行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問19

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問題

行政書士試験 令和3年度 法令等 問19 (訂正依頼・報告はこちら)

取消訴訟の原告適格に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
(注)※ 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律
  • 地方鉄道法(当時)による鉄道料金の認可に基づく鉄道料金の改定は、当該鉄道の利用者に直接の影響を及ぼすものであるから、路線の周辺に居住し、特別急行を利用している者には、地方鉄道業者の特別急行料金の改定についての認可処分の取消しを求める原告適格が認められる。
  • 文化財保護法は、文化財の研究者が史跡の保存・活用から受ける利益について、同法の目的とする一般的、抽象的公益のなかに吸収・解消させずに、特に文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしている規定を置いているため、史跡を研究の対象とする学術研究者には、史跡の指定解除処分の取消しを求める原告適格が認められる。
  • 不当景品類及び不当表示防止法は、公益保護を目的とし、個々の消費者の利益の保護を同時に目的とするものであるから、消費者が誤認をする可能性のある商品表示の認定によって不利益を受ける消費者には、当該商品表示の認定の取消しを求める原告適格が認められる。
  • 航空機の騒音の防止は、航空機騒音防止法 の目的であるとともに、航空法の目的でもあるところ、定期航空運送事業免許の審査にあたっては、申請事業計画を騒音障害の有無および程度の点からも評価する必要があるから、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受ける空港周辺の住民には、免許の取消しを求める原告適格が認められる。
  • 都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定は、事業地の周辺に居住する住民の具体的利益を保護するものではないため、これらの住民であって騒音、振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのあるものであっても、都市計画事業認可の取消しを求める原告適格は認められない。

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この過去問の解説 (3件)

01

1.妥当でない。

 判例では「たとえ上告人らがD鉄道株式会社の路線の周辺に居住する者であって通勤定期券を購入するなどしたうえ、日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、上告人らは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者にあたるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しないというべきである」(近鉄特急料金認可処分取消等請求事件:平成元年4月13日)

 利用客というだけでは権利や利益を侵害されたと言えず、原告適格は無いとしました。

2.妥当でない。

 史跡指定解除処分取消請求事件の判例(平成元年6月20日)より「条例及び文化財保護法は、(中略)文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしていると解しうる規定を見出すことはできないから、そこに、学術研究者の利益について、一般の県民あるいは国民が文化財の保存・活用から受ける利益を超えてその保護を図ろうとする趣旨を認めることはできない。」また「本件遺跡を研究の対象としてきた学術研究者であるとしても本件史跡指定解除処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有せず、本件訴訟における原告適格を有しないといわざるをえない。」として、原告適格を否定しています。

3.妥当でない。

  審決取消(昭和53年3月14日)の判例より、「景表法の規定により一般消費者が受ける利益は(中略)同法の規定の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であって、本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを目的とする法規により保障される法律上保護された利益とはいえないものである。」「仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によって得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかったにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はないといわなければならない。そこで、単に一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定につき同法10条6項の規定に基づく不服申立をする法律上の利益を有するとはいえない。

 一般消費者は公正取引委員会に対する 不服申し立ての原告適格を有しないとしています。

4.妥当である。

  新潟─小松─ソウル間の定期航空運送事業免許処分取消請求事件(平成元年2月17日)において騒音被害をうける近隣住民に航空運送事業免許の取消しを求める原告適格を認めた判例です。

当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」として、当該住民の原告適格が認められました。

5.妥当でない。

 小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件(平成17年12月7日)の判例より、「都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものといわなければならない。」として、事業地の周辺に居住する住民の原告適格を認めています。

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02

最高裁判所の判例では、原告適格は一般的に「処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益侵害され又は必然的に侵害される恐れのある者」(主婦連ジュース訴訟/ 最判昭53.3.14)に認められるとされています。

1.妥当でない。判例では、当該路線周辺に居住し通勤定期券を購入するなどして利用している者には原告適格は認められないとしました。(近鉄特急事件/ 最判平元4.13)

2.妥当でない。判例では、史跡の指定解除処分の取消しに関する訴訟について、当該遺跡を学術研究の対象としてきた者に原告適格は認められないとしました。(伊場遺跡事件/ 最判平元6.20)

3.妥当でない。判例では、消費者が誤認をする可能性のある商品表示の認定によって不利益を受ける消費者には、公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であって、法律上保護された利益とはいえないものであるとし、原告適格は認められないとしました。(主婦連ジュース訴訟/ 最判昭53.3.14)

4.妥当である。判例では、当該行政法規と目的を共通する関連法規の関連規定によって形成される法体系において、当該処分の根拠規定が個々人の個別的利益を保護すべきものとして位置づけられているとみることができるかどうかによって決すべきであるとし、原告適格を肯定しました。(新潟空港事件/ 最判平元2.17)

5.妥当でない。判例では、処分の相手方以外の者についても、害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものであるとし、原告適格を肯定しました。(小田急高架訴訟/ 最判平17.12.7)

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03

判例に関する問題です。いかに判例を理解しているかを問われている問題でした。

選択肢1. 地方鉄道法(当時)による鉄道料金の認可に基づく鉄道料金の改定は、当該鉄道の利用者に直接の影響を及ぼすものであるから、路線の周辺に居住し、特別急行を利用している者には、地方鉄道業者の特別急行料金の改定についての認可処分の取消しを求める原告適格が認められる。

妥当ではありません。

「たとえ上告人らがD鉄道株式会社の路線の周辺に居住する者であって通勤定期券を購入するなどしたうえ、日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、上告人らは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者にあたるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しないというべきである」(最判平成元年4月13日)

とあり、周辺に住んでいて定期券を購入してるだけでは、原告適格は認められないとの判例があります。

選択肢2. 文化財保護法は、文化財の研究者が史跡の保存・活用から受ける利益について、同法の目的とする一般的、抽象的公益のなかに吸収・解消させずに、特に文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしている規定を置いているため、史跡を研究の対象とする学術研究者には、史跡の指定解除処分の取消しを求める原告適格が認められる。

妥当ではありません。

条例及び文化財保護法は、文化財の保存・活用から個々の県民あるいは国民が受ける利益については、本来本件条例及び法がその目的としている公益の中に吸収解消させ、その保護は、もっぱら右公益の実現を通じて図ることとしているものと解される。そして、本件条例及び法において、文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしていると解しうる規定を見出すことはできないから、そこに、学術研究者の利益について、一般の県民あるいは国民が文化財の保存・活用から受ける利益を超えてその保護を図ろうとする趣旨を認めることはできない。(最判平成元年6月20日)

とあり、最高裁は原告適格を否定しています。

選択肢3. 不当景品類及び不当表示防止法は、公益保護を目的とし、個々の消費者の利益の保護を同時に目的とするものであるから、消費者が誤認をする可能性のある商品表示の認定によって不利益を受ける消費者には、当該商品表示の認定の取消しを求める原告適格が認められる。

妥当ではありません。

「公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によって得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかったにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はないといわなければならない。そこで、単に一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定につき同法10条6項の規定に基づく不服申立をする法律上の利益を有するとはいえない。」(最判昭和53年3月14日)

とあり、原告適格を否定しています。

選択肢4. 航空機の騒音の防止は、航空機騒音防止法 の目的であるとともに、航空法の目的でもあるところ、定期航空運送事業免許の審査にあたっては、申請事業計画を騒音障害の有無および程度の点からも評価する必要があるから、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受ける空港周辺の住民には、免許の取消しを求める原告適格が認められる。

妥当です。

「新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」(最判平成元年2月17日)

とあるので、空港周辺の住民は原告適格を有しています。

選択肢5. 都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定は、事業地の周辺に居住する住民の具体的利益を保護するものではないため、これらの住民であって騒音、振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのあるものであっても、都市計画事業認可の取消しを求める原告適格は認められない。

妥当ではありません。

「都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的、これらの規定が都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば、同法は、これらの規定を通じて、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るなどの公益的見地から都市計画施設の整備に関する事業を規制するとともに、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。」

(最判平成17年12月7日)

とあるので、原告適格が認められている事案があります。

 

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