行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問30

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問題

行政書士試験 令和2年度 法令等 問30 (訂正依頼・報告はこちら)

A・B間において、Aが、Bに対して、Aの所有する甲建物または乙建物のうちいずれかを売買する旨の契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
  • 給付の目的を甲建物とするか乙建物とするかについての選択権は、A・B間に特約がない場合には、Bに帰属する。
  • A・B間の特約によってAが選択権者となった場合に、Aは、給付の目的物として甲建物を選択する旨の意思表示をBに対してした後であっても、Bの承諾を得ることなく、その意思表示を撤回して、乙建物を選択することができる。
  • A・B間の特約によってAが選択権者となった場合において、Aの過失によって甲建物が焼失したためにその給付が不能となったときは、給付の目的物は、乙建物になる。
  • A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cの選択権の行使は、AおよびBの両者に対する意思表示によってしなければならない。
  • A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cが選択をすることができないときは、選択権は、Bに移転する。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 3

 債務者の選択権は、民法406条以下に規定されています。

1.誤り
 民法406条のとおり、債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は債務者に属しますので、当該選択権は建物引渡し債務者であるAに帰属します。


2.誤り
 407条の2項のとおり、Aが給付の目的物に甲建物を選択する旨の意思表示をB(相手方)にした後で、その甲建物の引渡しを撤回して乙建物を渡す場合は、その相手方(B)の承諾を得ることを要します。

 ※407条2項 前項の意思表示(給付物を決めた意思表示)は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。


3.正しい
 民法410条のとおり、A(選択権を有する者)の過失により、甲建物が焼失したために給付が不可能となった場合は、債権は、その残存するものについて存在します。

 したがって、甲建物の給付が不可能となった場合は、給付の目的物は乙建物となります。


4.誤り
 民法409条のとおり、第三者が選択権者となった場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってします。

 Cに選択権がある場合は、AかBのどちらか一方への意思表示で大丈夫です。

 
5.誤り
 民法409条2項のとおり、第三者に選択権がある場合、第三者が選択することができず、又は選択する意思を有しないときは、その選択権は債務者に移転します。

 したがって、Cが選択することができない場合は、債務者であるAに選択権が移転します。

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02

答え…3

選択債権の問題です。
選択債権は、メジャーな分野とは言えないかもしれません。
しかし、第410条が改正されていたので、勉強していた方もいたでしょう。
問題自体は条文さえ知っていれば解ける簡単なものなので、勉強していた方は正解できたと思われます。
民法の改正点は、今後も出題される可能性が高いので、要チェックです。
(改正点は膨大なので、出題確率の高いところを調べて、それらを中心に学習すると良いです。)


1. 誤り
特約がない場合、選択権は債務者に帰属します。
したがって、肢1では、選択権はBではなく、Aに帰属します。

【民法406条】
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。


2. 誤り
Bの承諾は必要です。

【民法407条】
前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
2 前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。


3. 正しい
民法410条により、給付の目的物は乙建物になります。
※民法410条は、2017年に改正されています(2020年4月1日施行)。

【民法410条】
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。


4. 誤り
AかBのどちらかに意思表示をすればOKです。
A、Bの両方に意思表示をする必要はありません。
選択肢4は、条文を知らなければ間違って選んでしまう肢かもしれません。

【民法409条1項】
第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。


5. 誤り
選択権は、Bではなく、Aに移転します。

【民法第409条】
第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。
2 前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。

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03

この問題のポイントは、選択債権の条文の理解です。

選択債権の条文は以下のものがあります。

・民法第406条

債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。

・民法第407条

前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。

 前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。

・民法第408条

債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。

・民法第409条

第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。

 前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。

・民法第410条

債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。

・民法第411条

選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。

選択肢1. 給付の目的を甲建物とするか乙建物とするかについての選択権は、A・B間に特約がない場合には、Bに帰属する。

まず問題文を読むと、給付をするのがA、受けるのがBとなるので、この契約の債務者がA、債権者はBとなります。

また解説の冒頭の民法第406条より、選択権は債務者にあります。

よって、給付の目的を甲建物とするか乙建物とするかについての選択権は、A・B間に特約がない場合には、Aに帰属するとなります。

選択肢2. A・B間の特約によってAが選択権者となった場合に、Aは、給付の目的物として甲建物を選択する旨の意思表示をBに対してした後であっても、Bの承諾を得ることなく、その意思表示を撤回して、乙建物を選択することができる。

解説の冒頭の民法第407条2項より、意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができないとされています。

よって、A・B間の特約によってAが選択権者となった場合に、Aは、給付の目的物として甲建物を選択する旨の意思表示をBに対してした後であっても、Bの承諾を得れば、その意思表示を撤回して、乙建物を選択することができるとなります。

選択肢3. A・B間の特約によってAが選択権者となった場合において、Aの過失によって甲建物が焼失したためにその給付が不能となったときは、給付の目的物は、乙建物になる。

解説の冒頭の民法第410条より、債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在するとされています。

よって、A・B間の特約によってAが選択権者となった場合において、Aの過失によって甲建物が焼失したためにその給付が不能となったときは、給付の目的物は、乙建物になるとなります。

選択肢4. A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cの選択権の行使は、AおよびBの両者に対する意思表示によってしなければならない。

解説の冒頭の民法第409条より、第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってするとなります。

よって、A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cの選択権の行使は、AまたはBに対する意思表示によってしなければならないとなります。

選択肢5. A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cが選択をすることができないときは、選択権は、Bに移転する。

問題文より、給付をするのがA、受けるのがBとなるので、この契約の債務者がA、債権者はBとなります。

また、解説の冒頭の民法第409条2項より、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転するとされています。

よって、A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cが選択をすることができないときは、選択権は、Aに移転するとなります。

まとめ

この選択債権の問題のように、条文の理解を問う問題は必ず出てくるので、過去問に出てくる条文は問題を解きながらイメージを深める、民法の条文を1条から読むなどの条文学習が重要です。

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