行政書士の過去問
令和3年度
法令等 問26

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問題

行政書士試験 令和3年度 法令等 問26 (訂正依頼・報告はこちら)

公立学校に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア  公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられる。
イ  公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、当該住民は本来の利用者とはいえないことから、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはない。
ウ  公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められることから、その処分性が肯定される。
エ  市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができる。
  • ア・イ
  • ア・エ
  • イ・ウ
  • イ・エ
  • ウ・エ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア.妥当である。

 信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分が裁量権の範囲を超える違法なものであるとされた事例の判例より、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうか の判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきもの」としています。

イ.妥当でない。

 幼児がテニスコートの審判台の下敷きになった事件の判例(最判平成5年3月30日)において、公の営造物の設置管理者は、本件の例についていえば、審判台が本来の用法 に従って安全であるべきことについて責任を負うのは当然」とされており、設置管理者が責任を負う可能性があります。

ウ.妥当でない。

 判例より「本件条例は一般的規範にほかならず、上告人らは、被上告人東京都千代田区が社会生活上通学可能な範囲内に設置する小学校においてその子らに法定年限の普通教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するが、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえない」(最判平成14年4月25日)としています。

エ.妥当である。

   求償金請求事件(平成21年10月23日)の判例において、「市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によ って違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担 する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従い上記生徒に対して損害を賠償 したときは,当該都道府県は,同条2項に基づき,賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができるものと解するのが相当である。」としています。

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02

ア.妥当である。判例では、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきもの」(エホバの証人剣道実技拒否事件/ 最判平8.3.8)としました。

イ.妥当でない。判例では、公の営造物の危害は、「営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれ(=危害)をも含む」(大阪国際空港公害訴訟/ 昭56.12.16)とし、設置管理者が国家賠償法上の責任を負うこともあります。

ウ.妥当でない。判例では、「区立小学校の統廃合を内容とする条例は、一般的規範にほかならず、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえない」とし、処分性が否定されています。

エ.妥当である。判例では、「都道府県は、国家賠償法2条に基づき、賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができる」とし、賠償金の全額を市に求償できることを認めました。(福島県郡山市立中学校体罰事件/ 最判平21.10.23)

よって、正解は2。

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03

この問題のポイントは、最判平5.3.30、最判平8.3.8、最判平14.4.25、最判平21.10.23の理解です。

まず最判平5.3.30は幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握つて降りようとしたために転倒した審判台の下敷きになつて死亡した場合において、当該審判台には、本来の用法に従つて使用する限り、転倒の危険がなく、右幼児の行動が当該審判台の設置管理者の通常予測し得ない異常なものであつたなど判示の事実関係の下においては、設置管理者は、右事故につき、国家賠償法二条一項所定の損害賠償責任を負わないとされています。

最判平8.3.8は高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうか の判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がそ の処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべ きであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、 軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の 基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものであるとされています。

最判平14.4.25は公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められないことから、その処分性は否定されるとされています。

最後に最判平21.10.23は市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従い上記生徒に対して損害を賠償したときは,当該都道府県は,同条2項に基づき,賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができるとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢2. ア・エ

解説の冒頭より、高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうか の判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がそ の処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべ きであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、 軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の 基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものであるとされています。

よって、アは公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられるとなります。

 

解説の冒頭より、設置管理者の通常予測し得ない異常なものであつたなど判示の事実関係の下においては、設置管理者は、右事故につき、国家賠償法二条一項所定の損害賠償責任を負わないとされています。

よって、イは公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、設置管理者の通常予測し得ない異常なものであれば、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはないとなります。

 

解説の冒頭より、公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められないことから、その処分性は否定されるとされています。

よって、ウは公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められないことから、その処分性が否定されるとなります。

 

解説の冒頭より、市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従い上記生徒に対して損害を賠償したときは,当該都道府県は,同条2項に基づき,賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができるとされています。

よって、エは市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができるとなります。

まとめ

この問題で出てきた判例は度々行政書士試験に出てくるので、もう一度これらの判例を見直した方が良いでしょう。

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