行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問27
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問題
行政書士試験 令和2年度 法令等 問27 (訂正依頼・報告はこちら)
制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
- 未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。
- 保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。
- 家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
- 被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。
- 制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。
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この過去問の解説 (3件)
01
本問は誤りを選ぶ問題ですので、正しい選択肢を選ばないように注意しましょう。
正しい
選択肢のとおりです。
民法838条は、後見は次に掲げる場合に開始する、とし、同条1号で①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は②親権を行う者管理権を有しないとき、と規定します。
②の例:親権者が管理権喪失の審判を受け管理権を失った 等
正しい
選択肢のとおりです。
民法13条1項各号(1号~10号)のとおり、保佐人は、被保佐人の各号に規定する法律行為についての同意権を有します。
また、876条の4第1項のとおり、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときは、保佐人は特定の法律行為の代理権も有します。
正しい
選択肢のとおりです。
民法17条1項のとおり、家庭裁判所は被補助人の特定の法律行為につき、補助人の同意を要する旨の審判ができます。
また、876条の9第1項のとおり、家庭裁判所は、補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。
誤り
民法20条4項のとおり、一カ月以上の期間内に追認を得るべき旨の催告でき、その期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなします。
追認したものと擬制されるわけではありません。
正しい
判例は、制限行為能力者が相手方に制限行為能力者であることを黙秘し法律行為を行った場合でも、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術に当たる、とします(最判昭44.2.13)。
※黙秘のみであれば詐術にあたりません。
あくまでも、黙秘+他の言動で詐術と認められます。
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02
民法総則からの出題です。
簡単な問題なので、取りこぼさないようにしたいところです。
こういった問題を間違ってしまうと、合格が難しくなってしまいます。
〇(正しい)
その通り。
民法838条には、次のように書かれています。
-------------------------------------------------------
第838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
1 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2 (…省略…)
-------------------------------------------------------
〇(正しい)
・保佐人は、13条1項各号に列挙されている行為について、同意権があります。
(列挙されている行為以外についても、保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできます。)
(参照:民法13条)
・保佐人は、特定の法律行為について代理権を付与されることがあります。
(参照:民法第876条の4)
☆関連事項
民法13条1項は、改正がありました。
具体的には、10号が新しく付け加えられました。
-----------------------------------------------
民法第13条
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、(…略…)。
(…略…)
10 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(…略…)の法定代理人としてすること。
-----------------------------------------------
〇(正しい)
その通りです。
民法には、以下のように記されています。
【第17条第1項】
(…略…)被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。(…略…)
【第876条の9 第1項】
家庭裁判所は、(…略…)特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
×(誤り)
選択肢4のような場合は、取り消したものとみなされます。
追認ではありません。
(参照:民法20条4項)
〇(正しい)
制限行為能力者が、(行為能力者であると信じさせるために、)詐術を用いたときは、取り消すことができません。
(参照:民法第21条)
制限行為能力者であることを黙秘していただけでは、(民法20条の)詐術には当たりません。
しかし、他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、または相手方の誤信を強めたと言えるときは、(民法20条の)詐術に当たります。
(参照:最判昭44.2.13)
判例(最判昭44.2.13)をまとめると、次のようになります。
・黙秘のみ→詐術にあたらない
・「黙秘+(相手を誤信させるor誤信を強める)言動など」→詐術にあたる
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03
この問題では、制限行為能力者についての知識が正しく、身についているかがポイントです。
制限行為能力者とは、判断能力に問題がある、又は経験が乏しいことによって、行為能力(契約などの取引)を制限される人のことです。
また、制限行為能力者には未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4つのタイプがあります。
1.未成年者
未成年者は、成年に達していない者をいい、成年は18歳です。
未成年者の保護者は親権者又は未成年後見者とされ、ともに未成年者の法定代理人となります。
未成年者が行為をするとき、原則として、法定代理人の同意が必要です。
例外として、以下の3つは法定代理人の同意を得ずに未成年者が単独で行うことができます。
・単に権利を得、または義務を免れる行為
・法定代理人が処分を許した財産の処分
・営業を許された未成年者がその営業に関してする行為
2. 成年被後見人
成年被後見人とは、認知症・知的障害・精神障害などの精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者であって、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者です。
あとの被保佐人と被補助人との違いを分かりやすくするために、判断能力が常に全くなく、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人と覚えておきましょう。
成年被後見人の保護者は、成年後見人となります。
成年被後見人は原則として、自ら行為を行うことができず、成年後見人の同意があったとしても、その行為を取消することができます。
ただし、日常品の購入その他日常生活に関する行為は、成年被後見人にも行為能力が認められます。
3. 被保佐人
被保佐人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分な者であって、家庭裁判所から補佐開始の審判を受けた者です。
被補助人と成年被後見人との違いを分かりやすくするために、判断能力が著しく不十分で家庭裁判所から補佐開始の審判を受けた人と覚えておきましょう。
被保佐人の保護者は、保佐人となります。
被保佐人は民法第13条1項の各号の重要な財産行為をするには、保佐人の同意が必要であり、家庭裁判所の審判によって、保佐人の同意が必要な行為を拡大することができます。
ただし、日常品の購入その他日常生活に関する行為は被保佐人が単独で行うことができます。
また、被保佐人が保佐人の同意が必要な行為を単独で行った場合は、その行為を取り消すことができます。
4. 被補助人
被補助人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な者であって、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者です。
被保佐人と成年後見人との違いを分かりやすくするために、判断能力が不十分で家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者です。
被補助人の保護者は、補助人となります。
特定の法律行為について、家庭裁判所から補助人の同意を要する旨の審判を受けた場合は、被補助人がその行為を単独でやった場合は、取り消すことができます。
また、家庭裁判所は特定の法律行為に関して補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができるので、あわせて覚えておきましょう。
以上の点を押さえて、解説をみていきましょう。
民法838条により、以下の場合は後見が開始するとなります。
1.親権を行う者がいない又は管理権を有しないとき
2.後見開始の審判があったとき
よって、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始します。
解説の冒頭に述べたことと照らして、被保佐人が民法第13条1項各号に掲げる行為を行うことについて、保佐人は同意権を有しています。
また、民法876条の4の1項で被保佐人又は保佐人もしくは補佐監督人の請求によって、家庭裁判所は被保佐人のために特定の法律行為に関して保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるので、その場合は保佐人がその行為に関して代理権を有します。
解説の冒頭に述べたことと照らして、選択肢3の文章を読むと、家庭裁判所は被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判も被補助人の特定の法律行為につき補助人に代理権を付与する審判もすることができます。
民法第20条4項により、制限行為能力者の相手方は、被保佐人が保佐人の同意を要する行為を同意を得ずにやった場合、1ヶ月以上の期間を定めて保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。
そして、その期間内に被保佐人が追認をその追認を受けた旨の追認を通知しなかった場合は、その行為を取り消したものとみなすとされています。
よって、その期間内に回答がなかった場合は、当該行為を取り消したとみなされます。
最判昭44.2.13の裁判要旨に無能力者(制限行為能力者)であることを黙秘することが、無能力者(制限行為能力者)の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法第20条の詐術にあたるとされ、黙秘だけでは詐術にあたらないとされます。
制限行為能力者に関する問題はよく行政書士試験に出てくるので、関連条文も読みながら、過去問を解いて、理解を深めていった方が良いでしょう。
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