという理由はない。原審は、・・・固定資産税等の賦課決定のような行政処分については、過納金相当額を損害とする(ア)請求を許容すると、実質的に(ウ)の取消訴訟と同一の効果を生じさせることとなって、(ウ)等の不服申立方法・期間を制限した趣旨を潜脱することになり、(ウ)の(エ)をも否定することになる等として、(ウ)に(イ)原因がない場合は、それが適法に取り消されない限り、(ア)請求をすることは許されないとしている。しかしながら、効果を同じくするのは(ウ)が金銭の徴収を目的とする行政処分であるからにすぎず、(ウ)の(エ)と整合させるために法律上の根拠なくそのように異なった取扱いをすることは、相当でないと思われる。
(最一小判平成22年6月3日民集64巻4号1010頁・裁判官宮川光治の補足意見)
行政救済制度としては、違法な行政行為の効力を争いその取消し等を求めるものとして行政上の不服申立手続及び抗告訴訟があり、違法な公権力の行使の結果生じた損害をてん補するものとして・・・(ア)請求がある。両者はその目的・要件・効果を異にしており、別個独立の手段として、あいまって行政救済を完全なものとしていると理解することができる。後者は、憲法17条を淵源とする制度であって歴史的意義を有し、被害者を実効的に救済する機能のみならず制裁的機能及び将来の違法行為を抑止するという機能を有している。このように公務員の不法行為について国又は公共団体が・・・責任を負うという憲法上の原則及び(ア)請求が果たすべき機能をも考えると、違法な行政処分により被った損害について(ア)請求をするに際しては、あらかじめ当該行政処分についての取消し又は(イ)確認の判決を得なければならないものではないというべきである。この理は、金銭の徴収や給付を目的とする行政処分についても同じであって、これらについてのみ、法律関係を早期に安定させる利益を優先させなければならないという理由はない。原審は、・・・固定資産税等の賦課決定のような行政処分については、過納金相当額を損害とする(ア)請求を許容すると、実質的に(ウ)の取消訴訟と同一の効果を生じさせることとなって、(ウ)等の不服申立方法・期間を制限した趣旨を潜脱することになり、(ウ)の(エ)をも否定することになる等として、(ウ)に(イ)原因がない場合は、それが適法に取り消されない限り、(ア)請求をすることは許されないとしている。しかしながら、効果を同じくするのは(ウ)が金銭の徴収を目的とする行政処分であるからにすぎず、(ウ)の(エ)と整合させるために法律上の根拠なくそのように異なった取扱いをすることは、相当でないと思われる。
(最一小判平成22年6月3日民集64巻4号1010頁・裁判官宮川光治の補足意見)
- (ア)損失補償 (イ)不当 (ウ)授益処分 (エ)執行力
- (ア)強制徴収 (イ)支払 (ウ)通知 (エ)既判力
- (ア)国家賠償 (イ)無効 (ウ)課税処分 (エ)公定力
- (ア)住民監査 (イ)撤回 (ウ)差止 (エ)不可変更力
- (ア)国家賠償 (イ)不当 (ウ)課税処分 (エ)執行力
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この過去問の解説 (3件)
01
違法な公権力の行使の結果生じた損害をてん補するものは「国家賠償」です。適法な行政活動の結果生じた損害をてん補するのは「損失補償」です。
イ:「無効」
違法な行政処分により被った損害については処分についての判決を待つ必要はありません。
ウ:「課税処分」
過納金相当額を損害とする国家賠償請求を許容することは、実質的に課税処分(過分徴収分)の取消訴訟と同一の効果となります。
エ:「公定力」
公定力とは、瑕疵ある行政行為についても、重大明白な違反を除き、権限ある機関による取消を経ない限りは一応有効なものとして扱う拘束力をいいます。
国家賠償を理由に、公定力の安定性が損なわれることを危惧しています。
したがって、③が正解となります。
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02
冷凍倉庫事件と呼ばれる裁判(最判H22.6.3)で、「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して固定資産の価格を過大に決定したときは,これによって損害を被った当該納税者は,地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,国家賠償請求を行い得る」(判例要旨)との判決に付された宮川裁判官の補足意見です。
同判例に対する金築誠志裁判官の補足意見を一部引用します。
「固定資産税の課税物件は膨大な数に上り,その調査資料を長期にわたって保存しておくことが困難な場合もあるのではないかと思われるので,課税処分から長期間が経過しても国家賠償請求ができるとした場合,立証責任の問題は,より重要かもしれない。課税処分の取消訴訟においては,原則的に,課税要件を充足する事実を課税主体側で立証する責任があると解すべきであるから,本件固定資産税についても,一般用倉庫として経年減点補正率を適用して評価課税する以上,本件倉庫が冷凍倉庫用のものではなく,一般用のものであることについて,課税主体である被上告人側に立証責任があることになる。これに対し,国家賠償訴訟においては,違法性を積極的に根拠付ける事実については請求者側に立証責任があるから,本件倉庫が一般用のものではなく,冷凍倉庫用のものであることを請求者である上告人側が立証しなければならないと解される。上告人側が同事実を立証することは,損害額を明らかにするためにも必要である。立証責任について,課税処分一般におおむねこうした分配振りになるとすれば,課税処分から長期間が経過した後に国家賠償訴訟が提起されたとしても,課税主体側が立証上困難な立場に置かれるという事態は生じないと思われる。以上のとおり,取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めたとしても,不服申立前置の意義が失われるものではなく,取消訴訟の出訴期間を定めた意義が没却されてしまうという事態にもならないものと考える。」
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03
国家賠償法は、違法な公権力の行使に関する損害賠償の責任について定めたもので、民事訴訟に分類されます。
公定力とは、行政行為が違法なものであっても取り消されるまでは原則として有効として扱う効力をいいます。
例外として、違法が重大かつ明らかな場合は無効となります。
また、国家賠償請求や、刑事裁判においては公定力が及びません。
よって課税処分に対し、国家賠償請求するにあたって、あらかじめ取消訴訟や無効確認訴訟をする必要はありませんので正解は「3」です。
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