行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問32
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
行政書士試験 令和2年度 法令等 問32 (訂正依頼・報告はこちら)
同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 双務契約が一方当事者の詐欺を理由として取り消された場合においては、詐欺を行った当事者は、当事者双方の原状回復義務の履行につき、同時履行の抗弁権を行使することができない。
- 家屋の賃貸借が終了し、賃借人が造作買取請求権を有する場合においては、賃貸人が造作代金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。
- 家屋の賃貸借が終了し、賃借人が敷金返還請求権を有する場合においては、賃貸人が敷金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。
- 請負契約においては仕事完成義務と報酬支払義務とが同時履行の関係に立つため、物の引渡しを要する場合であっても、特約がない限り、仕事を完成させた請負人は、目的物の引渡しに先立って報酬の支払を求めることができ、注文者はこれを拒むことができない。
- 売買契約の買主は、売主から履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない。
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
正解 5
1.妥当でない
判例は、双務契約が一方当事者の詐欺を理由に取り消された場合、当事者双方の原状回復義務(登記を戻す義務・代金返還義務)は同時履行の関係にある、としています(最判昭47.9.7)。
2.妥当でない
判例は、賃借人が造作買取請求権を有する場合、賃貸人が造作代金の提供がないことを理由に同時履行の抗弁権を行使して、家屋の明渡を拒むことはできない、としています(最判昭29.7.22)。
3.妥当でない
民法622条の2第1項1号のとおり、賃借人が敷金返還請求権を有する場合、賃貸人に敷金返還義務があるのは、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けた時なので、家屋の明渡しの後、敷金返還になります。
したがって、賃借人は、賃貸人からの敷金返還がないことを理由に、家屋の明渡しを拒むことができません。
※賃貸物の返還を受けた時、賃貸人は、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければなりません。
4.妥当でない
民法633条のとおり、請負報酬は、目的物の引渡しと同時に支払う義務があります。なので、仕事の完成が先で、報酬の支払いが後です。
※633条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡を要しないときは、624条1項(雇用報酬の支払時期)の規定を準用します。
5.妥当
選択肢のとおりです。
判例は、売買契約の買主は、売主からの履行の提供があっても、履行の提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権は失わない、としています(最判昭34.5.14)。
履行の提供が、持参債務であった場合、売主が物を持参して買主の家に行った際に買主が不在で、翌日に売主が物を持たずに買主の家に行った、という状態であったときは、買主は同時履行の抗弁権を行使できます。
参考になった数14
この解説の修正を提案する
02
この問題のポイントは同時履行の抗弁権です。
同時履行の抗弁権とは、双務契約において、相手方からの履行がないときに自分の債務の履行を拒むことができる権利です。
例えば、買い物をするとき、店側は商品を渡す債務があり、客側は商品に対してお金を払う債務があります。
このお互いに債務がある契約が双務契約であり、この例で、例えば、客側がお金を支払わなければ、店側が商品を渡すことを拒むのが同時履行の抗弁権です。
次に同時履行の抗弁権が認められる場合と認められない場合をあげます。
同時履行の抗弁権が認められる場合は以下の通りです。
・契約の取消や解除の場合における双方の原状回復義務
・弁済と受取証書の交付
同時履行の抗弁権が認められない場合は以下の通りです。
・賃貸借終了時における建物の明け渡しと敷金の返還
・債権の弁済と抵当権の抹消登記
・弁済と債権証書の返還
以上となります。
これらを基に解説を見ていきましょう。
解説の冒頭と選択肢1の文章を照らし合わせながら、見ていきましょう。
双務契約の取消の場合、双方の原状回復義務に同時履行の抗弁権が認められるので、双務契約が一方当事者の詐欺を理由として取り消された場合においては、詐欺を行った当事者は、当事者双方の原状回復義務の履行につき、同時履行の抗弁権を行使することができます。
最判昭29.7.22では、借家法5条により造作(例えばエアコン、ウオッシュレットなど)の買収を請求した賃借人は、その代金の不払いを理由に当該物件を留置し、又は代金の提供がないことを理由に同時履行の抗弁により当該物件の明け渡しを拒否することができないとされています。
よって、家屋の賃貸借が終了し、賃借人が造作買取請求権を有する場合においては、賃貸人が造作代金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができません。
解説の冒頭と選択肢3の文章を照らし合わせて、読んでいきましょう。
同時履行の抗弁権が認められない場合として、賃貸借終了時における建物の明け渡しと敷金の返還があります。
よって、家屋の賃貸借が終了し、賃借人が敷金返還請求権を有する場合においては、賃貸人が敷金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができないです。
民法633条より、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならないとされており、引き渡しの後に報酬の支払いとなっております。
よって、請負契約においては仕事完成義務と報酬支払義務とが同時履行の関係に立つため、物の引渡しを要する場合であっても、特約がない限り、仕事を完成させた請負人は、目的物の引渡しに先立って報酬の支払を求めることができないです。
最判昭34.5.14より、双務契約の当事者の一方は相手方の提供があっても、その提供が継続されなければ、同時履行の抗弁権は失わないとされています。
よって、売買契約の買主は、売主から履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失いません。
今回の問題で出てくる同時履行の抗弁権はよく出てくるので復習をしっかりした方が良いでしょう。
また、選択肢3の請負契約も行政書士試験に出てくるので、請負契約に関する条文もおさえておきましょう。
参考になった数2
この解説の修正を提案する
03
正解は「売買契約の買主は、売主から履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない。」です。
妥当ではありません。
判例によると、「売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。」としているためです。(最判昭47.9.7)
妥当ではありません。
判例によると「借家法第五条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。」としているためです。
妥当ではありません。
民法622条の2第1項第1号「賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき。」とあり、賃貸物の返還を先に履行しなければなりません。
妥当ではありません。
請負契約では、仕事関係義務と報酬支払義務は同時履行の関係にありません。
また、目的物の引渡しに先立って報酬の支払いを求めることはできません。
正しいです。
参考になった数2
この解説の修正を提案する
前の問題(問31)へ
令和2年度問題一覧
次の問題(問33)へ