行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問25

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問題

行政書士試験 令和3年度 法令等 問25 (訂正依頼・報告はこちら)

墓地埋葬法 13条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。」と定めているところ、同条の「正当の理由」について、厚生省(当時)の担当者が、従来の通達を変更し、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由として埋葬を拒否することは「正当の理由」によるものとは認められないという通達(以下「本件通達」という。)を発した。本件通達は、当時の制度の下で、主務大臣がその権限に基づき所掌事務について、知事をも含めた関係行政機関に対し、その職務権限の行使を指揮したものであるが、この通達の取消しを求める訴えに関する最高裁判所判決(最三小判昭和43年12月24日民集22巻13号3147頁)の内容として、妥当なものはどれか。
(注)※ 墓地、埋葬等に関する法律
  • 通達は、原則として、法規の性質をもつものであり、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであって、本件通達もこれに該当する。
  • 通達は、関係下級機関および職員に対する行政組織内部における命令であるが、その内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、法規の性質を有することとなり、本件通達の場合もこれに該当する。
  • 行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではなく、その点では本件通達の場合も同様である。
  • 本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものであり、下級行政機関は当該通達に反する行為をすることはできないから、本件通達は、これを直接の根拠として墓地の経営者に対し新たに埋葬の受忍義務を課すものである。
  • 取消訴訟の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達の取消しを求める訴えは許されないものとして棄却されるべきものである。

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この過去問の解説 (3件)

01

 昭和43年12月24日の法律解釈指定通達取消請求訴訟において、通達の取消の訴えが許されないとされた事例です。

1.妥当でない。

 判例より「機関および職員に対する行政 組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されること はあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達 の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわり をもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではない」としています。通達は原則として法規の性質を持たないものであるので誤りです。

2.妥当でない。

 上記選択肢1の通り、通達は、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合であっても法規の性質を有することはないとしています。

3.妥当である。

 判例より「行政機関が通達の趣旨に反する 処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右される ものではない。」通達は法規の性質をもつものでないため、処分の効力が左右されることはありません。

4.妥当でない。

 判例より「本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それ はもつぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通 達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従つて、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、 新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない

5.妥当でない。

 判例より「本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は 許されないものとして却下すべきものである。 」 

 本件は訴えを却下したものなので誤りです。却下と棄却はどちらも訴えが退けられることですが、。却下は要件を満たしていないと退けられることで、棄却は内容を検討したうえで理由がないとして訴えとして退けられることです。

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02

この問題のポイントは、最判昭43.12.24の理解です。

この判例の争点は通達は取消の訴えの対象となるかどうかで、結論として 通達の取消の訴が許されないとされ、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命 令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政 組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達 の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわり をもつようなものである場合においても別段異なるところはないとされています。

また、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する 処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではないとされています。

さらに本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それ はもつぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通 達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従つて、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、 新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいえないとされています。

最後に現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものであるとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 通達は、原則として、法規の性質をもつものであり、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであって、本件通達もこれに該当する。

解説の冒頭より、通達は、原則として、法規の性質をもつものではないとされています。

よって、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであって、本件通達もこれに該当するとなります。

選択肢2. 通達は、関係下級機関および職員に対する行政組織内部における命令であるが、その内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、法規の性質を有することとなり、本件通達の場合もこれに該当する。

解説の冒頭より、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命 令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政 組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわり をもつようなものである場合においても別段異なるところはないとされています。

よって、通達は、関係下級機関および職員に対する行政組織内部における命令であるが、その内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合であっても、法規の性質を有しないこととなり、本件通達の場合もこれに該当するとなります。

選択肢3. 行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではなく、その点では本件通達の場合も同様である。

解説の冒頭より、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する 処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではないとされています。

よって、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではなく、その点では本件通達の場合も同様であるとなります。

選択肢4. 本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものであり、下級行政機関は当該通達に反する行為をすることはできないから、本件通達は、これを直接の根拠として墓地の経営者に対し新たに埋葬の受忍義務を課すものである。

解説の冒頭より、本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それはもつぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通 達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従つて、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、 新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいえないとされています。

よって、本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものであり、下級行政機関は当該通達に反する行為をすることはできないにしても、本件通達は、これを直接の根拠として墓地の経営者に対し新たに埋葬の受忍義務を課すものではないとなります。

選択肢5. 取消訴訟の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達の取消しを求める訴えは許されないものとして棄却されるべきものである。

解説の冒頭より、現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は 許されないものとして却下すべきものであるとされています。

よって、取消訴訟の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達の取消しを求める訴えは許されないものとして却下されるべきものであるとなります。

まとめ

この問題で出てきた最判昭43.12.24は初出題であり、今後も別の問われ方をされる可能性があるので、一度最判昭43.12.24を見直してみた方が良いかと考えられます。

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03

1.妥当でない。通達は法学上、「行政規則」と呼ばれ、法規の性質を持ちません。

後半の「上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであって、本件通達もこれに該当する。」は正しい内容です。

2.妥当でない。前半の「通達は、関係下級機関および職員に対する行政組織内部における命令である」は正しい内容ですが、「その内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、法規の性質を有する」といったことはありません。

3.妥当である。判例通りの内容です。

4.妥当でない。通達は法規の性質を持たないことから、行政外部の私人は通達の内容に拘束されません。

よって、「本件通達は、これを直接の根拠として墓地の経営者に対し新たに埋葬の受忍義務を課すものである。」は誤りです。

5.妥当でない。「取消訴訟の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのである」は正しいですが、この場合、訴訟に必要な要件を満たしていないことを示すので、棄却ではなく却下を用います。

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