行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問26

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問題

行政書士試験 令和4年度 法令等 問26 (訂正依頼・報告はこちら)

国籍と住民としての地位に関する次の記述のうち、法令に照らし、妥当なものはどれか。
  • 事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。
  • 住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。
  • 公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。
  • 日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。
  • 日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

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この過去問の解説 (3件)

01

地方自治法10条は、「市町村の区域内に住所を有する者」を「住民」としており、「住民」を日本国籍保有者に限定していません。しかし、その権利については日本国籍が要件になっているものもあります。

選択肢1. 事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。

妥当ではありません

日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有します(地方自治法12条2項)。

つまり事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民には認められていません

選択肢2. 住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。

妥当ではありません

住民監査請求ができるのは「普通地方公共団体の住民」です(地方自治法242条2項)。「普通地方公共団体の住民」には、日本国籍を有する住民だけでなく外国籍の人も含みます。

選択肢3. 公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。

妥当です

普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒むことはできません。また、普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはなりません(地方自治法244条2項・3項)。

選択肢4. 日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。

妥当ではありません

日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者は、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有します(地方自治法18条)。

つまり、日本国籍を持たない人が一定期間居住したとしても選挙権を有することはありません。

選択肢5. 日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

妥当ではありません

2012年に外国人登録制度は廃止され、日本国籍を持たない住民についても住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができるようになりました。

まとめ

直接請求権や選挙権・被選挙権など住民の権利は、それぞれ要件が異なります。混乱しがちなので、一度まとめて頭を整理しましょう。

参考になった数6

02

住民は、市町村の区域内に住所を有し、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とするとされています。(地方自治法第10条)

国籍性、年齢のいかん及び行為能力のいかんを問いません。

  1. 国籍は、どの国に資格があるか示したもので、憲法第10条を受けた国籍法の規定によります。

選択肢1. 事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。

妥当ではありません。

事務監査請求は、地方自治法第75条1項によれば、選挙権が必要です。

当該選挙権は、日本国民たる年齢満18歳以上で3か月以上当該市町村に住所を有する者としています(同法第18条)

選択肢2. 住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。

妥当ではありません。

地方自治法第242条1項には、普通地方公共団体の住民とありますので日本国籍を有しないものでも請求は認められます。

選択肢3. 公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。

妥当です。

地方自治法第244条3項に、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない、とあります。

選択肢4. 日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。

妥当ではありません。

地方自治法第18条に、選挙権は日本国民たる・・・とあります。

よって、一定期間居住していたからといって、選挙権を有することはありません。

選択肢5. 日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

妥当ではありません。

2012年より外国人についても住民基本台帳の適用対象となり、マイナンバーカードの交付申請も可能となりました。

参考になった数3

03

この問題のポイントは、地方自治法12条2項、242条1項、244条3項の理解です。

地方自治法12条2項は日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有するとされています。

地方自治法242条1項は普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができるとされています。

最後に地方自治法244条3項は普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。

解説の冒頭より、日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有するとされています。

よって、事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民には認められていないとなります。

選択肢2. 住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。

解説の冒頭より、普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができるとされています。

よって、住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民以外の住民にも認められているとなります。

選択肢3. 公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。

解説の冒頭より、普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないとされています。

よって、公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならないとなります。

選択肢4. 日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。

日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有するという法令はありません。

選択肢5. 日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

2012年の住民基本台帳法の改正によって、外国人にも住民票が作成されることになりました。

よって、日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができるとなります。

まとめ

この問題のように、条文知識を問う問題は必ず出るので、条文素読もやった方が良いでしょう。

また、今回出てきた選択肢の文章は今後も出てくる可能性があるので、解説を読み直して、問題を解きなおすのも良いでしょう。

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