行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問9
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問題
行政書士試験 令和3年度 法令等 問9 (訂正依頼・報告はこちら)
行政裁量に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。
イ 国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。
ウ 公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。
エ 生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。
オ 学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。
ア 教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。
イ 国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。
ウ 公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。
エ 生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。
オ 学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。
- ア・ウ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・エ
- エ・オ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア.判例では選択肢の通りとしています。よって正しいです。
イ.国家公務員の懲戒処分を争った裁判において、「懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである」としていますが、同時に「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである」とし、懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に留まらず司法審査を行う旨を示しています。
よって誤りです。
ウ.判例では選択肢の通りとしています。よって正しいです。
エ.判例において、選択肢の内容に関して「厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである」としています。
よって誤りです。
オ.学校施設の目的外使用に関して、判例では「そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである」としています。
よって誤りです。
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02
行政裁量の問題も頻出です。
各肢の論点はいずれも重要な論点になるので、必ず押さえておくべき内容です。
ア:判例(最判平5.3.16)「これらによる本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。」のとおり、アは正しいです。
イ:判例(最判昭52.12.20)により、「したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較して その軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判 断すべきものである。」とあり、本肢の「裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される」としている点が間違いです。
ウ:判例(最判平25.4.16)「客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって,この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないというべき」のとおり、ウは正しいです。
エ:判例(最大判昭42.5.24)より、「したがつて、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、直ちに違法の問題を生ずることはない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない。 」とあり、本肢の「厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない」としている点が誤りです。
オ:判例(最判平18.2.7)より、「地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言 に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路 や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置さ れ、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」とあり、本肢の「許可しなければならない」としている箇所が間違いです。
正しいです。
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03
この問題のポイントは、行政裁量に関する判例についての理解です。
以下に行政裁量に関する代表的な判例を記載します。
・最判平5.3.16
この判例では、教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童・生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部科学大臣(当時は文部大臣)の合理的な裁量に委ねられるとされています。
また、教科書検定に不合格になっても、一般図書として発行できるので、検閲にあたらないとされています。
・最判昭52.12.20
この判例では、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任せるものとされています。
また、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずるべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められた場合に限り違法であると判断すべきとされています。
・最判平25.4.16
この判例では、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、客観的事象としての水俣病のり 患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって,この 点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないとされています。
・最判平24.2.28
この判例では、生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において決定判断されるべきものであるから、これを保護基準において具体化するにあたって、高度の専門的、技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするとされています。
また、そのことより厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められているとされています。
・最判平18.2.7
この判例では、学校施設は、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されていることから、学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられるとされています。
また、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、管理者の合理的な裁量判断によって使用許可をしないこともできるとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
まず、解説の冒頭の最判平5.3.16より、教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童・生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部科学大臣(当時は文部大臣)の合理的な裁量に委ねられるとされています。
よって、教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられるとなります。
次に、解説の冒頭の最判平25.4.16より、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、客観的事象としての水俣病のり 患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって,この 点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないとされています。
よって、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないとなります。
解説の冒頭の最判平18.2.7より、学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられ、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、管理者の合理的な裁量判断によって使用許可をしないこともできるとされています。
よって、学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、許可をしないこともできるとなります。
解説の冒頭の最判昭52.12.20より、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずるべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められた場合に限り違法であると判断すべきとされています。
よって、国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束されないとなります。
解説の冒頭の最判平24.2.28より、生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において決定判断されるべきものであるから、これを保護基準において具体化するにあたって、高度の専門的、技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするとされています。
また、そのことより厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められているとされています。
よって、生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものではないから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められるとなります。
この行政裁量に関する判例に関する問題は行政書士試験によく出てくるので、今回出てきた判例をしっかり復習しましょう。
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