行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問27
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問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問27 (訂正依頼・報告はこちら)
虚偽表示の無効を対抗できない善意の第三者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
- AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
- AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
- AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
- AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
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この過去問の解説 (3件)
01
虚偽表示は、当事者間では無効となります。しかし、虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません。この問題では、「善意の第三者」に当たるかどうかの判断基準の知識が問われています。
妥当ではありません
賃借人Cは、「土地」について法律上の利害関係がないので、第三者には当たりません(判例 最判昭57.6.8)。そのため、Cは善意であってもAに対抗することができません。
妥当です
仮装譲渡の譲受人Bと直接取引関係に立つた第三者のCが悪意の場合でも、Cからの転得者Dが善意であるときは、Dは94条2項にいう善意の第三者にあたります(判例 最判昭45.7.24)。
妥当です
不動産の仮装譲受人Bから抵当権の設定を受けたCは、民法94条2項の第三者に含まれます(判例 大判大4.12.17)。
妥当です
仮装譲渡の譲受人Bの債権者Cが目的物を差し押さえた場合、差押債権者Cは、民法94条2項の第三者に該当します(判例 大判大4.12.17)。
94条2項の「第三者」に該当するかは、結論だけでいいので事例ごとに覚えておきましょう。
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02
この問題のポイントは、民法94条2項と判例大判昭6.10.24、最判昭45.7.24、最判昭48.6.28、最判昭57.6.8の理解です。
まず民法94条2項は相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないとされています。
次にポイントとなる判例を以下にまとめます。
・大判昭6.10.24
この判例では仮装譲渡とされた不動産の抵当権者は、民法94条2項の第三者に該当するという判例です。
・最判昭45.7.24
この判例の争点は不動産の所有者が他人名義を使用して不実の登記を経由した場合における民法九四条二項の類推適用できるかどうかとその悪意の第三者からその不動産を所得した善意の転得者は民法九四条二項にいう善意の第三者にあたるかで、結論として、民法九四条二項の類推適用でき、所有者は虚偽表示の規定を第三者に対抗することはできないとされ、また民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたるとされています。
・最判昭48.6.28
この判例の争点は、未登記建物の所有者においてその建物が固定資産課税台帳上他人の所有名義で登録されていることを承認していた場合に民法九四条二項の類推適用できるかどうかで、結論として未登記建物の所有者は、その建物が固定資産課税台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認していた場合には、民法九四条二項の類推適用により、右名義人が所有権を有しないことを善意の第三者に対抗することができないとされています。
・最判昭57.6.8
この判例の争点は、土地の仮装譲受人から右土地上の建物を賃借した者は民法九四条二項所定の第三者に該当するかどうかで、結論として土地の仮装譲受人からその建築にかかる右土地上の建物を賃借した者は、民法九四条二項所定の第三者にはあたらないとされています。
以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。
解説の冒頭より、土地の仮装譲受人からその建築にかかる右土地上の建物を賃借した者は、民法九四条二項所定の第三者にはあたらないとされているので、Cは民法94条2項の第三者にあたりません。
よって、AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できるとなります。
解説の冒頭より、民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたるとされ、Dは民法九四条二項にいう善意の第三者に該当します。
よって、AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できないとなります。
解説の冒頭より、仮装譲渡とされた不動産の抵当権者は、民法94条2項の第三者に該当するとされています。
よって、AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できないとなります。
解説の冒頭より、未登記建物の所有者は、その建物が固定資産課税台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認していた場合には、民法九四条二項の類推適用により、右名義人が所有権を有しないことを善意の第三者に対抗することができないとされている判例があります。
よって、はBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できないとなります。
解説の冒頭より、虚偽表示の無効を善意の第三者に対抗することはできなく、Dは善意の第三者に該当します。
よって、AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できないとなります。
今回の虚偽表示の問題は度々出てくるので、今回の解説や条文、判例を見直しておいた方が良いでしょう。
また、虚偽表示以外の意思表示についても出題されることがあるので、チェックしておいた方が良いでしょう。
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03
民法第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とすると定めています。
妥当ではありません。
賃借人Cは法律上の利害関係人にはならず虚偽表示の第三者にあたりません。
妥当です。
転得者Dは善意の第三者となるので、AはDに無効を対抗できません。
妥当です。
抵当権設定者は第三者にあたるので、AはCに無効を対抗できません。
妥当です。
債権者Cが当該土地を差押えた場合、Cは第三者に該当し、AはCに無効を対抗できません。
妥当です。
Dは、善意の第三者ですので、AはDに無効を対抗できません。
民法第94条2項では、通謀虚偽表示の取引は、善意の第三者には対抗できないとしています。
第三者にあたるかあたらないかを過去問で区別しておきましょう。
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