行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問12

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問題

行政書士試験 令和3年度 法令等 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

理由の提示に関する次の記述のうち、行政手続法の規定または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
  • 行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示さなければならない。
  • 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことを理由とするときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要はない。
  • 行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りる。
  • 公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけで足りる。
  • 旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者が事前に了知しうる事情の下であれば、単に発給拒否の根拠規定を示すだけで足りる。

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この過去問の解説 (3件)

01

1.妥当でない。

 行政手続法8条1項において、申請者に対して、申請により求められた許認可等を拒否する場合、当該処分の理由を示さなければならないとされていますが、認容処分をする場合はその義務はありません。また、利害関係者へ処分理由を提示する規定はありません 

2.妥当でない。

 同じく行政手続法8条1項により、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」とされています。また同2項にて書面で示すことを義務付けられています。

3.妥当である。

 行政手続法第14条1項において「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」とされています。

4.妥当でない。

 判例は「非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、本条例7条4項の要求する理由付記としては十分でないといわなければならない」 としています。

5.妥当でない。

 判例は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない」としています。

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02

頻出判例を除いて、無数にある判例を一つ一つ細かく覚えるのは非常に大変で、行政書士試験においてはあまり現実的ではありません。この問題では行政手続法の条文を頼りに、如何に正しい肢を探し出すことがポイントとなります。

選択肢1. 行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示さなければならない。

間違いです。

例えば拒否処分の場合には、処分理由の提示が申請者に対して必要ですが、利害関係を有するものと認められるものからの請求があった場合、当該処分の理由を示さなければならないとする規定はありません。

選択肢2. 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことを理由とするときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要はない。

間違いです。

行政手続法第8条ただし書きでは、「法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる」とあり、本肢の状況であれば、申請者の求めがあったときは、理由を提示する必要があります。

選択肢3. 行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りる。

正しいです。

行政手続法第14条1項および2項が根拠となりますが、これらの条文を正確に覚えていることが重要になります。

選択肢4. 公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけで足りる。

間違いです。

最高裁は「(前略)単に非開示の根拠規定を示すだけでは(中略)十分ではないといわなければならない」としています。

(最判平4.12.10)

選択肢5. 旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者が事前に了知しうる事情の下であれば、単に発給拒否の根拠規定を示すだけで足りる。

間違いです。

判決理由では「(前略)単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の基礎となつた事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない。」とされています。

(最判昭60.1.22)

参考になった数3

03

この問題のポイントは、行政手続法第8条1項、行政手続法第14条1項、最判平4.12.10、最判昭60.1.22の理解です。

まず、行政手続法第8条1項では、行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りるとされています。

次に、行政手続法第14条1項では行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでないとなり、その2項では行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならないとされています。

最後に下記に最判平4.12.10、最判昭60.1.22について記載します。

・最判平4.12.10

公文書の非開示決定に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例9条各号所定の非開示事由のどれに該当するかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは当該公文書の種類、性質等と相まって開示請求者がそれらを当然知りえるような場合を別として、理由付記としては十分ではないといわなければならないとされています。

・最判昭60.1.22

旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならないとされています。

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示さなければならない。

行政手続法に行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合の条文はありません。

よって、行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示す義務はないとなります。

選択肢2. 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことを理由とするときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要はない。

解説の冒頭の行政手続法第8条1項では、行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りるとされています。

よって、行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことが客観的な客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要があるとなります。

選択肢3. 行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りる。

解説の冒頭の行政手続法第14条1項では行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでないとなり、その2項では行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならないとされています。。

よって、行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りるとなります。

選択肢4. 公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけで足りる。

解説の冒頭の最判平4.12.10において、開示請求者において、本条例9条各号所定の非開示事由のどれに該当するかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは当該公文書の種類、性質等と相まって開示請求者がそれらを当然知りえるような場合を別として、理由付記としては十分ではないといわなければならないとされています。

よって、公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけでは十分ではないとなります。

選択肢5. 旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者が事前に了知しうる事情の下であれば、単に発給拒否の根拠規定を示すだけで足りる。

解説の冒頭の最判昭60.1.22において、旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならないとされています。

よって、旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者がその記載自体から了知しうるものでなければ、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは十分でないとなります。

まとめ

この問題では、行政手続法の条文理解は基より、判例の理解を求められており、過去問を解きながら行政手続法の判例及び条文理解を深める必要があります。

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