行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問10
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問題
行政書士試験 令和3年度 法令等 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
行政立法についての最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。
- 監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。
- 薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。
- 児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。
- 銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。
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この過去問の解説 (3件)
01
1.妥当でない。
判例では「退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である」としています。
2.妥当である。
判例では「被勾留者も当該拘禁関係に伴う一定の制約の範囲外においては原則として一般市民としての自由を保障されるのであり、幼年者の心情の保護は元来その監護に当たる親権者等が配慮すべき事柄であることからすれば、法が一律に幼年者と被勾留者との接見を禁止することを予定し、容認しているものと解することは、困難である」としています。
すなわち一定の制約を課されたとしても、被拘留者にも接見の自由はあり、一律に接見を禁することを容認していないとしています。
3.妥当でない。
法改正に伴い法施行規則によって一部医薬品のネット販売が禁止されたことからネット販売の権利確認等を求めた訴訟において、判例は「その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである」とされました。
4.妥当でない。
かっこ書きにより児童扶養手当の支給対象から父に認知された子を除外したことは法の委任の範囲を逸脱した違法な規定かどうかについて、判例は「父から認知された婚姻外懐胎児童を本件かっこ書きにより児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨に反し、本件かっこ書きは法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」としています。
5.妥当でない。
判例は「銃砲刀剣類所持等取締法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない」としています。
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02
この問題のポイントは、行政立法の判例の理解です。
行政立法の判例として、例えば以下のようなものがあります。
・最判平27.12.14
この判例では、国家公務員共済組合法附則12条の12の趣旨等に照らすと,同条4 項は,退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について,予定運用収入に係る 利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと 理解することができるとされています。 そして、国家公務員共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1 項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に 委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものでは ないと解するのが相当であるとされています。
・最判平3.7.9
この判例では、旧監獄法施行規則120条で14歳未満の者には在監者と接見することは許さないと規定しているが、同124条でその例外として限られた場合に、監獄の長の裁量によりこれを許すことが明らかになっているとされています。
そして、これらの規定は、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、同法50条の委任の範囲を超えるものといえ、これらの規定は無効であるとされています。
・最判平25.1.11
この判例では、以下のように記載されています。
旧薬事法では違法とされていなかった医薬品の郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売を事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度規制するのは明らかであり、これらの事情の下で、厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するものであり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定をみて、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきであるとされています。
・最判平14.1.31
この判例では、次のように述べられています。
児童扶養手当法施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは、法の委任の趣旨に反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効であり、本件括弧書を根拠とした本件処分は違法といわざるを得ないとされています。
・最判平2.2.1
この判例では、以下のように述べられています。
銃砲刀剣類登録規則(省令)が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において文化的価値を有するものとして登録の対象とすべきとしたことは、銃砲刀剣類所持等取締法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効なものということはできないとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
解説の冒頭の最判平27.12.14より、国家公務員共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1 項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に 委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものでは ないとされています。
よって、国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものということはできず、当該委任は憲法41条に違反するものではないとなります。
解説の冒頭の最判平25.1.11より、これらの規定は、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、同法50条の委任の範囲を超えるものといえ、これらの規定は無効であるとされています。
よって、監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効であるとなります。
解説の冒頭の最判平25.1.11より、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定をみて、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきであるとされています。
よって、薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照した上で判断をするとなります。
解説の冒頭の最判平14.1.31より、児童扶養手当法施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは、法の委任の趣旨に反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効であり、本件括弧書を根拠とした本件処分は違法といわざるを得ないとされています。
よって、児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものであり、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することは不合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲を逸脱しており、違憲、違法であるとなります。
解説の冒頭の最判平2.2.1より、銃砲刀剣類登録規則(省令)が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において文化的価値を有するものとして登録の対象とすべきとしたことは、銃砲刀剣類所持等取締法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効なものということはできないとされています。
よって、銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、合理的なものであって、法の委任の範囲を超えるものでなく、当該登録規則の規定は無効ということはできないとなります。
この行政立法の判例に関する問題はよく出るので、この問題で出てくる判例は勿論過去勿論過去に出てきた判例も復習するよう、心がけましょう。
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03
法律とその委任を受けた政令や規則が違憲であるかを問う問題です。
細かい判例や規則をすべて把握するのは困難ですので、有名な判例は必ず押さえておき、知っている肢から消去法的に絞り込んでいって正解肢をあぶりだしていきます。
間違いです。
判例(退職一時金返還請求事件)によると、「したがって、国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である。」とあり、当該委任は憲法41条に違反していないとしています。
正しいです。
判例(面会不許可処分取消等)によると「監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条及び一二四条の各規定は、未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さないとする限度において、監獄法五〇条の委任の範囲を超え、無効である。」とあり、本肢の主旨に合致しています。
間違いです。
判例(医薬品ネット販売最高裁判決)によると、「これらの事情の下で、厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの (行政手続法38条1項)であり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。 」とあり、本肢の「立法過程における議論を考慮(=しんしゃく)したり」という内容と一致していません。
間違いです。
判例(児童扶養手当資格喪失処分取消請求事件)によると「施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨に反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」とあり、本肢の内容に合致していません。
間違いです。
判例(刀剣登録拒否処分取消)によると、「 銃砲刀剣類登録規則四条二項が、銃砲刀剣類所持等取締法一四条一項の登録の対象となる刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定めていることは、同条五項の委任の趣旨を逸脱するものではない。」とあり、本肢の内容に一致していません。
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