行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問17

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

行政書士試験 令和4年度 法令等 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

行政事件訴訟法の定めに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。
  • 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。
  • 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。
  • 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。
  • 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

行政事件訴訟法は、国や地方公共団体の行政行為で国民の権利が侵害された場合、裁判所に対しその是正を求める制度で、行政救済法に分類され、国家賠償法、行政不服審査法と当該法を合わせて救済三法と呼ばれています。

選択肢1. 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。

妥当ではありません。

抗告訴訟は、「処分の取消の訴え、裁決の取消の訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認訴え、義務付けの訴え、差止めの訴え」などが行政事件訴訟法第3条に列挙されており、これは法定抗告訴訟と呼ばれます。

しかし、過去の判例では行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟は、この規定以外の抗告訴訟(=無名抗告訴訟)もありうるとしているため、列挙限定されているわけではありません。

選択肢2. 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。

妥当ではありません

不作為の違法確認の訴えとは、行政事件訴訟法第3条5項によれば、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしないことについての違法に確認を求める訴訟をいう」とあります。

この請求が容認する判決が裁判所によってなされ、この判決の拘束力によって行政庁は諾否の対応をしなければなりません。

処分以外に拒否することもできるということです。

選択肢3. 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。

妥当ではありません。

不作為の違法確認の訴えとは、行政事件訴訟法第3条5項によれば「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしないことについての違法に確認を求める訴訟をいう」とあります。

条文にあるとおり、法令に基づく申請であることが訴訟要件となります。

選択肢4. 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。

妥当です。

行政事件訴訟法第44条には「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」とありますので、行政行為に該当しない行為であれば仮処分をする余地があります。

選択肢5. 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

妥当ではありません。

行政事件訴訟法第40条には「法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる」とあります。

具体的な出訴期間が条文で定められているわけではありません。

まとめ

行政事件訴訟法には、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の類型があります。

それぞれの特徴を理解し、使い分けできるようになりましょう。

参考になった数13

02

行政事件訴訟法の類型やそれぞれの訴訟要件に関する問題です。少し細かい知識を問われている問題もあるので、基本的な条文知識で正誤が判断できるところから消していきましょう。

選択肢1. 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。

妥当ではありません

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟で、6つの類型が列挙されています。

①処分の取消しの訴え

②裁決の取消しの訴え

③無効等確認の訴え

④不作為の違法確認の訴え

⑤義務付けの訴え

⑥差止めの訴え

しかし、行政事件訴訟法で規定されていない「無名抗告訴訟」というものもあります。上記の6つのような名前が付いていないため「無名」です。無名抗告訴訟が具体的にどんなものかは説明しませんが、そういう類型もあるということだけ覚えておきましょう。

選択肢2. 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。

妥当ではありません

不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条5項)。

不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合

行政庁は不作為を解消するために何らかの処分をしなければなりません

ただし処分をすればいいだけなので、申請を拒否する処分をすることも可能です。

選択肢3. 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。

妥当ではありません

前半部分の「処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができる」は正しいですが、後半部分の「申請が法令に基づくものであることは求められていない」というのが間違いです。

不作為の違法確認の訴訟要件

・訴訟対象→法令に基づく申請についての不作為

・原告適格→処分または裁決について申請した者

・出訴期間→不作為の状態が続く限り可能

選択肢4. 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。

妥当です

行政事件訴訟法の中には「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」という条文があります(行政事件訴訟法44条)。問題文は『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当しない行為』となっているため、この規定には当てはまらず、民事保全法の仮処分ができるということになります。

民事保全法とは、仮の救済制度について定めた法律です。

行政事件訴訟法の抗告訴訟(公権力の行使に対する訴訟)については、執行停止・仮の義務付け・仮の差止めなどの救済措置の制度があります。そのため、民事保全法の仮処分は適用されません。

ただし、実質的当事者訴訟では民事保全法の仮処分をする余地があるので覚えておきましょう。

選択肢5. 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

妥当ではありません

行政事件訴訟法では、法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができるとされています(行政事件訴訟法40条1項)。

つまり、具体的に当事者訴訟の出訴期間としての規定はありません

土地収用法に基づく損失補償額を争う形式的当事者訴訟の場合は、

土地収用法に出訴期間が定められているため、その規定が適用されます。

<土地収用法133条>

2 収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から六月以内に提起しなければならない。

まとめ

行政事件訴訟法には、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の類型があります。さらに、抗告訴訟の中で取消訴訟や不作為の違法確認訴訟など細かく分けられていて、それぞれに訴訟要件が異なる部分もあります。出訴期間や原告適格を中心に一度整理しましょう。

参考になった数5

03

 行政事件訴訟法の定めに関する出題です。

選択肢1. 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。

 行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、同条5項により、「この法律において不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。」とされ、同条6項により、「この法律において義務付けの訴えとは、①行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(➁に掲げる場合を除く。)、➁行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないときに掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同条7項により、「この法律において差止めの訴えとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同法37条により、「不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。」とされ、同法37条の2第1項により、「3条6項①に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。」とされ、同法37条の4第1項により、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」とされ、同法37条の5第1項により、「義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(仮の義務付けという。)ができる。」とされます。

 つまり、「行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる」という部分が、妥当ではありません。

選択肢2. 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。

 行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、同条5項により、「この法律において不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。」とされ、同条6項により、「この法律において義務付けの訴えとは、①行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(➁に掲げる場合を除く。)、➁行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないときに掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同条7項により、「この法律において差止めの訴えとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同法37条により、「不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。」とされ、同法37条の2第1項により、「3条6項①に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。」とされ、同法37条の4第1項により、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」とされ、同法37条の5第1項により、「義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(仮の義務付けという。)ができる。」とされます。

 つまり、「当該申請により求められた処分をしなければならない」という部分が、妥当ではありません。

選択肢3. 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。

 行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、同条5項により、「この法律において不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。」とされ、同条6項により、「この法律において義務付けの訴えとは、①行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(➁に掲げる場合を除く。)、➁行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないときに掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同条7項により、「この法律において差止めの訴えとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」とされ、同法37条により、「不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。」とされ、同法37条の2第1項により、「3条6項①に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。」とされ、同法37条の4第1項により、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」とされ、同法37条の5第1項により、「義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(仮の義務付けという。)ができる。」とされます。

 つまり、「この申請が法令に基づくものであることは求められていない」という部分が、妥当ではありません。

選択肢4. 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。

 行政事件訴訟法25条1項により、「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」とされ、同条2項により、「処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。」とされ、同法44条により、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」とされるので、妥当です。

選択肢5. 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

 行政事件訴訟法4条により、「この法律において当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。」とされ、同法40条1項により、「法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であつても、これを提起することができる。」とされます。

 つまり、「具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが」という部分が、妥当ではありません。

参考になった数1