行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問25

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問題

行政書士試験 令和2年度 法令等 問25 (訂正依頼・報告はこちら)

情報公開をめぐる最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟において、被告は、当該決定が適法であることの理由として、実施機関が当該決定に付した非公開理由とは別の理由を主張することも許される。
  • 行政機関情報公開法(※)に基づく開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟において、不開示決定時に行政機関が当該文書を保有していなかったことについての主張立証責任は、被告が負う。(注※行政機関の保有する情報の公開に関する法律)
  • 条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟において、当該公文書が書証として提出された場合には、当該決定の取消しを求める訴えの利益は消滅する。
  • 条例に基づく公文書非開示決定に取消し得べき瑕疵があった場合には、そのことにより直ちに、国家賠償請求訴訟において、当該決定は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとの評価を受ける。
  • 条例に基づき地方公共団体の長が建物の建築工事計画通知書についてした公開決定に対して、国が当該建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由としてその取消しを求める訴えは、法律上の争訟には当たらない。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 1


1.正しい
 本肢のとおりです。

 判例は、公文書の非公開事由を定めた条例に該当することを理由として付記してされた公文書の非公開決定の取消訴訟においては、被告(実施機関)が、その決定が適法であることの根拠として、非公開理由とは別の理由を主張することも許される、としています(最判平11.11.19)。


2.誤り
 判例は、開示請求の対象となっている行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定取消訴訟においては、原告が不開示決定の時点で、行政機関がその文書を保有していたことについて主張・立証する責任を負う、としています(最判平26.7.14)。

 原告側が負うのであり、被告が負うものではありません。


3.誤り
 判例は、公文書公開条例に基づいて公開請求された、公文書の非公開決定の取消訴訟で、その公文書が証拠として提出された場合においても、当該決定の訴えの利益は消滅しない、としています(最判平14.2.28)。


4.誤り
 判例は、条例に基づく公文書非開示決定に取り消し得べき瑕疵があったとしても、直ちに国家賠償法1条1項の違法評価を受けるものではない、としています(最判平18.4.20)。


5.誤り
 判例は、条例に基づき地方公共団体の長が建物の建築工事計画通知書についてした公開決定に対し、国が当該建物の所有者として有する固有の権利が侵害されることを理由として、当該公開決定の取り消しを求める取消訴訟は、法律上の争訟に該当する、としています(最判平13.7.13)。

 ※法律上の争訟とは
【①当事者の具体的な権利・義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、】かつ、【②それが法律を適用することにより終局的に解決することができるもの】のことをいいます。

参考になった数16

02

この問題では過去に出題実績のある判例を題材にした選択肢がそろっています。

一つずつ判例でおさえてくポイントを解説していきますので、ご確認お願いします。

また、合わせて国家賠償法第1条1項の理解および情報公開法第3条の理解を深めるものとなりますので、最後まで解説をぜひ読んでポイントを押さえてください。

選択肢1. 条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟において、被告は、当該決定が適法であることの理由として、実施機関が当該決定に付した非公開理由とは別の理由を主張することも許される。

この市の条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟で争点となったのはこの訴訟において、その公文書を非公開にする別の理由があると主張できるか、できないかです。

この裁判の要旨は公文書非公開の決定の根拠として、市の情報公開条例に該当すると主張できるとされています。

最後に判決理由として、通知書の理由以外をこの裁判において主張できないとする根拠はないとされています。

参照:逗子市住民監査請求記録公開請求事件(最判平11.11.19判決)

選択肢2. 行政機関情報公開法(※)に基づく開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟において、不開示決定時に行政機関が当該文書を保有していなかったことについての主張立証責任は、被告が負う。(注※行政機関の保有する情報の公開に関する法律)

この行政機関情報公開法(※)に基づく開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟において争点は開示請求の対象とされた行政文書を当該行政機関が保有しているかどうかを誰が主張立証責任があるかどうかです。

この裁判の要旨として、その行政機関の長(被告)に対する開示請求はその行政機関が保有する行政文書が対象とされ、その行政文書をその行政機関が保有していることが開示請求の対象要件とされているため、取消を求める者(原告)がその行政機関が保有していることの立証責任を負うものとされています。

最後にこの裁判の判決理由として、行政機関の長に対する開示請求はその行政機関が保有する行政文書が対象とされ(情報公開法第3条)、当該行政機関が当該行政文書を保有していることが成立要件とされています。

参照:公文書非公開決定の取消訴訟と訴えの利益(最判例26.7.14判決)

選択肢3. 条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟において、当該公文書が書証として提出された場合には、当該決定の取消しを求める訴えの利益は消滅する。

条例に基づく公文書非公開決定の取消訴訟において、その公文書(書証又は証拠)として裁判所に提出した場合に訴えの利益があるか、ないかが争点となります。

この裁判の要旨として、公開条例に基づいた公文書の非公開決定の取消訴訟において、公文書を書証又は証拠として提出された場合でも、訴えの利益はあるとされています。

最後に、判決理由として、原告(開示請求者)は条例に基づき、請求した公文書を閲覧又はコピーをすることを求める法律上の利益があるとされています。

参照:愛知県知事交際費事件(最判平14.2.28判決)

選択肢4. 条例に基づく公文書非開示決定に取消し得べき瑕疵があった場合には、そのことにより直ちに、国家賠償請求訴訟において、当該決定は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとの評価を受ける。

条例に基づく公文書非開示決定に取消し得べき瑕疵があった(情報公開条例に基づき開示請求された公文書に偽りの情報があった)場合に、その地方公共団体の担当職員がその公文書の記載内容の事実調査をせずに情報公開条例の不開示情報にあたると判断したことが直ちに国家賠償法第1条1項の適用上違法にあたるかどうかが争点になります。

この裁判の要旨として、当該地方公共団体の条例に請求された公文書の内容を正しいかどうかを調査すべき旨の記載がなく、逆に公文書を開示するかどうかは、原則として、開示請求を受理してから15日以内に決定しなければならないとされ、公文書の開示請求を多数の文書を一括してすることが予定されているなどの事情があれば、担当職員が開示請求に関わる公文書の内容の事実調査をせずに条例の非開示情報にあたると判断したことは職務上通常注意すべき注意義務を怠ったものということはできず、国家賠償法上の違法であるといえないとされています。

最後に判決理由として、要旨と同様に担当職員が公文書の事実調査をせずに、条例に基づき公文書が非公開情報と判断したことは、国家賠償法第1条1項の職務上注意すべき注意義務を怠ったものと言えないとされています。

参照:公文書の非公開決定と国家賠償法(最判平18.4.20判決)

選択肢5. 条例に基づき地方公共団体の長が建物の建築工事計画通知書についてした公開決定に対して、国が当該建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由としてその取消しを求める訴えは、法律上の争訟には当たらない。

条例に基づき地方公共団体の長が建物の建築工事計画通知書についてした公開決定に対して、国が当該建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由としてその取消しを求める訴えの争点として、国が当該建物の所有者として有する固有の利益が侵害されているとしてその取消を求めることができるかが争点です。

この訴訟では、本訴えは、法律上の訴訟にあたるといえ、法律上の訴訟に当たらないという原審の判断は法令の解釈を誤った違法であると書かれています。

また、この判例の続きとして国(上告人)の主張に個別利益として保護する趣旨がうかがえないため、処分の取消を求める原告適格を有してないから、本件訴えは結局不適法となり、却下となりました。

このポイントも試験に出る可能性があるのでおさえておきましょう。

まとめ

この情報公開に関わる判例の問題は、過去に出題実績があり、理解しないとならないポイントを1つ1つ解説しているので、解説を読んでポイントを押さえていきましょう。

参考になった数5

03

答え…1

1. 妥当.
別の理由を主張することも許されます。
参照:逗子市住民監査請求記録公開請求事件(最判平11.11.19)


2. 妥当でない
取消しを求める者が、行政機関が文書を保有していたことについて、主張立証責任を負います。
被告が、行政機関が文書を保有していなかったことについて、主張立証責任を負うのではありません。
参照:最判平26.7.14


3. 妥当でない
訴えの利益は消滅しません。
参照:愛知県知事交際費事件(最判平14.2.28)


4. 妥当でない
直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法との評価を受けるわけではありません。

取り消し得べき瑕疵があるとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と決定をしたと認めうるような事情がある場合に限り、違法となります(参照:最判平18.4.20)。


5. 妥当でない
法律上の争訟にあたります。
参照:那覇市自衛隊基地情報公開事件(最判平13.7.13)

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