行政書士の過去問 令和3年度 法令等 問34
この過去問の解説 (2件)
1.妥当である。
昭和50年10月24日の損害賠償請求事件の最高裁判例において、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではな く、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来し た関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑 を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、 それで足りるものである。」とされています。
2.妥当である。
交通事故による損害賠償額を定めた判例(平成8年10月29日)において「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有し ていたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、 被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと 解すべきである。」とされました。
3.妥当である。
未成年者の不法行為による損害賠償に関する判例(昭和39年6月24日)において、「被害者の過失を斟酌するには、被害者たる未成年者が、事理を弁識するに足る知能を具えていれば足り、行為の責任を弁識するに足る知能を具えていることを要しないものと解すべきである。」とされています。
事理を弁識する知能があれば、責任能力を必要としないとの判断です。
4.妥当である。
委嘱状不法発送謝罪請求(昭和45年12月18日)において、「 民法七二三条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。」 とされています。
5.妥当でない。
平成7年6月9日の医療過誤に対する損害賠償請求事件において、「ある新規の治療法の存在を前提 にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される 医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医 療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての 医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当で ない。」とされています。
またこの理由として、「当該疾病の専門的研究者の間でその有効性と安全性が是認され た新規の治療法が普及するには一定の時間を要し、医療機関の性格、その所在する 地域の医療環境の特性、医師の専門分野等によってその普及に要する時間に差異が あり、その知見の普及に要する時間と実施のための技術・設備等の普及に要する時 間との間にも差異があるのが通例であり、また、当事者もこのような事情を前提に して診療契約の締結に至るのである。」としています。
新薬や最先端医療が普及するまで相当の時間が必要なのだから、病院ごとに医療水準に差異が出るのは当然であり、診療契約はそれを前提として締結されているという判断です。
1.妥当である。選択肢の通り、因果関係の立証においては一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることで足るとされます。
2.妥当である。判例では「特段の事情が存しない限り、被害者が平均的な体格または通常の体質と異なる疾患を有していても、被害者のその身体的特徴を斟酌することができない」とされています。(いわゆる首長事件 最判平8.10.29)
3.妥当である。「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」(民法712条)とされ、条文の通りです。
4.妥当である。判例では、「民法723条における名誉とは、品性、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価」(最判昭45.12.18)とされており、判例の通りです。
5.妥当でない。判例では、「医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される」(最判平12.9.22)とし、さらにその医療水準は一律でないとされています。
よって、正解は5。
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