行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問5
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問題
行政書士試験 令和3年度 法令等 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
地方公共団体がその土地を神社の敷地として無償で提供することの合憲性に関連して、最高裁判所判決で考慮要素とされたものの例として、妥当でないものはどれか。
(注)※ 憲法89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(注)※ 憲法89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
- 国または地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地として提供する行為は、一般に、当該宗教的施設を設置する宗教団体等に対する便宜の供与として、憲法89条※ との抵触が問題となる行為であるといわなければならない。
- 一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な保護の対象となったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場としての意義を有するなど、文化的・社会的な価値に着目して国公有地に設置されている場合もあり得る。
- 日本では、多くの国民に宗教意識の雑居性が認められ、国民の宗教的関心が必ずしも高いとはいえない一方、神社神道には、祭祀儀礼に専念し、他の宗教にみられる積極的な布教・伝道などの対外活動をほとんど行わないという特色がみられる。
- 明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知(上地)させ、官有地に編入し、または寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じており、これが解消されないまま残存している例もある。
- 当該神社を管理する氏子集団が、宗教的行事等を行うことを主たる目的とする宗教団体であり、寄附等を集めて当該神社の祭事を行っている場合、憲法89条※ の「宗教上の組織若しくは団体」に該当するものと解される。
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この過去問の解説 (3件)
01
1.妥当である
『空知太神社訴訟』。市の所有地を神社施設の敷地として無償で使用させていることが政教分離原則に違反する行為にあたるかどうかが争われた結果、判例は「国または地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は、一般的には、当該宗教的施設を設置する宗教団体等に対する便宜の供与として、憲法89条との抵触が問題となる行為」としています。
2.妥当である。
那覇市の『孔子廟訴訟』。那覇市の管理する公園内に儒教の祖である孔子等を祀った久米至聖廟の設置を許可しその土地使用料を免除したことが政教分離原則に反するか争われました。
判例では「それらの文化的あるいは社会的な価値や意義に着目して当該免除がされる場合もあり得る」とし、「諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である」とした上で、「本件免除は、市と宗教との関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当すると解するのが相当である」。
すなわち政教分離原則に反しており違憲であるとされました。
3.妥当でない
本選択肢の内容自体は、津市体育館建設起工式が同市船頭町の建設現場において行われた際に、公金から挙式費用が支払われたことが政教分離原則に反しているか否かが争われた『津地鎮祭訴訟』において考慮要素とされたものではありますが、本設問で問われている無償貸与の合憲性に対する考慮ではないため妥当ではありません。
4.妥当である
選択肢1と同様『空知太神社訴訟』において、無償貸与の合憲性の考慮要素とされたものです。
判例によると「当該利用提供行為が,一般人の目から見て特定の宗教に対する援助等と評価されるか否かに影響するものと考えられるから,政教分離原則との関係を考えるに当たっても,重要な考慮要素とされるべきもの」としています。
5.妥当である
同じく『空知太神社訴訟』のものです。
選択肢内容に続き、「祭事に伴う建物使用の対価を町内会に支払うほかは、本件神社物件の設置に通常必要とされる対価を何ら支払うことなく、その設置に伴う便益を享受している。すなわち、本件利用提供行為は、その直接の効果として、氏子集団が神社を利用した宗教的活動を行うことを容易にしているものということができる」として、無償貸与の合憲性を問う考慮要素とされました。
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02
この問題のポイントは、地方公共団体と宗教に関する判例と 津地鎮祭事件の理解です。
この判例は以下のようなもの等があります。
・最大判平22.1.20
この判例では、国又は地方公共団体が国有地を無償で宗教的施設の敷地として提供する行為は、一般に、この宗教的施設を設置する宗教団体などに対する便宜の供与として、憲法89条との抵触が問題となる行為であるといわなければならないとしています。
ただ、その施設の性格や来歴、無償に至る経緯、利用の様態等に様々なものがあり得ることは容易に想像できるとされています。
例えば、一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な保護の対象となったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場としての意義を有するなど、文化的・社会的な価値に着目して国公有地に設置されている場合もあり得るとされています。
また、日本では明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知(上地)させ、官有地に編入し、または寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じており、これが解消されないまま残存している例もあるとされています。
これらの事情のいかんは、この利用提供行為が、政教分離との関係を考えるにあたっても重要な考慮要素であるとされるべきといってます。
そして、国有地が無償で宗教的施設の敷地として提供する行為が、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて、憲法89条に違反するか否かを判断するには、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断しなければならないとされています。
最後に神社を管理する氏子集団が、宗教的行事等を行うことを主たる目的とする宗教団体であり、寄附等を集めて当該神社の祭事を行っている場合、憲法89条 の「宗教上の組織若しくは団体」に該当するものと解されるとされています。
・最大判昭52.7.13 津地鎮祭事件
この判例ではまず、日本では、多くの国民に宗教意識の雑居性が認められ、国民の宗教的関心が必ずしも高いとはいえない一方、神社神道には、祭祀儀礼に専念し、他の宗教にみられる積極的な布教・伝道などの対外活動をほとんど行わないという特色がみられるとされています。
そして、市が主催した私立体育館での起工式は宗教と関わり合いをもつものであるということは否定できないが、その目的は建築着工に際し、土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習に従った儀式を行うという専ら世俗的なものと認められ、その効果は神道を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないのであるから、憲法20条3項により禁止されている宗教活動にあたらないと解するのが相当であるとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
解説の冒頭より、国又は地方公共団体が国有地を無償で宗教的施設の敷地として提供する行為は、一般に、この宗教的施設を設置する宗教団体などに対する便宜の供与として、憲法89条との抵触が問題となる行為であるといわなければならないとされています。
よって、国または地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地として提供する行為は、一般に、当該宗教的施設を設置する宗教団体等に対する便宜の供与として、憲法89条※ との抵触が問題となる行為であるといわなければならないとなります。
解説の冒頭より、一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な保護の対象となったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場としての意義を有するなど、文化的・社会的な価値に着目して国公有地に設置されている場合もあり得るとされています。
よって、一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な保護の対象となったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場としての意義を有するなど、文化的・社会的な価値に着目して国公有地に設置されている場合もあり得るとなります。
解説の冒頭より、日本では、多くの国民に宗教意識の雑居性が認められ、国民の宗教的関心が必ずしも高いとはいえない一方、神社神道には、祭祀儀礼に専念し、他の宗教にみられる積極的な布教・伝道などの対外活動をほとんど行わないという特色がみられるとされています。
また、この判例は市が主催した私立体育館での起工式であり、問題文の地方公共団体がその土地を神社の敷地として無償で提供することの合憲性との関連はないです。
解説の冒頭より、日本では明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知(上地)させ、官有地に編入し、または寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じており、これが解消されないまま残存している例もあるとされています。
よって、明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知(上地)させ、官有地に編入し、または寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じており、これが解消されないまま残存している例もあるとなります。
解説の冒頭より、神社を管理する氏子集団が、宗教的行事等を行うことを主たる目的とする宗教団体であり、寄附等を集めて当該神社の祭事を行っている場合、憲法89条 の「宗教上の組織若しくは団体」に該当するものと解されるとされています。
よって、当該神社を管理する氏子集団が、宗教的行事等を行うことを主たる目的とする宗教団体であり、寄附等を集めて当該神社の祭事を行っている場合、憲法89条※ の「宗教上の組織若しくは団体」に該当するものと解されるとなります。
この問題の選択肢で出てきた津地鎮祭事件はよく行政書士試験に出てくるので、しっかり復習しましょう。
また、この問題で出てきた判例は今後も出てくる可能性があるので、一度調べてみるのが良いでしょう。
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03
政教分離に関する問題です。有名な判例(砂川政教分離訴訟、津地鎮祭訴訟、本問の論点ではありませんが愛媛県靖国神社玉串料訴訟など)はかならず押さえておきたいところです。
正しいです。
砂川政教分離訴訟(空知太神社)における判示「市が特定の宗教団体に便宜を図っていると一般人の目線から見て判断されてもやむを得ないものであり、前述の過去と勘案しても、日本国憲法の定める政教分離の原則に反しており違憲である」によります。
正しいです。
同じく砂川政教分離訴訟(空知太神社)における判示「例えば、一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な建造物として保護の対象となるものであったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場などといった他の意義を有していたりすることも少なくなく、それらの文化的あるいは社会的な価値や意義に着目して当該施設が国公有地に設置されている場合もあり得よう。」によります。
間違いです。
この肢のみ、他とは異なる判例(津地鎮祭訴訟)から引用されており、まず正否を疑うべき肢であると見当をつける必要があります。当該訴訟の判示で、地鎮祭の費用が公金から支払われた件についての考慮要素とされたものの、地方公共団体の土地を無償提供した合憲性の構成要素ではありません。
正しいです。
同じく砂川政教分離訴訟(空知太神社)における判示「また、我が国においては、明治初期以来、一定の社寺領を国等に上知(上地)させ,官有地に編入し,又は寄附により受け入れるなどの施策が広く採られたこともあって、国公有地が無償で社寺等の敷地として供される事例が多数生じた。(中略)現在に至っても、なおそのような措置を講ずることができないまま社寺等の敷地となっている国公有地が相当数残存していることがうかがわれるところである。」によります。
正しいです。
同じく砂川政教分離訴訟(空知太神社)における判示「本件氏子集団は、前記のとおり、町内会に包摂される団体ではあるものの、町内会とは別に社会的に実在しているものと認められる。そして、この氏子集団は、宗教的行事等を行うことを主たる目的としている宗教団体であって、寄附を集めて本件神社の祭事を行っており、憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に当たるものと解される。」によります。
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