行政書士の過去問
令和2年度
一般知識等 問56

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問題

行政書士試験 令和2年度 一般知識等 問56 (訂正依頼・報告はこちら)

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

※ 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律については、個人情報の保護に関する法律に統合されました(令和4年4月1日施行)。
<参考>
この設問は2020(令和2)年度に出題された設問となります。
  • 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであるときは、いったん開示請求を却下しなければならない。
  • 行政機関の長は、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報は、開示する必要はない。
  • 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報については、必ず当該保有個人情報の存否を明らかにしたうえで、開示または非開示を決定しなければならない。
  • 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に個人識別符号が含まれていない場合には、当該開示請求につき情報公開法(※)にもとづく開示請求をするように教示しなければならない。(注※行政機関の保有する情報の公開に関する法律)
  • 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に法令の規定上開示することができない情報が含まれている場合には、請求を却下する前に、開示請求者に対して当該請求を取り下げるように通知しなければならない。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 2


1.誤り

 行政機関個人情報保護法21条1項のとおり、開示請求のあった保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであった場合、その行政機関に当該開示請求を移送できます。


2.正しい

 行政機関個人情報保護法14条5号のとおり、行政機関の長は、開示請求があったときは、不開示情報に該当する場合を除き、保有個人情報を開示しなければなりません。
 したがって、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのある情報は、不開示情報ですので開示する必要はありません。


3.誤り

 行政機関個人情報保護法17条のとおり、保有個人情報の存否を明らかにせずに開示請求を拒否することもできます。


4.誤り

 行政機関個人情報保護法に教示義務のある条文は存在しませんので、全文が誤っています。


5.誤り

 行政機関個人情報保護法15条1項のとおり、開示請求のあった保有個人情報に不開示情報があり、その不開示情報を容易に除くことができる場合、その不開示情報を除いた部分を開示しなければなりません。

参考になった数7

02

正解2

1誤り
いったん却下しなければならないというわけではありません。
参照:行政機関個人情報保護法21条1項

2正しい
行政機関個人情報保護法14条により、正しいです。

3誤り
「必ず当該保有個人情報の存否を明らかにしたうえで」が間違いです。
必ずする必要はありません。
参照:行政機関個人情報保護法17条

4誤り
行政機関の長は、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示する必要があります。
参照:行政機関個人情報保護法14条

5誤り
通知しなくて良いです。
参照:行政機関個人情報保護法15条1項、18条2項

参考になった数4

03

この問題のポイントは、個人情報保護法第76条から第89条までの開示についての理解です。

まず第76条は開示請求権について述べられており、請求先である行政機関の長に対して、何人もその行政機関が保有する本人の個人情報の開示を請求できると書かれています。

また、第78条より行政機関の長は以下の場合は、開示しなくてよいとされています。

1. 開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報

2.開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる記述等により特定の個人を

識別できるもの、個人識別符号が含まれるもの、または特定の個人を識別することができないが

開示することにより、開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがあるもの。

ただし、以下の場合は開示できます。

・法令の規定又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報

・人の生命、健康、生活又は財産を保護する為に、開示する必要が認められる情報

・その個人が公務員等であって、当該情報がその職務の遂行に関わる情報である場合は、当該

公務員の職及びその職務遂行の内容に係る部分

3.法人その他団体(国、独立行政法人、地方公共団体などを除く)に関する情報、又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報で、以下のもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護する為に、開示する必要が認められる情報は除く。

・開示することにより、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する恐

れがあるもの

・行政機関等の要請を受けて、開示しないとの条件で任意で提出したものであって、法人その他

 団体又は個人における通例として開示しないとされているものその他の当該条件を付すること 

が当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

4. 行政機関の長が開示決定等をするにあたり、国の安全が害されるおそれ、他国又は国際機関

との信頼関係が損なわれる恐れ又は交渉で不利益を被るおそれがあると当該行政機関の長が

認めることにつき相当の理由がある情報

5. 行政機関の長又地方公共団体の機関は開示決定等をするにあたり、開示することが犯罪の予  防、鎮圧又は捜査、公訴 の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐

 れがあると当該行政機関 の長又は地方公共団体の機関が認めることにつき相当の理由がある情 

6. 国や地方公共団体等の機関の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報で

 あって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわ

 れるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若し

 くは不利益を及ぼすおそれがあるもの

7.国や地方公共団体等の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、

 以下に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障

 を及ぼすおそれがあるもの

・国や地方公共団体等の機関が開示決定等をする場合において、国の安全が害されるおそれ、他

 国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上、

利益を被るおそれ

独立行政法人等、地方公共団体の機関(都道府県の機関を除く。)又は地方独立行政法人が開

 示決定等をする場合において、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に  

 支障を及ぼすおそれ

・監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握

 を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にする

おそれ

契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国や地方公共団体等の機関の財産上の利益又は当事者

 としての地位を不当に害するおそれ

・調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ

・人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ

・独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その

企業経営上の正当な利益を害するおそれ

最後に個人情報保護法85条1項により、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであるときは、他の行政機関の長等が開示決定等につき正当な理由がある場合は、他の行政機関の長等と協議の上、他の行政機関の長等に対し、事案を移送することができるとされています。ただし、移送する場合は、移送した行政機関の長等は、開示請求者に対して、そのことを書面により通知しなければならないとされています。

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであるときは、いったん開示請求を却下しなければならない。

解説の冒頭より、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであるときは、他の行政機関の長等が開示決定等につき正当な理由がある場合は、他の行政機関の長等と協議の上、他の行政機関の長等に対し、事案を移送することができるとされています。

よって、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報が他の行政機関から提供されたものであるときは、他の行政機関に事案を移せるとなります。

選択肢2. 行政機関の長は、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報は、開示する必要はない。

解説の冒頭より、行政機関の長又地方公共団体の機関は開示決定等をするにあたり、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐れがあると当該行政機関 の長又は地方公共団体の機関が認めることにつき相当の理由がある情報に関しては開示する必要がないとされています。

よって、行政機関の長は、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報は、開示する必要はないとなります。

選択肢3. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報については、必ず当該保有個人情報の存否を明らかにしたうえで、開示または非開示を決定しなければならない。

個人情報保護法81条より、開示請求に対し、当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長等は、当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができるとされています。

よって、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報については、当該開示請求に係る個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、開示を拒否することができるとなります。

選択肢4. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に個人識別符号が含まれていない場合には、当該開示請求につき情報公開法(※)にもとづく開示請求をするように教示しなければならない。(注※行政機関の保有する情報の公開に関する法律)

個人情報保護法に行政機関の長が教示する義務はありません。

よって、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に個人識別符号が含まれていない場合には、当該開示請求につき情報公開法(※)にもとづく開示請求をするように教示する義務はないとなります。

選択肢5. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に法令の規定上開示することができない情報が含まれている場合には、請求を却下する前に、開示請求者に対して当該請求を取り下げるように通知しなければならない。

個人情報保護法第79条1項より、行政機関の長等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならないとされています。

よって、行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に法令の規定上開示することができない情報が含まれている場合には、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対して、それを除いた部分を開示しなければならないとなります。

まとめ

この個人情報保護法に関する問題は、行政書士試験に必ず出てくるので、過去問を解きながら、個人情報保護法の条文の理解を深めていきましょう。

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