行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問29

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問題

行政書士試験 令和4年度 法令等 問29 (訂正依頼・報告はこちら)

機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、明らかに誤っているものはどれか。
  • 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。
  • 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
  • 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。
  • 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
  • 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

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この過去問の解説 (3件)

01

根抵当権とは、複数の債権を担保するために、不動産に設定するものです。抵当権などと違い、元本の確定前後や極度額の概念があります。

選択肢1. 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。

妥当です

元本確定期日が定められていない場合

根抵当権設定者Aは、根抵当権を設定した時点から3年過ぎれば、元本の確定を請求できます(民法398条の19第1項)

根抵当権者Bは、いつでも元本の確定を請求できます(民法398条の19第2項)

選択肢2. 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

妥当です

元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権(被担保債権)の範囲の変更をすることができます。そして、被担保債権の範囲の変更するに当たって、後順位の抵当権者その他の第三者のの承諾はいりません。また、元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます(民法398条の4第1項〜第3項)。

選択肢3. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。

妥当です

元本が確定した後で、根抵当権設定者は、極度額を法の定める額に減額することを請求できます(民法398条の21第1項)

法の定める額とは、残りの債務の額と2年間の利息と損害賠償額を合わせた額です。

選択肢4. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。

妥当ではありません

根抵当権者は、確定した元本・利息と損害賠償の全部について、極度額の範囲内で、優先的に弁済を受けられます(民法398条の3第1項)。

極度額を超えて弁済を受けることはできません

選択肢5. 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

妥当です

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7)。元本確定前の債権譲渡は保証されないため、対抗要件の具備は関係ありません。

まとめ

根抵当権には随伴性・付従性がありません。根抵当権の仕組みや特徴について押さえておきましょう。

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02

根抵当権は、民法398条の2によれば、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保すると規定されています。

あらかじめ設定された極度額までは繰り返し融資を受けることができ、登記も抵当権とは違い設定時の一回で済みます。

選択肢1. 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。

正しい。

民法398条の19第3項によれば、根抵当権設定者Aは根抵当権を設定した時点から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます。

選択肢2. 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

正しい。

民法398条の4第1項により、元本の確定前に債権の範囲を変更することができます。

同条第2項により、後順位の抵当権者や第三者の承諾は不要。

同条第3項、元本確定前に登記をしなかったときは、債権の範囲を変更しなかったとみなします。

選択肢3. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。

正しい。

民法398条の21第1項では、元本の確定後、根抵当権設定者Aは極度額を現在の債務額と以後2年間の利息、損害賠償額の計に減額することを請求できます。

選択肢4. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。

誤り。

限度額を超えて優先弁済を受けることはできません。

極度額を限度として行使することができます。

選択肢5. 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

正しい。

民法398条の7第1項によれば、元本が確定する前に、根抵当権者Bから債権を取得したDは、その債権について根抵当権を行使することはできません

抵当権とは違い、随伴性・付従性がないためです。

まとめ

根抵当権は不特定の債権、抵当権は特定の債権を担保します。

抵当権には、随伴性・付従性がありますが根抵当権にはないため、債権が移動したとしても当然に移転しません。

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03

この問題のポイントは、民法398条の3第1項、398条の4の第2項と第3項、398条の7第1項、398条の19第1項と第2項、398条の21第1項の理解です。

まず民法398条の3第1項は根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができるとされています。

民法398条の4の第2項は元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができ、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しないとされ、債務者の変更についても、同様とするとされています。

また、その第3項では、その変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなすとされています。

民法398条の7第1項は元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とするとされています。

民法398条の19第1項は根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定するとされています。

またその第2項は根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定するとされています。

最後に民法398条の21第1項は元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができるとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。

解説の冒頭より、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができ、根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができるとされています。

また、根抵当権設定者はA、根抵当権者はBとなります。

よって、本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができるとなります。

選択肢2. 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

解説の冒頭より、元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができ、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しないとされ、その変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなすとされています。

また、Cは後順位の抵当権者です。

よって、本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなすとなります。

選択肢3. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。

解説の冒頭より、元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができるとされています。

また、根抵当権設定者はAです。

よって、本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができるとされています。

選択肢4. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。

解説の冒頭より、根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができるとされています。

よって、本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額の範囲内で、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができるとなります。

選択肢5. 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

解説の冒頭より、元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができないとされています。

また、この場合の根抵当権者はB、債権を取得した者がDとなります。

よって、本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできないとなります。

まとめ

今回の問題で出てくる条文は、行政書士試験に度々出てくるので、問題と解説を照らし合わせながら、条文の内容を再確認すると条文理解が深まると考えられます。

また、民法の問題で登場人物が3人以上いる場合は、図にしてみると問題を理解しやすいと考えられます。

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