行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問4
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問題
行政書士試験 令和3年度 法令等 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
捜査とプライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 個人の容ぼうや姿態は公道上などで誰もが容易に確認できるものであるから、個人の私生活上の自由の一つとして、警察官によって本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めることはできない。
- 憲法は、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を定めるが、その保障対象には、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれる。
- 電話傍受は、通信の秘密や個人のプライバシーを侵害するが、必要性や緊急性が認められれば、電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが可能な場合であっても、これを行うことが憲法上広く許容される。
- 速度違反車両の自動撮影を行う装置により運転者本人の容ぼうを写真撮影することは憲法上許容されるが、運転者の近くにいるため除外できないことを理由としてであっても、同乗者の容ぼうまで撮影することは許されない。
- GPS端末を秘かに車両に装着する捜査手法は、車両使用者の行動を継続的・網羅的に把握するものであるが、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりする手法と本質的に異ならず、憲法が保障する私的領域を侵害するものではない。
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この過去問の解説 (3件)
01
1.妥当でない
『京都府学連デモ事件』において、本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めています。
2.妥当である
『GPS捜査の適法性』が争われた裁判において、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利も保障対象に含まれるとしています。
3.妥当でない
『検証許可状により電話傍受を行うことの適否』を争う裁判において、「電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行う ことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に 従ってこれを行うことも憲法上許されると解するのが相当である」とされました。
4.妥当でない
『自動速度監視装置による速度違反車両運転者及び同乗者の容ぼうの写真撮影の合憲性』を争う裁判において、「運転者の容ぼうの写真撮 影は、現に犯罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいつて緊急に証拠保全をする必要性があり、その方法も一般的に許容される限度を超えない相当 なものであるから、憲法13条に違反せず、また、右写真撮影の際、運転者の近く にいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになつても、憲法13条21条に違反しない」 とされました。
5.妥当でない
選択肢2と同じく、『GPS捜査の適法性』を争う裁判の判例で、「このような捜査手法は、個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害し得るもの」とされ、「公権力による私的領域への侵入を伴うもの」としています。
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02
比較的よく出る憲法のプライバシーの問題です。
平易な問題なので、落とさないようにしたいです。
間違いです。
「憲法13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定している。
そして、個人の私生活上の自由として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由をする」(最大判昭44.12.24)とあり、肢と矛盾します。
これは頻出の判例なので押さえておきたいです。
妥当です。
「憲法35条は、「住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ、この規定の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である」(最大判平29.3.15)としています。
間違いです。
「電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許される」(最判平11.12.16)と判示されており、必要性や緊急性だけでは、電波傍受は許容されないと解釈できます。
間違いです。
前段は正しいですが、同乗者の容ぼう撮影が許されないとする後半が誤りです。
「写真撮影の際、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになつても、憲法一三条、二一条(通信の秘密)に違反しない」(最判昭61.2.14)
間違いです。
「このような捜査手法は、個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害し得るものであり、また、そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである」(最大判平29.3.15)と判示されており、肢の内容と合致しません。
また、かつて警察官による車両へのGPS装着が問題になっていた事件があったかと思いますが、それを思い出せれば難しくないと思います。
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03
この問題のポイントは、捜査とプライバシー権に関する判例の理解です。
捜査とプライバシー権に関する判例は以下のようなものがあります。
・最大判昭44.12.24 京都府学連事件
この判例では、肖像権は憲法13条で保障されており、憲法13条は国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定しています。
そして、国民の私生活上の自由として、承諾なしにみだりにその容貌等を撮影されない自由があるとされています。
最後に結論として、警察官が正当な理由なく、個人の容貌等を撮影する行為は憲法13条に反し、許されないとされました。
・最大判平29.3.15
この判例では、憲法35条は住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を規定しており、この規定の保障対象には、住居、書類および所持品だけでなく、これらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれるのが相当であると解するとされています。
また、車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分であるとされています。
・最判平11.12.16
この判例では、電話傍受は、通信の秘密を侵害し、ひいては、個人のプライバシーを侵害する強制処分であるが、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと解されています。
また、捜査機関が電話の通話内容を通話当事者の同意を得ずに傍受することは、重大な犯罪に係る被疑事件について、罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、他の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存し、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に、法律の定める手続きに従ってこれを実施することが憲法上許されるとされています。
・最判昭61.2.14
この判例では自動速度監視装置(オービス)による運転者の容貌の写真撮影は、現に犯罪行為がなされている場合になされ、犯罪の性質、様態から緊急に証拠保全をする必要があり、その方法も一般的に許容される限度を超えない相当なものであるから、憲法13条に違反せず、また、写真撮影の際に、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容貌を撮影することになっても、憲法13条、21条に違反しないとされています。
以上の点を押さえて、解説を見ていきましょう。
解説の冒頭より、国民の私生活上の自由として、承諾なしにみだりにその容貌等を撮影されない自由があるとされています。
よって、個人の容ぼうや姿態は公道上などで誰もが容易に確認できるものであるから、個人の私生活上の自由の一つとして、警察官によって本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めることはできるとなります。
解説の冒頭より、保障対象には、住居、書類および所持品だけでなく、これらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれるのが相当であるとされています。
よって、憲法は、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を定めるが、その保障対象には、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれるとなります。
解説の冒頭より、電話傍受は一定の要件を満たし、かつ、他の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存じる場合は、法律の定める手続きに従い、行うことが憲法上許されます。
よって、電話傍受は、通信の秘密や個人のプライバシーを侵害するが、必要性や緊急性が認められれ、電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難な場合であれば、法律の定める手続きに従い、これを行うことが憲法上許容されるとなります。
解説の冒頭より、自動速度監視装置(オービス)による運転者の容貌の写真撮影は、憲法13条に違反せず、また、写真撮影の際に、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容貌を撮影することになっても、憲法13条、21条に違反しないとなります。
よって、速度違反車両の自動撮影を行う装置により運転者本人の容ぼうを写真撮影することは憲法上許容されるが、運転者の近くにいるため除外できないことを理由としてであれば、同乗者の容ぼうまで撮影することは許されるとなります。
解説の冒頭より、車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるとされています。
よって、GPS端末を秘かに車両に装着する捜査手法は、車両使用者の行動を継続的・網羅的に把握するものであるが、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりする手法と本質的に異なり、憲法が保障する私的領域を侵害するものであるとなります。
この問題で出てくる判例は、行政書士試験に度々出てくるので、しっかり復習しましょう。
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